中国上海地域に適するキュウリ、イチゴの耐病性優良新品種
日本及び中国の遺伝資源を素材として、早生、多収、高品質で耐病性に優れ、上海地域に適するキュウリ新品種「滬(ふ)116号」と「滬119号」及びイチゴ新品種「申旭1号」と「申旭2号」を育成した。
背景・ねらい
中国上海地域では、都市人口の増加や食生活の向上に伴って野菜の需要が増大し、野菜の生産強化が急務となっている。主要野菜であるキュウリについては、収量が低くべと病、つる割病に弱いなどの問題があり、他方、需要の伸びの著しいイチゴについても、促成栽培に適する高品質・耐病性品種が求められている。そこで、日中双方の遺伝資源を利用して、早生、多収、高品質で耐病性に優れ、上海地域に適するキュウリ、イチゴ新品種の育成を図った。
成果の内容・特徴
- キュウリ新品種「滬116号」は、日本F1品種「れんせい」と「新光節成11号」を育種素材として育成した半促成栽培に適する早生F1品種である。雌花着生率が高く、「新光節成11号」に比べて2割多収である。果実は棒形で、果色が濃く、溝、イボ、刺、が少なく、品質が良い。べと病、つる割病に抵抗性である。
- キュウリ新品種「滬119号」は、日本F1品種「れんせい」と中国系統「019-2」を育種素材として育成した半促成栽培に適する多収性F1品種である。雌花着生率は高くないが、育成後半まで安定した着果性を示す。果実は棒形、濃緑で、刺、イボが少ない。べと病、つる割り病に抵抗性である。
- イチゴ新品種「申旭1号」は、日本新品種「M-23」と「麗紅」を交配して育成した促成・半促成栽培に適する品種である。全収量は「とよのか」より多く果実が大きい。糖度は中程度であるが、果皮が硬く日持ち性、輸送性、に優れる。上海の主炭そ病菌Colletotricyun acutatum及び日本の主炭そ病菌C. fragariaeにも「宝交早生」以上の抵抗性を有する。
また、上海ので促成・半促成栽培では、灰色かび病も発生がみられず、同様に抵抗性を有する。 - イチゴ新品種「申旭2号」は、日本品種「久留米49号」と「8418-23」を交配して育成した促成栽培に適する極早生品種である。年内収量は「とよのか」より多く早期収量が期待できる。果実の大きさは「とよのか」と同程度であり、糖度及びビタミンC含量も高く品質に優れる。炭そ病菌C. acutatum及びC. fragariaeに「宝交早生」以上の抵抗性を有する。
成果の活用面・留意点
- キュウリ新品種「滬116号」と「滬119号」の普及面積は約120haであり、現在の普及地域は上海市、浙紅省、紅蘇省、山東省、四川省など13の省、市、地区である。両品種は華南型キュウリ産地の半促成栽培に適するが、耐暑性は低いので夏季栽培には適さない。
- イチゴ新品種「申旭1号」と「申旭2号」はともに上海近郊から揚子江流域を中心とする促成栽培に適する。
具体的データ
- Affiliation
-
国際農研 生物資源部
-
上海市農業科学院
- 分類
-
行政
- 予算区分
- 国際農業[中国野菜]
- 研究課題
-
中国における果菜類等の耐病性優良系統の育成
- 研究期間
-
平成8年度(平成4年~8年)
- 研究担当者
-
杉山 慶太 ( 生物資源部 )
野口 裕司 ( 農研機構 果樹茶業研究部門 )
坂田 好輝 ( 農研機構 果樹茶業研究部門 )
森下 昌三 ( 農研機構 果樹茶業研究部門 )
許 啓新 ( 上海市農業科学院 )
童 尭明 ( 上海市農業科学院 )
陳 幼源 ( 上海市農業科学院 )
葉 正文 ( 上海市農業科学院 )
陸 世鈞 ( 上海市農業科学院 )
陳 海栄 ( 上海市農業科学院 )
鄭 宏清 ( 上海市農業科学院 )
余 紀柱 ( 上海市農業科学院 )
- ほか
- 発表論文等
-
杉山 他 (1997) キュウリ・ピーマン・イチゴの育種に関する研究.
杉山 他 (1997) 日中共同研究論文集.
杉山 他 (1997) 新品種の育成と基礎研究.
- 日本語PDF
-
1996_03_A3_ja.pdf1.23 MB