中国雲南省における水稲新品種 滇粳34~37号
中国雲南省の標高 1,500~2,100m地帯に適応する耐冷性、いもち病抵抗性、収量性に優れた4つの水稲品種を育成した。
背景・ねらい
中国雲南省は栽培稲の起源地とみられ、耐冷性、いもち病抵抗性の強い在来品種が存在する。これら雲南省の遺伝資源と草型等が改良されている日本の遺伝資源を利用して、雲南省の粳稲(ジャポニカ型)地帯、とくに標高 1,500~2,100m地帯に適応する耐冷・耐病・多収品種を育成する。なお、前年度までに5つの合系系統が雲南省の優良品種として登録されている。
成果の内容・特徴
- 昭和58年~昭和61年に日中遺伝資源を交配し、その後代から育成した4つの合系系統が、平成5年5月に雲南省の優良品種として登録された。
- 登録品種の諸特性は表に示すが、概要は以下の通りである。
(1) 滇粳34号(系統名:合系15号) BL1/雲粳 135(昭和58年交配)より育成された粳種。耐冷性は強、いもち病真性抵抗性遺伝子はPi-bをもち、外観品質は中上、食味は中中で、多収である。雲南省の標高 1,900~2,100m地帯に普及が見込まれている。
(2) 滇粳35号(系統名:合系24号) トドロキワセ/楚粳4号(昭和60年交配)により育成された粳種。いもち病圃場抵抗性は葉、穂とも強、耐冷性はやや弱で、外観品質は中中、食味は中中で、多収である。雲南省の標高 1,500~1,800m地帯に普及が見込 まれている。
(3) 滇粳36号(系統名:合系25号) 83ー81/ニシヒカリ//雲系3号(昭和61年交配)により育成された粳種。耐冷性はやや強~強、未知のいもち病真性抵抗性遺伝子をもつと推定され、外観品質は中上、食味は中下で、多収である。雲南省の標高 1,800~2,000m地帯に普及が見込まれている。
(4) 滇粳37号(系統名:合系30号) トドロキワセ/楚粳4号(昭和60年交配)により育成された粳種。いもち病圃場抵抗性は葉、穂とも強、耐冷性はやや弱で、外観品質は上下、食味は中上で、多収である。雲南省の標高 1,500~1,800m地帯に普及が見込まれている。
成果の活用面・留意点
滇粳34号は昭通、曲靖、昆明、保山地区、滇粳35号は昆明、曲靖、楚雄、玉渓、紅河地区、滇粳36号は昆明、曲靖、昭通地区、滇粳37号は玉渓、紅河、大理地区を中心に普及が進められる。平成5年の雲南省における合系品種の作付総面積は約 8.2万haで、対象地帯の水田面積の約25%を占めた。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生物資源部
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雲南省農業科学院
- 分類
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国際
- 予算区分
- 国際プロ(稲遺伝資源)
- 研究課題
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中国における稲遺伝資源の評価と利用技術の開発
- 研究期間
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1993年度(1992~1996年度)
- 研究担当者
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春原 嘉弘 ( 生物資源部 )
冨田 桂 ( 生物資源部 )
安部 信行 ( 生物資源部 )
藤村 泰樹 ( 生物資源部 )
藤田 佳克 ( 生物資源部 )
井上 正勝 ( 生物資源部 )
岩野 正敬 ( 生物資源部 )
松永 和久 ( 生物資源部 )
堀末 登 ( 生物資源部 )
森谷 国男 ( 生物資源部 )
東 正昭 ( 生物資源部 )
国広 泰史 ( 生物資源部 )
内山田 博士 ( 生物資源部 )
小山田 善三 ( 生物資源部 )
轟 篤 ( 生物資源部 )
蒋 志農 ( 雲南省農業科学院 )
王 永華 ( 雲南省農業科学院 )
- ほか
- 他
- 発表論文等
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遺伝資源利用による水稲育種. 第21回熱帯農業研究国際シンポジウム論文集(TARS), No.21, 314p, (1988).
- 日本語PDF
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1993_04_A3_ja.pdf431.38 KB