ブランコヤドリバエの人工飼育法の開発
生物的防除手段として有用視されているヤドリバエ類の簡易大量累代飼育法の確率を目的として、ブランコヤドリバエを用い、卵期から幼虫期まで人工飼料による飼育法の開発を行った。
背景・ねらい
害虫に対する天敵の利用は生物的防除の有力な手段であり、なかでも寄生性天敵であるヤドリバエの利用は、これまで有効性を認められながらも室内飼育の難しさから実用化に至っていない。このため、ヤドリバエの簡易大量累代飼育法の確立を目的として人工飼育法の開発を試みた。
成果の内容・特徴
- 昆虫組織培養用培地IPL41にリピッド溶液を加えたIPL41ヌとカイコ血清BMHあるいは牛胎児血清FBSを組み合わせてブランコヤドリバエの無菌人工飼料とした。
- 人工飼料中のカイコ血清の濃度が高い程飼育成績が良好で、カイコ血清のみの飼料の場合、13%のハエ成虫が得られた。
- 飼育容器として用いたプラスチック製の4穴のウエルに、表面殺菌したハエ卵を1ウエル当たり1個接種したが、各ウエルに脱脂綿を加えるとハエ幼虫のファネル形成率が高まり、その後のハエの成長・発育にも良い結果をもたらすことがわかった。
- ファネル形成とその後3齢幼虫への成長・発育には、血清成分が必要であることがわかった。一方、カイコ血清にくらべて牛胎児血清の効果はかなり劣り、出来たファネルは薄く、無着色であった。
成果の活用面・留意点
- 寄主体内における寄生性天敵の発育過程および生体防御機構を解明する手段となる。
- さらに成虫化率の向上を計るとともに羽化成虫の質の維持管理等の問題が残されている。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生産利用部
- 分類
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研究
- 予算区分
- 経常
- 研究課題
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主要害虫の生物的防除に関する研究
- 研究期間
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1992~1994年度
- 研究担当者
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八木 繁実 ( 生産利用部 )
中村 達 ( 生産利用部 )
- ほか
- 発表論文等
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Yagi, S. (1994) 4th SICONBIOL Abstract, 29, Report(IICA) 1-8.
八木繁実, 中村達 (1994) ヤドリバエの人工飼育 ブレインテクノニュース 46: p.22-25.
- 日本語PDF
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