稲種「水稲中間母本農9号」

 「水稲中間母本農9号」はインドネシア在来陸稲(ジャワ型)品種Ketan Nangkaのもつ不稔緩和遺伝子(S-5n)を日本型品種に取込んで育成された広親和性日本型陸稲である。また不稔緩和遺伝子(S-5n)と密接に連鎖するアントシアン色素源遺伝子を受け継いでいることから、育成系統の広親和性に関する間接選抜が可能であり、交配親として利用し易い。

背景・ねらい

 1960年代より国際稲研究所(IRRI)等においてインド型品種の改良が進み、その高い収量性や良好な草型等が注目され、1980年頃からは超多収品種育成のための交配親として盛んに利用されるようになったが、日印の遠縁交配育種ではF1及び後代の雑種不稔が多発し育種上の重大な障害となっていた。
 1981年以来の研究により日印交配の雑種不稔の性質とその遺伝についての基礎的な知見が得られ、この研究から、インド型、日本型双方と親和性を持つ品種(広親和性)を育種に利用して、日印交配の雑種不稔を実用的に解消する方法が開発された。すなわち、Ketan Nangka等の広親和性品種が持つ雑種不稔緩和遺伝子(S-5n)をインド型か日本型の改良品種に取り込んで、利用し易い広親和性品種を育成し、それを片親或いは1回親として交配を行う方法である。
 「水稲中間母本農9号」は、その方法を具体化するために育成された系統である。

特徴

(栽培特性)

  • 草型は中間型で葉色は淡く、トヨニシキと比較して棹長はやや長く、穂長、穂数は同程度である。
  • 粒着密着度は中、芒は稀で短い。ふ先色は濃紫色、脱粒性は難である。
  • 粳性で玄米の形はやや細長く、やや大粒、品質は中の下である。
  • トヨニシキ並の早生、耐傾性は中、収量はトヨニシキと同程度で早生として多収である。
  • いもち病はアアキヒカリに比べてやや強で、白葉枯病耐病性はトヨニシキと同程度で、穂発芽は難である。

登録・出願情報(育成者権の存続期間満了)

■出願先国:日本

農林水産植物の種類
Oryza sativa L.(稲種)
品種名称
水稲中間母本農9号
旧系統名
熱研1号
出願番号
(出願日)
第2271号
(1987/3/31)
公表日
登録番号
(登録日)
第1807号
(1988/12/13)
育成者権の
存続期間の終期
2003/12/14
※期間満了
育成者権の共有者

(単独)

関連文献

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