ダイズ「ITJS 6062 3G」

 「ITJS 6062 3G」は、パラグアイ農業バイオテクノロジー研究所(INBIO)と国際農研が共同開発し、パラグアイで登録したダイズ新品種である。ダイズさび病に対する3つの抵抗性遺伝子の導入により、高いさび病抵抗性を有する。
 パラグアイ国立植物・種子品質・防疫事業団(SENAVE)において、2025年5月23日付で品種の保護登録(RNCP)がなされた。

背景・ねらい

ダイズさび病は、ダイズの落葉を早め、収穫量を減少させるダイズ病害である。南米では、2001年にパラグアイで最初に確認されて以降、ブラジルやパラグアイなどの主要なダイズ生産地域、特に熱帯・亜熱帯地域に蔓延し、国際市場への安定的供給を行う上で重大な阻害要因となっている。現地農家は殺菌剤を使ってダイズさび病の防除を行っているが、さび病菌の殺菌剤耐性が増大したことにより、防除コストや環境負荷の増大が懸念されている。一方、宿主となるダイズには、これまでダイズさび病に抵抗性を示す8種の遺伝子(Rpp)が同定されている。また、これらの遺伝子を複数個集積して導入したダイズは、病原性の異なる多くのさび病菌種に対して抵抗性となるだけではなく、抵抗性の程度も高くなることが明らかになっている。国際農研が育成した抵抗性遺伝子集積系統を用いて、パラグアイに適応した高いさび病抵抗性を有するダイズ品種を開発し、同国におけるダイズ生産の安定化に貢献する。

特徴

  • 新品種「ITJS 6062 3G」は、国際農研が育成した3つの抵抗性遺伝子(Rpp2, Rpp4, Rpp5)を有するさび病抵抗性系統「No6-12-1」とパラグアイ農業バイオテクノロジー研究所(INBIO)の系統A-247の交雑F1にINBIOの商用品種SOJAPAR R24を交配して得られた集団から、DNAマーカー選抜を利用した抵抗性系統選抜を経て育成担当者:Mario Cuba (INBIO),  Miori Uno (INBIO), 山中直樹 (国際農研), Aníbal Morel Yurenka (INBIO)により開発された品種であり、パラグアイ国において令和7年5月23日付で登録されている(品種登録番号:721)。
  • 新品種はダイズさび病に対して高い抵抗性を有するため、圃場におけるさび病の感染や胞子形成は、現地の主力栽培品種と比較して低く抑えられている(写真)。
  • 新品種は、表1に示す様な主要特性を示す。ダイズさび病に抵抗性であるだけでなく無限伸育性を示し、グリホサート抵抗性の遺伝子組換え品種でもあることから、現地農家の需要に合う品種となっている。
  • 栽培地や栽培年の環境の変化によって収量は変化するが、新品種は2023-2024年および2024-2025年のパラグアイ内の3か所の栽培試験において3.7-4.7 t/haの収量性を示す(表1)。

登録・出願情報

■出願先国:パラグアイ共和国

農林水産植物の種類
Glycine max (L.) Merr. (ダイズ種)
品種名称
ITJS 6062 3G
旧系統名
出願番号
(出願日)
607
(2024/12/12)
公表日
登録番号
(登録日)
721
(2025/5/23)
育成者権の
存続期間の終期

(2033/3/13)
育成者権の共有者
パラグアイ農業バイオテクノロジー研究所(INBIO)
輸出先国の制限

関連文献

生育ステージ:R5のITJS 6062 3G品種

生育ステージ:R7のITJS 6062 3G品種

パラグアイ圃場におけるダイズさび病罹病葉.右:ITJS 6062 3G;左:対照となる現地の商用品種

表1.ダイズ新品種「ITJS 6062 3G」の主要特性

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