ダイズ「Doncella INTA-JIRCAS」

 「Doncella INTA-JIRCAS」は、アルゼンチン国立農牧技術院(INTA)と国際農研が共同開発し、アルゼンチンで登録したダイズ新品種である。ダイズさび病に対する3つの抵抗性遺伝子の導入により、高いさび病抵抗性を有する。
 アルゼンチン国において令和4年4月25日付で登録された(品種登録番号:4304)。

背景・ねらい

 ダイズさび病は、ダイズの落葉を早め、収穫量を減少させるダイズ病害である。南米では、2001年にパラグアイで最初に確認されて以降、ブラジルやアルゼンチンなどの主要なダイズ生産地域に蔓延し、国際市場への安定的供給を行う上で重大な阻害要因となっている。現地農家は殺菌剤を使ってダイズさび病の防除を行っているが、さび病菌の殺菌剤耐性が増大したことにより、防除コストや環境負荷の増大が懸念されている。一方、宿主となるダイズには、これまでダイズさび病に抵抗性を示す8種の遺伝子(Rpp)が同定されている。また、これらの遺伝子を集積して導入したダイズは、病原性の異なる多くのさび病菌種に対して抵抗性となるだけではなく、抵抗性の程度も高くなることが明らかになっている。国際農研が育成した抵抗性遺伝子集積系統を用いて、アルゼンチンに適応した高いさび病抵抗性を有するダイズ品種を開発し、同国におけるダイズ生産の安定化に貢献する。

特徴

  • 新品種「Doncella INTA-JIRCAS」は、国際農研が育成した3つの抵抗性遺伝子(Rpp2, Rpp4, Rpp5)を有するさび病抵抗性系統「No6-12-1」を一回親、アルゼンチン国立農牧技術院(INTA)の品種「ALIM5.09」を反復親とし、DNAマーカー選抜を利用した戻し交配育種によって開発された品種であり、アルゼンチン国において令和4年4月25日付で登録されている(品種登録番号:4304)。
  • 圃場における罹病度(病斑面積率)は、反復親対照品種であるALIM5.09や対照品種であるINTA Paraná 629、INTA Paraná 5500では30%を超えるのに対し、新品種では1%以下である。また、人為接種により感染させた場合でも、高い抵抗性を示し、胞子形成が見られない。
  • 新品種は、ALIM5.09と伸育性、花色(胚軸色)、毛じ色(茎および莢)、葉形、種皮色、臍の色、草丈、種子脂質含有率、種子粗タンパク含有率、ダイズ茎かいよう病抵抗性、除草剤抵抗性について同等の特性を有する。
  • 栽培地や栽培年の環境の変化によって収量は変化するが、新品種は2017ー2018年のParana試験場の環境下で対照品種ALIM5.09よりも有意に高い傾向にある。

登録情報

■出願先国:アルゼンチン共和国

農林水産植物の種類
Glycine max (L.) Merr. (ダイズ種)
品種名称
Doncella INTA-JIRCAS
旧系統名
出願番号
(出願日)
20062
(2020/9/10)
公表日
登録番号
(登録日)
4304
(2022/4/25)
育成者権の
存続期間の終期
育成者権の共有者
アルゼンチン国立農牧技術院(INTA)

関連文献

連絡先
〒305-8686 茨城県つくば市大わし1-1

国際農研 企画連携部 企画管理室 知的財産専門職

TEL : 029-838-6389
FAX
029-838-6337