Pick Up

381. アフリカにおける持続的で強靭なフードシステム構築のためのアクション

関連プログラム
情報

 

2021年9月7日、アフリカ緑の革命フォーラムサミットにおいて、アフリカ農業事情報告書が公表され、アフリカにおける持続的で強靭なフードシステム構築のためのアクションが提案されました。 以下、報告書の概要を紹介します。 

21世紀以降、サブサハラアフリカ地域は、一人当たりGDP・貧困・保健・寿命・教育分野における改善で着実に成果を上げてきました。農業分野に関しても、2000~2018年の間、サブサハラアフリカの農業生産額はインフレ調整後で年4.3%の成長率を達成、この数字はそれ以前の30年間の2倍を超える値でした。この間、世界の農業生産額伸び率は平均2.7%でした。2010年米ドルベースでの労働者一人当たり農業付加価値も、2000年の846ドルから2019年に1563ドルへと年率3.2%を達成しました。

2000年来の目覚ましい進歩にもかかわらず、アフリカのフードシステムは脆弱性を抱えています。農業生産の成長を牽引した要因の75%は耕地面積の拡大によるもので、作物収量の向上は25%しか貢献していません。サブサハラアフリカの作物収量は1980~2018年の38年間に38%しか向上しておらず、この値は同期間に南アジアや東南アジアで達成された収量向上の3分の1でした。耕地面積の拡大は、サブサハラアフリカにおいて森林破壊をもたらす最大の要因の一つとなっており、実際、森林面積は2000年の31.6%から2018年には26.6%に減少しています。

アフリカ大陸全体で10億人を超える消費者と2.5兆ドル以上のGDPを踏まえれば、多国籍企業およびアフリカ資本企業にとってもアグリビジネスにとり大きな経済機会が控えていることになります。しかしこれまでのところ、穀物・イモ類・マメ類といったアフリカで最も取引される作物に関してでさえ、資本不足に悩むインフォーマルで細分化されたマーケットのもとで取引されています。こうした分野に従事する人々の多く(80%以上)が小規模仲介・運輸業に関わっており、季節性に左右され、貧困線水準の暮らしをしています。

サブサハラアフリカの人口は今後も増加すると予測されています。既存の農地圃場での生産性向上が、アフリカのフードシステムの強靭性と持続性を高める最も重要な対策の一つです。既存農地の生産性を改善することで、耕地拡大圧力を抑制し、森林や草地エコシステム・生物多様性の保全にもつながります。

国際農研の食料プログラムでは、次のプロジェクトにおいて、国内外の関係機関と協力し、アフリカにおける安定的な食料生産、国際的な食料需給、食料栄養安全保障に貢献できる技術開発を行っています。

 

 

  • アフリカ小規模畑作農業の生産性・収益性・持続性を向上させる畑作システム支援ツールの構築に向けた技術開発【アフリカ畑作支援】https://www.jircas.go.jp/ja/program/prob/b6

アフリカ稲作システムプロジェクトでは、地域の基幹作物であるコメの増産と人々の栄養改善につながる新たな技術や知見を創出し、稲作を中心とした持続的な食料生産システムの構築を目指します。そのために、野菜やマメ科作物なども取り入れながら、水や肥料などの資源を有効に活用し、栄養化にも優れたコメ生産のための水管理技術、育種素材および栽培技術を開発し、対象国に提供します。(対象国:マダガスカル、タンザニア、ギニア)


一方、アフリカ畑作支援プロジェクトでは、アフリカの小規模畑作農家による生産性・経済性・持続性が高い農業生産に必要な技術開発を行うとともに、農家自身が有するリソースや取り巻く自然・社会環境に応じて適切な作物・畜産・管理技術を選択・実践することを支援する畑作システム支援ツールの構築に向けて、情報・技術の収集および整理を行います。(対象国:ガーナ、ナイジェリア、モザンビーク)

私たちは、これらの技術開発、そしてその普及を通じて、アフリカにおける持続的で強靭なフードシステム構築に貢献します。

参考文献

AGRA. (2021). Africa Agriculture Status Report. A Decade of Action: Building Sustainable and Resilient Food Systems in Africa (Issue 9). Nairobi, Kenya: Alliance for a Green Revolution in Africa (AGRA). https://agra.org/wp-content/uploads/2021/09/AASR-2021-A-Decade-of-Actio…

(文責:食料プログラム 中島一雄、生産環境・畜産領域 辻本泰弘、村中聡、情報プログラム 飯山みゆき)

関連するページ