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285. アフリカのイネ生産における低投入、貧栄養土壌の問題点、およびその改善策
アフリカには、一人当たりのコメの消費量が日本よりも多い国が存在し、その消費量は都市化と人口増加で年々増えています。2008年から2018年の10年間にかけて、地域におけるコメ生産量は倍増しましたが、一方で消費も著しく伸び、生産量の増加は自給率の向上には繋がりませんでした。更なる生産量の拡大には、土地面積当たりの生産性、すなわち収量の改善が望まれますが、化学肥料の投入量が少ないことや栄養分の貧しい土壌が広く分布していることから、収量が伸び悩んでいます。自給率向上を悲願とするアフリカ諸国にとり、利用可能な栄養分を効率的に利用できるようなイネの育種・栽培技術の開発は極めて重要な課題です。
2019年にPlant Production Science誌で発表された論文「Challenges and opportunities for improving N use efficiency for rice production in sub-Saharan Africa」は、アフリカのイネ生産における肥料投入力の不足と貧栄養土壌の問題点、およびその改善策を総説しています。論文によると、アフリカでは極めて狭い地域内でも地形や土壌条件の差が大きく、地域内で推奨される一定の施肥量に対する収量の応答に大きなばらつきを生み出し、肥料の利用効率を下げています。
これに対し、近年ではドローンなどリモートセンシング技術を通した養分評価法が発達し、狭い地域内での土壌条件の違いを低コストで判別することで、ピンポイントで適切な施肥を実施するための意思決定ツールの開発も試みられています。
このたび、本論文が、「第18回日本作物学会論文賞」を受賞しました。本賞は、Plant Production Scienceに発表された優れた論文の著者である作物学会会員に授与されるものです。
参考文献
Yasuhiro Tsujimoto, Tovohery Rakotoson, Atsuko Tanaka & Kazuki Saito (2019) Challenges and opportunities for improving N use efficiency for rice production in sub-Saharan Africa.
https://doi.org/10.1080/1343943X.2019.1617638
(文責:生産環境・畜産領域 辻本泰弘、社会科学領域 齋藤和樹)