モンゴル国および中国・内蒙古自治区の農牧業とその試験研究

国際農林水産業研究センター研究資料
ISSN 13404334
書誌レコードID(総合目録DB) AN10442873
本文フルテキスト
1994年8月、飛行機はモンゴルの首都ウランバートルに降りようとしていた。同じ季節の中央アジア、ウズベクやキルギス、カザフの草地が乾き茶色に枯れた草が生えているのに比べ、飛行機の翼の下に広がる草原は、緑の波がうねる海原のようであった。地図上では隣合って、似たような気候風土の国であろうと考えていた想像が破れて軽い驚きを感じた。果てしなく続く緑の草原の中には、並行して走る車の轍が伸びて、あるものは緑の丘の陰に隠れた遊牧民の定牧地の跡らしい所に終わっていた。この広大で美しい草原の中にとけ込み、どこにいるとも見えない極少数のモンゴルの人々。歴史以前の時代から生活として続けてきたという遊牧と近年始まった大規模機械化耕種農業の融合、世界の多くの地域とはかなり異なった農牧業類型を、モンゴルの人々の未来の中で豊かに築く道筋とはどういったものなのか、モンゴルはどのような国に変貌してゆくのか、そしてその中で人々はどのように生きてゆくのか。現在のモンゴル農業に関する詳しい知識や具体的なイメージも無いまま、想いをめぐらしながらウランバートル空港におりたった。
1993年10月、旧熱帯農業研究センターは国際農林水産業研究センターに拡充改組された。水産業研究領域への進出や草地畜産や林業研究の拡充等研究領域の拡大に加え、熱帯という枠が外れ対象地域が農業技術開発の途上国全般へ拡大された今、最大の研究ターゲットは、社会基盤整備が整い教育制度や水準は進んでいるにもかかわらず、経済構造の改編に併せて、農業経営構造や農業技術の適正化に向けた技術開発需要の大きい旧社会主義諸国の中央アジアやモンゴルの国々に向けられている。このような国の歩みにあわせて国際農林水産業研究センターができる共同研究課題は数多いであろう。
ウランバートル空港に我々を出迎えて下さった、モンゴル国立農業大学チョイサム教授に同行した大学学長秘書のエフェフツシンさんは、同じモンゴル系である日本人の赤ん坊のような顔立ちで頬が赤い1 8才の女性であった。彼女の笑顔を目にして、心が温まってゆくのを感じながら、モンゴルでの調査旅行はうまくゆきそうな予感がした。彼らが我々を出迎えて下さったのは、後述するが9 3年の1 0月の機構改革で食料・農業省に属していた農牧畜業関連の全研究所が農業大学の下に再編されていたからであった。今回の調査では、ウランバートルに集中する国立農業大学傘下の研究所を中心に、モンゴルの中でも主要な畑作地帯である中央県ダルハンにある畑作研究所と今後の発展が期待される東部地域に赴き東部地域農業研究所を訪問した。また、引き続いて中国の内蒙古自治区では内蒙古農業科学院と畜牧科学院を訪問し、立地条件や開発状祝を異にする農牧業の状況を目の当たりにした。調査は、国際農林水産業研究センター・国際研究情報官の宮重俊ーと同・沖縄支所作物育種研究室の中野寛が行ったが、宮重が牧畜業を、中野が耕種農業を分担執筆した。今回の調査を契機に国際農林水産業研究センターが、我々を暖かく迎え、また共同研究の必要性を切々と訴えられたモンゴルや中国内蒙古自治区の多くの研究者の期待に沿える日がくることを願っている。
This report presents the actual situation and problems in agriculture and animal husbandry in Mongolia and Inner Mongolia of China. Authors interviewed staff in the Ministry of Food and Agriculture and the Ministry of Nature and the Environment in Mongolia. Additionally, we visited the Mongolia National Agriculture University under which are affiliated seventeen research institutes (six central institutes, three regional institutes, four regional stations and four veterinary laboratories). In Inner Mongolia, we visited the Academy of Agricultural Sciences and Academy of Animal husbandry in Hohhot. With information obtained from researchers in these institutes and by visits with farmers and nomads, we were able to report on research activities in the fields of agriculture and animal husbandry in the two countries. Nomalic livestock production on native grasslands and livestock production on large runches using fodder were fully investigated. Mechanized large-scale farming in Mongolia and small-scale intensive agriculture in Inner Mongolia were also examined. In each field of research, potential subjects for future research collaboration with JIRCAS were outlined through discussion with Mongolian researchers. The nature of the climate, water resources and soil conditions, social conditions, economic situation, educational system, and living conditions were also examined.
刊行年月
作成者 中野寛 宮重俊一
著者キーワード 内蒙古 果樹 家畜 研究 草地 畑作 モンゴル 野菜 遊牧 Agriculture Fruit Grassland Inner Mongolia Livestock Mongolia Nomadism Research Vegetable
公開者 農林水産省国際農林水産業研究センター
データ作成日
9
開始ページ 1
終了ページ 53
言語 jpn
国名 モンゴル 中国