モンゴル国の自然と牧畜
ISSN | 13404334 |
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書誌レコードID(総合目録DB) | AN10442873 |
日本人にとってモンゴルという国は一種独特の響きをもって迎えられる。日本人のルーツの一つである北方騎馬民族の国、東西をつなぐ版図を作り上げたチンギスハーン、日本の馬子唄の様なモンゴル民謡など、日本人の関心を引くものが多い。今までは中国とソ連に挟まれた社会主義国として、日本とは接触の少ない国であったが、1990年の民主化改革以来往復が盛んになってきている。農耕民族として定着していた古代日本に征服王朝として多大な影響を与えた北方騎馬民族は日本に入ってどのように民族融合していったのか、現在ではモンゴル人と日本人の間にどんなところが共通点として残っているのか。モンゴル人達の牧畜と生活を知る興味は私たち日本人を知ることにもつながるのである。
世界の牧畜民を見渡してみても、独立国家を形成し自らの政府を持って、牧畜社会の社会主義化を果たしたところはモンゴル国の他にはない。封建領主や外国資本の支配から1921年の革命によって解放された牧民達は、伝統的な遊牧共同体ホタアイルから社会主義的牧畜協同組合ネグデルへの移行など、牧畜社会の近代化を進める上で重要な役割を果たしている。ネグデルは1991年に解体したといわれるが、民主化体制のもとで新たな集団化としてホタアイルの再建が見られるという。遊牧共同体がどの様に進むのかなど、モンゴル国の最近の動向は研究者の注目をあびている。
ユーラシア大陸の内陸部の中心にあるモンゴルは、今でも野生動物の宝庫であって、馬・羊・山羊・ラクダの野生種が現存する。野生動物をその生息環境と共に保護することは全人類的課題である。
モンゴルでの学術調査は古くは北西側のロシア、ハンガリ一、フィンランドなどからおこなわれたが、日本も1930年代には西北研究所のようなアカデミックな研究機関も出来て活動した。しかし、戦争とその後の東西冷戦状況のもとで研究者はモンゴル国に近づくこともできない状況が続いた。この不幸な空白時期を乗り越えて、いまモンゴル研究は改めてその重要性が認識されている。モンゴル国は牧畜発祥の地の一つであり、現在でも独特の飼育技術を持っている。草原地帯に適した牧畜体系を研究することにより牧畜の本質的な問題を把握することができよう。
This paper is a report of the visit to Mongolia in October 1992. The 13th Asian Conference on Remote Sensing was held at Ulaanbaatar, and we had many interesting presentation regarding the natural resources and agriculture in Mongolia. The National Atlas of the Mongolian People's Republic shows us the fundamental data of Mongolia, and has various thematic maps. The Research Institute of Animal Husbandry and the Research Institute of Forestry gave us good information about the present situation of agriculture in Mongolia and its future problems. Mongolia has a long history of nomadic existence and has established a collective grazing system. The current movement of the Mongolian nomadism is being watched with keen interest world wide.
刊行年月日 | |
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作成者 | 高畑滋 |
著者キーワード | モンゴル 自然資源 牧野 リモートセンシング 放牧 Mongolia natural resources rangeland remote sensing grazing |
公開者 | 農林水産省国際農林水産業研究センター |
オンライン掲載日 | |
巻 | 1 |
開始ページ | 1 |
終了ページ | 34 |
言語 | jpn |