遺伝分析に有用なサヤインゲン細胞質雄性不稔系統
雄性不稔細胞質をもつサヤインゲン品種「黒種衣笠」を1回親(種子親)とし、他の品種を反復親として戻し交配を続けることにより細胞質雄性不稔系統を育成できる。これらの系統を用いれば、雑種を作出するのが極めて容易である。
背景・ねらい
サヤインゲンは雌雄蕊を内包する竜骨弁がらせん状に回転しているため除雄が難しく、交配を行う上で大きな障害となっている。形態形質、生理形質などの遺伝様式を明らかにするためには、確実で簡易な交配法が必要である。品種「黒種衣笠」は雄性不稔細胞質を有する(平成12 年度国際農業研究成果情報)。そこで「黒種衣笠」を1 回親に用いて、サヤインゲン品種の細胞質雄性不稔系統を育成する。
成果の内容・特徴
- 「ハイブシ」や「ケンタッキーワンダー」などの品種を主に用いて、平成13 年12 月末現在、次のとおり戻し交配世代(Bn)の進んだ雄性不稔系統が得られている。B9:「ハイブシ」、B7:「ケンタッキーワンダー」「サーベル」、B6:「黒三度」「鴨川グリーン」「ゴールデンワクス」「ネリナ」「スパンダー」、B5:「石垣二号」、B4:「沖縄在来」「いちず」「さやかざり」
- 表1 に示すとおり、細胞質雄性不稔系統を用いると交配が容易である。
- 胚軸色が緑×赤紫の交配組合せについて、赤紫が緑に対して優性なので得られた交配種子の雑種性を発芽種子の胚軸が赤紫に着色することにより確認することができる。表2、図1 に示すとおり、これら交配種子はすべて赤紫に着色しており雑種である。
成果の活用面・留意点
- 得られたサヤインゲン品種の細胞質雄性不稔系統を片親に用いれば交配が容易で、形態形質、生理形質などの遺伝様式を明らかにするための実験植物として有用である。
- 「黒種衣笠」の有する本細胞質に対する稔性回復遺伝子の働きは配偶体的であり、F1 では半不稔となる。したがって実用的F1 品種育成には利用が難しい。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 沖縄支所
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生物系特定産業技術研究推進機構
- 分類
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研究
- 予算区分
- 法人プロ〔環境ストレス〕 基礎研究推進事業
- 研究課題
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サヤインゲン品種「ハイブシ」の耐暑性の他品種への導入
- 研究期間
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2001 年度(1998 ~ 2005 年度)
- 研究担当者
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江川 宜伸 ( 沖縄支所 )
塚口 直史 ( 生物系特定産業技術研究推進機構 )
鈴木 克己 ( 沖縄支所 )
庄野 真理子 ( 沖縄支所 )
- ほか
- 発表論文等
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江川ら (2001): インゲンマメの耐暑性に関する研究 11. 耐暑性サヤインゲン品種「ハイブシ」の細胞質雄性不稔系統の確立.熱帯農業, 45(1): 43-44.
- 日本語PDF
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2001_21_A3_ja.pdf947.87 KB
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2001_18_A4_en.pdf116.22 KB