高温処理による生理的花粉不稔を利用したサヤインゲン簡易交配法
サヤインゲンに高温ストレスをかけると花粉不稔が生じる。この性質を利用して種子親に高温処理して開花当日に正常花粉を授粉する簡易な交配法により、高い交配成功率で確実にF1雑種種子が得られる。
背景・ねらい
サヤインゲンの交配は花の構造上困難が多い。すなわち雌雄蕊を内包する竜骨弁がらせん状に回転しており除雄が難しく、交配を行う上で大きな障害となっている。交雑育種を効率的に推進するために、確実で簡易な交配法を開発する必要がある。
成果の内容・特徴
- ‘ライトグリーン’の開花期に35°C、72時間の高温処理を行うと、処理開始日から8~14日後に開花する花を自殖させるとほとんど着莢しない(表1、図1)。しかし、高温処理した‘ライトグリーン’(種子親)の処理開始後10~14日目の開花当日に、‘ハイブシ’の花粉を授粉することにより高い着莢率で種子を獲得できる(表1、図1)。
- 用いた品種の胚軸色は、‘ライトグリーン’は緑、‘ハイブシ’は赤紫である。交配により得られた種子を播種し、胚軸の着色に基づいて雑種性を検定する(F1では赤紫)と、高温処理開始後10~12日目の交配で得られる種子はすべて雑種である(表2、図2)。
- 交配方法は次のとおりである。開花当日の朝、開いた‘ライトグリーン’の旗弁をつかみ翼弁を押し下げる、竜骨弁開口部から柱頭を露出させる。そこに花粉親として用いる当日開花した‘ハイブシ’の花粉を授粉する。
- 従来の蕾受粉では除雄の際花柱を傷つける等の失敗が多く、交配成功率も11.1%と低い(表1)。一方、本法は除雄が不要で交配に要する時間が短くて済むうえ、交配成功率がほぼ100%である(表1、図1)。
- 雌性生殖器官は雄性生殖器官より高温ストレスに抵抗性であるが、35°C72時間という処理では、処理開始後9日目には雌性生殖器官も障害を受ける(表1、図1)。
成果の活用面・留意点
サヤインゲンは高温ストレスに感受性の野菜であるが、本法が広く他の品種にも応用できるか検討する必要がある。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 沖縄支所
- 分類
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研究
- 予算区分
- 経常 基礎研究推進事業
- 研究課題
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サヤインゲン品種「ハイブシ」の耐暑性の他品種への導入
- 研究期間
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平成12年度(10~13年度)
- 研究担当者
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江川 宜伸 ( 生物資源部 )
塚口 直史 ( 生物系特定産業技術研究推進機構 )
竹田 博之 ( 沖縄支所 )
鈴木 克己 ( 沖縄支所 )
- ほか
- 発表論文等
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インゲンマメの耐暑性に関する研究 10. 高温による生理的花粉不稔を利用したサヤインゲンの簡易交配法. 熱帯農業, 45(別1): 41-42, (2001).
- 日本語PDF
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