養殖エビで発生しているウイルス病の単クローン抗体を用いる診断

要約

養殖エビに深刻な被害を与えているホワイトスポットシンドロームウイルス(WSSV)は、単クローン抗体を用いる血清学的診断法によって検出できる。

背景・ねらい

   東南アジア地域は世界で有数のエビ養殖が盛んな地域であり、これら養殖産業が地域経済の基盤をなしている。しかし、これらエビ養殖場ではその規模の拡大に伴い、著しい被害をもたらすホワイトスポットシンドロームウイルス(WSSV)等のウイルス病が発生し、重要な問題となっている。現在、これら養殖エビのウイルス病に対する効果的な治療法はなく、疾病防除には広域的な防疫対策をとり疾病の蔓延を予防することが不可欠である。そこで、これらウイルス病のエビ養殖場における発生状況を調査し、正確かつ迅速な疾病の診断技法として血清学的診断法の開発を試みるため、WSSV に対する単クローン抗体の作製を行う。

成果の内容・特徴

  1. マレーシアの半島部では、ウイルス病被害により多くのエビ養殖場が事業を断念して放置された状態である。ホワイトスポットシンドロームウイルス(WSSV)感染症が確認されたペナン州及びケダ州に於ける疾病の発生要因は、移入した種苗に病原体が付随していたことが示唆されている。
  2. 単クローン抗体の作成は、まず、健康エビへのウイルス感染試験、罹病エビからのウイルス回収、濃縮及び精製したウイルスを抗原としたマウスへの免疫、及びマウス脾細胞とミエローマ細胞との細胞融合を行う。ついで融合細胞を培養し、コロニー形成後、ウイルスに特異的な抗体を産生している細胞を感染エビ及び非感染エビの血リンパ塗抹標本を用いた間接蛍光抗体法にて選択し(図1)、これらを限界希釈により純化させ培養する。
  3. その結果、細胞融合では90%以上と高い率での融合細胞のコロニー形成が認められ、これら細胞の中で268 株に感染エビ抗原に対する抗体を産生している。さらに、それらのうち38 株にウイルスに特異的な抗体の産生が示されているが、その後のサブクローニング及び培養過程で細胞株が減少し、最終的に単クローン抗体産生株として3 株を得て保存している(表1)。

成果の活用面・留意点

WSSV に対する単クローン抗体が作成されていることより、血清学的な診断法を用いた診断が有望である。

具体的データ

  1.  

    表1 WSSVに対する単クローン抗体作製の於ける細胞融合とスクリーニングの結果
  2.  

    図1 間接蛍光抗体法による抗体産生細胞株の選択スクリーニング
Affiliation

国際農研 水産部

養殖研究所

分類

研究

予算区分
国際プロ〔エビウイルス〕
研究課題

海外養殖魚介類の疾病発生動向

研究期間

2001 年度(1997 ~ 2001 年度)

研究担当者

大迫 典久 ( 養殖研究所 )

ほか
発表論文等

Kua, B.C., Oseko, N., Palanisamy, V. and Chuah, T.T. (1999): Disease of cultured tiger shrimp (Penaeus monodon) from farm in Sarawaku. Proceedings of "First National symposium on aquaculture", Penang, Malaysia. P.20.

Chuah, T.T., Oseko, N. and Palanisamy, V. (2000): Shrimp disease in Malaysia's mangrove ponds. Proceedings of JIRCAS International Workshop on "Brackish ater Mangrove Ecosystem.-Productivity and Sustainable Utilization-", Tsukuba, p.131-135.

日本語PDF

2001_20_A3_ja.pdf898.18 KB

English PDF

2001_17_A4_en.pdf115.56 KB

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