タイ国コンケン県における農業生産に関わる窒素循環
東北タイのコンケン県において求められた農業生産に関わる窒素フローから、農地における窒素収支は-40kg/haと見積もられる。農地に還元される窒素量が34kg/haあるが、還元されない窒素量も58kg/haであり、これらの未還元有機物資源を農地へ効率的に還元することにより、窒素収支の適正化が期待できる。
背景・ねらい
東北タイは、作物生産性が低く、不安定である。この原因として、低肥沃な土壌が挙げられている。このような地域で、持続型農業を確立するためには、農業生態系における養分循環の実態を把握し、地域の養分資源を有効利用し、土壌肥沃度向上のための方法を確立することが必要である。そこで、東北タイのコンケン県を対象に、地域レベルにおける窒素循環を明らかにし、養分資源としての利用実態の把握を行う。
成果の内容・特徴
- 東北タイのコンケン県に関わる1990~1992年の統計資料、分析データ、研究報告、現地調査、タイ研究者の知見を基に、農地で生産された農作物が食生活や家畜の飼養、作物加工工場を経て、糞尿や廃棄物となり、処理もしくは農地に投入される窒素量を求め、コンケン県における年間の窒素循環を求めた(図1)。
- 作物残渣の生産量は52 kg/haと多いが、半分以上が圃場外へ持ち出されているか、焼却されている。家畜糞尿は大半が農地に施用されているが、生産量が34kg/haとあまり多くない。人の屎尿、生ゴミは全く農地に利用されていない。化学肥料施用量は18 kg/haと低い。
- 農地における窒素収支は-40 kg/haと見積もられる。農地に還元される窒素量が34kg/haであるのに対し、還元されない窒素量は58kg/haであり、これらの有機物資源を農地へ有効に還元することが、窒素収支の適正化に重要である。
成果の活用面・留意点
- 本手法で得られる結果は、地域内で利用可能な有機物資源の有効利用のための行政的対応の策定に活用できる。
- 土壌肥沃度を高めるように有機物資源を利用することが重要であり、そのためには、農地に施用された有機物の動態解明が必要である。
- 有機物資源の利用実態をより明らかにするため、農家への聞き取り調査を行う必要がある。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 環境資源部
- 分類
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行政
- 予算区分
- 国際研究[東北タイ]
- 研究課題
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東北タイの農業生態系における養分循環に関する調査研究
- 研究期間
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平成12年度(8~12年度)
- 研究担当者
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松本 成夫 ( 生産環境部 )
- ほか
- 発表論文等
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松本成夫, Kobkiet Paisancharoen, Vidhaya Trelo-ges (1999) 東北タイコンケン県における農業活動に関する窒素循環. システム農学, 15(別1): 45-46.
- 日本語PDF
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2000_04_A3_ja.pdf592.34 KB