途上国を対象とした農業の総合研究における国際共同の推進方策

国名
ベトナム
要約

メコンデルタのように情報の蓄積が少ない地域を対象に国際共同による総合研究を行う場合、コーディネーターに情報を集中するとともに関係者の自由な参加の国内支援グループによる、具体的な目標設定、計画作成、評価及び広報が必要である。

背景・ねらい

   開発途上国との共同研究を実施する場合、事前の調査を十分に行い、問題点と目標を予め明確にして相手国機関と協議・合意した上で推進するべきであるが、種々の事情により、必ずしも十分な情報の下で時間をかけて準備し、推進できるとは限らない。わが国の国際共同による総合研究の場合、数人の長期研究員と十数人の短期研究員の派遣を中心とし、管理調査派遣、長期・短期の招聰、ODAによる一定額の研究費、国内研究機関の協力、主査を中心とした推進評価会議制度という枠組みのなかで、最も効率の高い推進を図る必要がある。
   本課題はベトナム・メコンデルタにおける農畜水複合技術体系の評価と改善を目的とし、ベトナム側2機関を共同相手として異なる分野(作物栽培、植物病理、畜産、水産、経営)を主な研究課題として取り組んだ。国内支援グループとして、コーディネーター(研究情報官)と専門指導者(研究部長)がワーキンググループ(WG)を形成し研究推進に当たった(図1)。

成果の内容・特徴

  1. 研究は長期研究員(2~4名)と年間十数名の短期研究員及び招聰研究員が当たった(表1)。
  2. WGは関係者の参加を自由とし、少なくとも次の項目について討議し、合意を形成する。
    1)プロジェクト目標
    2)実施計画、派遣および予算配分
    3)研究活動の定期的な見直し(評価・到達点の確認)
    4)広報活動
  3. 異なる分野の研究課題を一つのプロジェクトで行う場合、全体で達成を目指す具体的な目標が不可欠である。WGはプロジェクト目標が、参加者全員で認識できる具体性があるかどうか常に検証する。同時に、個別の実施課題についても専門指導者(研究部長)の指導によりプロジェクト目標と整合性のある具体的な目標を設定する。
  4. 現在の枠組みでは個別課題の実施計画及び派遣計画は専門指導者が原案を作成し、予算配分案については分野に中立なコーディネーターが作成するのが望ましい。これら原案の検討及び活動の評価は自由な討議にかけることが望ましい。
  5. 得られた成果(表2)をはじめ、共同研究に関する広報活動を、出版物、マスコミ、インターネットなどを媒体としてWGが責任を持って計画・実行する。
  6. コーディネーターは派遣研究員と常に連絡を取り、関係情報を整理し、WG及び主査に配付するとともにWG検討内容を主査と派遣研究員に報告する。

成果の活用面・留意点

国際農業に関わる総合研究プロジェクトの推進に適応可能である。
予算、人事的な事情および相手国の事情などにより、柔軟な運営が必要である。

具体的データ

  1. 図1 「メコンデルタ」プロジェクトの推進体制
  2.  

    表1 メコンデルタプロジェクトにおける派遣及び招聘
  3.  

    表2 プロジェクトによる主要成果
Affiliation

国際農研 海外情報部

分類

研究

予算区分
国際農業
研究課題

メコンデルタにおける農畜水複合技術体系の評価と改善

研究期間

平成6~10年

研究担当者

松井 重雄 ( 海外情報部 )

ほか
発表論文等

英文単行本 “Development of farming systems in the Mekong Delta of Vietnam.” (Vo-TongXuan and Shigeo Matsui eds.), H.M.C.Publishing House, Ho Chi Minh City, Vietnam. その他多数。

1997年12月8~9日 所内(ベトナムから6名招聘)でワークショップ開催。その他研究会等多数。

日本語PDF

1998_02_A3_ja.pdf465.73 KB

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