ケニアの食生活に占める昆虫食の実態
昆虫食の実態とそれが現地の食生活に果たす役割を主にケニアで調査した。最も良く食べられている昆虫はシロアリの羽アリで、特に西ケニアの農村では作物の収穫の途切れる雨期の食料として、不足がちな動物性タンパクおよび脂肪の補給源となっている。
背景・ねらい
昆虫食は現在でもしばしば途上国で重要な栄養源としての役割を果たしており、地域によってさまざまな昆虫が今でも好んで食べられている。そこで昆虫食の実態と、現地の人々の食生活に昆虫食がどのように役立っているかを主にケニアで調査した。
成果の内容・特徴
- ケニアの主要な民族について昆虫食の分布を調査したところ、全ての民族で良く食されているのはシロアリ(クンビクンビ)の羽アリであり、乾燥した羽アリ(生殖虫)は都市のマーケットで販売されていた。
- 西ケニアのルヒア族は特にシロアリを好んで食べるが、彼らはシロアリの種による発生時期や時刻の違いを熟知しており、例えば雨期に出現する羽アリについてはさまざまなトラップを仕掛けて捕獲し、時には婚資としても利用する(図1)。
- 西ケニア・エンザロ村では塚を作らない地中性のヒメキノコシロアリ(Microtermes sp.)が最も頻繁に好んで食べられ、地域のマーケットでしばしば売られていた(図2)。
- エンザロ村の農家各戸聞き取り調査から、農家によっては全食事量(生重量)の1/4‐1/3をシロアリが占めていることがあった。また、小学校1年生21名全員が週1回以上夕食あるいは夜食にシロアリを食べていることがわかった(表1)。
- 以上の結果から、この地域では雨期に穀物の収穫がとぎれた時期、不足しがちな動物性タンパク質や脂肪はシロアリによって補われていると結論される。
成果の活用面・留意点
東アフリカにおける昆虫食の実態をさらに詳細に調査し、時代に即した食糧資源としての昆虫の利用、特にその採集、保存、大量飼育、加工、などの新しい技術を開発することが必要である。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生産利用部
- 分類
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研究
- 予算区分
- 国際プロ(アフリカバッタ)
- 研究課題
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北及び東アフリカ地域におけるバッタ類の生合理的害虫管理法の開発
- 研究期間
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平成7~9年
- 研究担当者
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八木 繁実 ( 生産利用部 )
KOKWARO Elizabeth ( 生産利用部 )
岸田 袈裟 ( 国際協力機構 )
矢沢 盈男 ( 蚕糸・昆虫農業技術研究所 )
- ほか
- 発表論文等
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第40回日本応用動物昆虫学会大会講演要旨, p.98, (1996).
第42回日本応用動物昆虫学会大会発表予定, 1998年4月.
八木繁実 (1997) アフリカの昆虫食アエラムック18「動物学がわかる」. 111-115, (朝日新聞社).
- 日本語PDF
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1997_10_A3_ja.pdf1.18 MB