養液栽培装置を用いたさとうきび側枝ポット苗の大量増殖

要約

国際農林水産業研究センター沖縄支所で開発した省エネルギー型養液栽培装置を用いて、さとうきびの母木栽培による側枝ポット苗を短期間に大量増殖する技術を開発した。

背景・ねらい

   自然災害(台風、干ばつ等)が頻発する南西諸島において、防災性が高いさとうきびは重要な基幹作物となっている。しかしながら、その生産には、とくに植付と収穫作業に過重な労働が強いられるため、農家のさとうきび離れとともに作業従事者の高齢化が急速に進んでいる。さとうきび栽培の機械化は、収穫作業では製糖会社等の機械収穫請負がやや進行し、植付作業には茎節苗を用いたプランターが一部で導入された程度である。また、植付けには3~4葉の側枝苗(高位分げつ苗)を育成して機械定植する方法が開発されたが、圃場で母木の養成が必要なだけでなく、側枝の伸長、生育が不安定で、側枝苗の十分な確保が不可能であった。
   そこで、国際農林水産業研究センター沖縄支所で開発した露地に設置可能な省エネルギー型養液栽培装置を用いて、さとうきびの母木養成栽培による側枝ポット苗の大量増殖技術を開発した。

成果の内容・特徴

  1. 当研究センター沖縄支所で開発した省エネルギー型養液栽培装置を用いて、梢頭部を切断した蔗茎を培地に挿し、最下位節より発根を促し、各節より伸長した1次側枝からさらに2次、3次側枝と多数の側枝を伸長させた(図3)。一方圃場栽培では、側枝が上位3節に集中して伸長するため、養液栽培装置を用いた場合と比較して伸長側枝数が減少した(図2)。養液栽培装置を用いることで、圃場栽培に比較して、小面積で多数の側枝苗の確保が可能であることを確認した。
  2. 養液栽培装置において培地の違いによる側枝の伸長数を検討した結果、マジックソイルおよび粒状綿を培地として使用すると、いずれの品種でも2次側枝の伸長数が多く、効果が高いことを明らかにした(表1)。
  3. さらに、養液栽培装置をパイプハウス等の施設内に設置することで、さとうきびの生育適温が維持されるため、より短期間に多数の側枝苗が伸長した。また、施設内では除草や薬剤散布等に省力となり、養液は培地に順次供給されるので栄養障害もなく良好な生育を経過し、多数の良質苗の確保が可能である。

成果の活用面・留意点

  1. 大型施設内で養液栽培装置を用いることにより多数の側枝苗を安定的に確保できるため、計画的植付けが可能となる。
  2. 施設内で多数の側枝苗生産を可能にしたことで、生産者団体等による大量育苗センターの開設が期待される。
  3. 側枝苗の集中大量増殖によってコストが低下し、機械植付けがいっそう促進されることで南西諸島におけるさとうきびの高位安定生産が可能となる。

具体的データ

  1.  

    図1 現行の蔗茎苗を用いた植付法
  2.  

    図2 圃場における側枝苗養成法
  3. 図3 養液栽培装置における側枝苗養成法
  4.  

    表1 養液栽培装置における植付100日後の2次側枝数(本/茎)
Affiliation

国際農研 沖縄支所

分類

行政

予算区分
経常
研究課題

養液栽培装置によるさとうきび側枝ポット苗の大量増殖技術の開発

研究期間

平成8年度

研究担当者

勝田 義満 ( 沖縄支所 )

佐久間 青成 ( 沖縄支所 )

黒島 栄一 ( 沖縄支所 )

ほか
発表論文等

勝田義満・佐久間青成・黒島栄一 (1997) サトウキビ側枝苗大量生産技術の開発に関する研究. 熱帯農業, 41(別1).

佐久間青成・鈴木克己・松本大助 (1996) 国際農業研究成果情報, 第3号.

日本語PDF

1996_15_A3_ja.pdf932.95 KB

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