ベトナムの米需給の展望
ドイモイ政策の下で市場経済化を進めているベトナムでは、年率5%近くで米生産の拡大が続いているが、政府の輸出数量規制のため国内では供給過剰が起こっており、国内米価の下落をくい止めるためには輸出規制緩和が必要である。
背景・ねらい
90年代に入ってアジアでの米生産が全体的に伸び悩みを見せる中で、ベトナムの米生産は順調な拡大を続けており、ベトナムは世界有数の米輸出国に成長した。本研究では、このベトナムの米需給の動向を要因分析するとともに貿易政策の影響分析を行い、今後の米受給を展望した。
成果の内容・特徴
- ベトナムは、1960年代から80年代半ばにかけては米の純輸入国であったが、ドイモイ政策への移行以来、個人農の生産意欲の高まりと近代品種の普及、化学肥料、農薬投入量の増加、灌漑面積の拡大、3期作の普及等を背景に、米生産が年率5%近くで増加を続け、最近では300万トン近くの米を輸出する世界有数の米輸出国にまで成長した(図1)。
- ベトナムの米需給を要因分析した結果によると、1990~95年間の平均として、人口増加と所得上昇に伴う1人当たり米消費量の増加のため、米需要量は毎年29万トンと30万トンのテンポで増加したのに対して、単収の上昇と収穫面積の拡大のため、米供給量は毎年39万トンと26万トンのテンポで増加したので、全体として毎年6万トンづつ需給が緩和し、これが米輸出拡大の背景になったことがわかる(図2)。
- 一方、政府は国内米価の高騰を恐れて、現在、米の輸出数量規制を実施しているが、米生産の順調な拡大のため、国内では供給過剰が発生し、国内米価の下落とそれに伴う農家所得の減少が起こっている。ベトナムの米需給モデルによる分析でも、輸出規制数量を現行水準に固定した場合には、国内米価のさらなる下落が予測され、農家所得を高めるためにも米輸出規制の緩和が必要であることが確認された(図3)。
成果の活用面・留意点
単収上昇を主因とした米生産の順調な拡大が続く限りは、本研究で確認されたように、現行の輸出規制を緩和させることが国内米価の下落を避ける有効な手段である。
具体的データ
- Affiliation
-
国際農研 海外情報部
-
クーロンデルタ稲研究所
- 分類
-
行政
- 予算区分
- 国際プロ(メコンデルタ)
- 研究課題
-
メコンデルタにおける農畜水複合技術体系の評価と改善
- 研究期間
-
平成8年度
- 研究担当者
-
中川 光弘 ( 農業総合研究所 )
SON Dang K. ( クーロンデルタ稲研究所 )
LAI Nguyen X. ( クーロンデルタ稲研究所 )
- ほか
- 発表論文等
-
取りまとめ中。
- 日本語PDF
-
1996_01_A3_ja.pdf769.42 KB