中央アジア地域の農林水産業特性及び研究技術動向

要約

国際農林水産業研究センターの新たな対象地域として拡大した中央アジアの農林水産業及びその研究技術動向を緊急に調査し、農畜水産業特性重要研究課題を摘出するとともに、今後の共同研究の可能性を明らかにした。

背景・ねらい

中央アジア地域では大陸内部に特徴的な農林水産業が展開されているにも関わらず、その動向や研究情報は他のアジア地域と比較して著しく限られてきた。昨年度の国際農林水産業研究センター発足とともに新たに拡大した中央アジア地域を対象として、カザフスタン、ウズベキスタン及びキルギスタンの3カ国における情報の収集と分析を実施し、共同研究の可能性について検討した。

成果の内容・特徴

  • 中央アジアは、南東の山岳部(パミ-ル高原等)から西側の内陸河川に沿って、冷涼で乾燥したステップと砂漠が広がる400万km2にも及ぶ地域である。元来、その伝統的農業は、ステップ草原の遊牧と山麓や砂漠に点在するオアシス農業が主体であったが、現在では、1) 遊牧から定住した放牧農業、2) カザフ草原における天水畑作農業、3) オアシス農業を継承する大規模潅漑農業、4) 内水域漁業など、広大な内陸部に特徴的な農畜水産業が展開されている。
  • 農業に関する重要問題は、ステップや山岳部草原の破壊、内水域の環境問題及び多様な植物遺伝資源の消失に集約される。優先される研究課題は、1) 持続的草地保全技術の確立と家畜生産及び加工利用技術の開発、2) 綿花の大規模潅漑生産に伴う土壌劣化やアラル海と流入河川域の環境対策、3) 天水畑作地域の土壌保全と持続的生産技術の確立、 4) 植物遺伝資源の収集・保存及び評価・利用技術の開発である。
  • 研究組織は、各国とも農業科学アカデミー及び科学アカデミーとその傘下の研究機関で構成され、充実した体制と長い研究蓄積がある。現在、旧ソ連邦の崩壊に伴う経済不振の中で研究予算削減による研究施設や機器の更新が遅れている状況にあるが、全般に研究レベルは高く国際研究協力への期待が高い。草地保全、内水域の環境問題及び植物・動物遺伝資源の保存・利用など独自の研究課題を抱える中央アジア地域との共同研究は重要である。

成果の活用面・留意点

中央アジア地域は、大陸内部の特徴的な農林水産業特性と多様な研究課題を抱えるが、本調査を通じて明らかにした農畜水産業の特性及び重要研究課題は、今後の研究協力を策定、実施する上で有効である。

具体的データ

  1. 図1
  2. 写真1
  3. 表1
  4. 図2
Affiliation

国際農研 海外情報部

分類

行政

予算区分
経常
研究課題

アジアII地域の農林水産業の特性及び技術開発方向の解明

研究期間

1994年度

研究担当者

三徳 ( 海外情報部 )

鈴木 正昭 ( 海外情報部 )

ほか
発表論文等

岡三徳, 鈴木正昭 (1994) 中央アジアの農林水産業特性と研究技術動向(1). ロシア・東欧の農業, 6(3), p.21-31.

岡三徳, 鈴木正昭 (1995) 中央アジアの農林水産業特性と研究技術動向(2). ロシア・東欧の農業,  6(4), p.10-19.

日本語PDF

1994_01_A3_ja.pdf1.45 MB

関連する研究成果情報