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129. 国連: 科学の下で団結せよ United in Science 2020

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2020年9月9日、世界気象機関(WMO)を中心とした国連機関*は、最新の気候科学関連情報をまとめ、共同で「科学の下で団結せよ United in Science 2020」を公表しました。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大に対し、気候変動の進行が停止する気配はなく、大気中の温室効果ガスの蓄積は続いています。ロックダウンや経済低迷による一時的な排出ガスの減少も見られたが、次第にパンデミック前の水準に戻りつつあります。過去5年間は史上最高気温が記録され、産業革命前と比べて気温上昇を2℃より低く、さらには1.5℃未満に抑制しようとする方向から逸れつつあります。本報告書は気候変動の不可逆的なインパクトにハイライトをあて、技術的な解決策や消費パターンの変更といった対策を早急に講じる必要性を強調しています。また、COVID-19により、3月以降は商業船舶の航行が滞り、気温や温室効果ガス排出量などを計測する海洋上の観測ネットワークの維持・継続に支障をきたしていることについても言及しています。

 

主な調査結果:

定点観測地における2020年7月大気中のCO2濃度は1年前に比べて上昇しています。(マウナロア(ハワイ):411.74ppmから414.38ppm、グリム岬(タスマニア):407.83ppm から410.04ppm)2019年の化石燃料からのCO2排出量は気候変動交渉開始時(1990年)より2%高い36.7ギガトン(Gt)の最高記録を達成しました。2020年の世界CO2排出量は4~7%の減少が予想されるものの、1日の排出量はCOVID-19以前に戻りつつあります。

現状から推定すると、2030年に地球温暖化を2℃以下に抑えるためのCO2の排出ギャップは12~15Gt、1.5℃目標では29~32Gtです。これは6大排出国の合計排出量に相当します。2016-2020年の世界平均気温は、基準である1850-1900年を約1.1℃上回ります。2011-2015年の平均気温よりも0.24℃高く、記録上最高気温になると予想されています。2050 年までに洪水の危険にさらされている人の数は、現在の 12 億人から 16 億人に増加すると予測されます。他方、2050年に深刻な水不足の地域に居住する人は、2010年代前半の19億人から27-32億人に増加するでしょう。

*世界気象機関(WMO)に加え、グローバルカーボンプロジェクト(GCP)、UNESCO政府間海洋学委員会(UNESCO-IOC)、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、国連環境計画(UNEP)、英国気象庁などが参加。

参考文献

United in Science 2020: https://public.wmo.int/en/resources/united_in_science

United in Science report: Climate Change has not stopped for COVID19 09 SEP 2020 PRESS RELEASE CLIMATE CHANGE https://www.unenvironment.org/news-and-stories/press-release/united-sci…  

(文責:研究戦略室 飯山みゆき、金森紀仁)

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