国際機関動向

国際連合食糧農業機関(FAO) 2017「2017年 アフリカ地域 食料安全保障・栄養状況概観 - 食料安全保障・栄養危機と紛争の悪循環を断ち切るための強靭性構築 [Regional Overview of Food Security and Nutrition in Africa 2017. The food security and nutrition–conflict nexus: building resilience for food security, nutrition and peace

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国名
アフリカ

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サブサハラ・アフリカにおいて、栄養不足に陥っている人口の割合は、21世紀最初の十年で29.1%から20.6%まで減少したものの、2015-2016年には2億人から2.24億人へと22.7%へ再び上昇に転じた。2016年で8.15億人と推定される世界的に栄養不足に苦しむ人々の4人に1人(25%)がアフリカにいる計算になる。主な原因は、紛争やエルニーニョ等に起因する旱魃が引き起こした不作・家畜の損失によるものである。紛争は農村における農業生産・フードシステムを破壊し、緊急かつ慢性な食料危機・栄養失調をもたらす。紛争地域における栄養失調率は、そうでない地域の2倍とも推定されている。世界の栄養失調人口の半数以上(4.89億人)が紛争地域に居住する中、世界でも最も激しい紛争の3分の1以上がアフリカで起こっており、また長期化する紛争を抱える国の7割がアフリカ地域に存在する。とくに紛争の影響が大きい地域は、ナイジェリア北東部、南スーダン、ソマリアであり、1580万人が影響を受けたと推定される。アフリカ全体の栄養失調人口の地域的分布の観点では、東アフリカの割合が大きい。食料安全保障の危機・栄養失調は、また、紛争を伴う社会政治不安の温床となり、気候変動の影響も相まって、人道危機の原因をさらに複雑化させる。アフリカ諸国を代表するアフリカ連合は、食料安全保障・栄養改善に関して、国連の持続可能な開発目標(SDGs)の目標2や『栄養のための行動の10年』(Decade of Action on Nutrition 2016-2025)の他、独自に飢餓の撲滅と貧困の半減への目標を設定している。とくにマラボ・コミットメント(2014 Malabo commitment)は、2025年までに飢餓の撲滅・低体重(stunting -10%以下)・低体重(underweight - 5%以下)削減達成を目指している。アフリカ諸国が食料安全保障・栄養の危機と紛争の関係を断ち切り、平和構築を達成するためには、食料・栄養に関わるマルチセクターでの介入を支援する政策フレームワークと投資戦略を支える資源・制度的キャパシティー強化等の支援が必要となる。

 

より詳しい内容に関しては、以下のサイトを通じ報告書原文を参照のこと

http://www.fao.org/3/a-I7695E.pdf

 

なお、概要に関する本翻訳は、FAOから公式に承認を受けたものではなく、翻訳上の誤りなどの責任は文責にある。

(文責:研究コーディネーター  飯山みゆき)

 

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