Oshox24 プロモーターを利用した生育阻害が起きないストレス耐性イネの作出

要約

イネの乾燥応答性遺伝子Oshox24のプロモーター活性は、通常生育条件下において非常に低いが、乾燥時に強く誘導される。種子における活性も極めて低い。Oshox24プロモーターを用いて、ストレス耐性遺伝子を過剰発現させたイネでは、生育阻害が起きずにストレス耐性が向上する。

背景・ねらい

イネの生産は、干ばつや塩ストレスなどの環境ストレスによって大きく阻害されるため、ストレス耐性を強化したイネの開発が求められている。ストレス耐性遺伝子を恒常的に過剰発現させると植物の生育を阻害することが多いため、通常生育条件で発現レベルが低いストレス誘導性プロモーターの探索が求められていた。本研究課題では、通常生育条件で発現レベルが低いイネのストレス誘導性プロモーターを探索・利用し、生育阻害が見られずにストレス耐性が向上するイネを作出する技術を開発する。

成果の内容・特徴

  1. マイクロアレイを用いた網羅的発現解析を実施すると、イネのOshox24遺伝子は、通常生育条件のイネにおいて発現レベルが低い代表的な乾燥応答性遺伝子の一つとして同定される。
  2. Oshox24遺伝子のプロモーター(以下、Oshox24プロモーターとする)には、植物ホルモンであるアブシシン酸(ABA)に応答性を示すシス配列ABREが存在し、Oshox24プロモーターはABA応答性転写因子であるAREBによる発現誘導が見られる。
  3. Oshox24プロモーターは、従来用いられてきたLIP9プロモーター、OsNAC6プロモーターに比べて、通常生育条件における活性が極めて低く、穏やかな乾燥処理によって強く誘導される(図1A)。
  4. 種子におけるOshox24プロモーターの活性は、LIP9プロモーター、OsNAC6プロモーターに比べて非常に低い(図1B)。
  5. Oshox24プロモーターを利用して乾燥耐性遺伝子を発現させたイネでは、通常生育条件下において生育阻害や収量低下が見られないが、幼苗を用いた試験において乾燥、塩ストレス耐性の向上が見られる(図2)。

成果の活用面・留意点

  1. イネのOshox24プロモーターは、恒常的に過剰発現すると生育を阻害するストレス耐性遺伝子を利用して耐性作物を作出する際に利用できる。
  2. Oshox24プロモーターとOsNAC6等のストレス耐性遺伝子を利用した組換えイネが、実際の圃場で生育阻害を起こさずにストレス耐性を強化できるかどうか、検証が必要である。

具体的データ

  1. 図1 新規に単離されたイネのOshox24プロモーターと、従来使用されてきたイネLIP9、OsNAC6プロモーターの発現解析

    図1 新規に単離されたイネのOshox24プロモーターと、従来使用されてきたイネLIP9OsNAC6プロモーターの発現解析
    これらのプロモーターをβグルクロニダーゼ(GUS)レポーター遺伝子と融合してイネに導入した。(A)地上部におけるGUS活性。未処理と乾燥5時間のGUS活性を示した。エラーバーは標準偏差。(B)種子におけるGUS活性。スケールバーは1mm。図はNakashima et al. (2014) 1)より転載(Copyright Springer; http://link.springer.com/journal/425)。

  2. 図2 Oshox24プロモーターを利用して乾燥耐性遺伝子の1種を発現させたイネ(Oshox24プロモーター+耐性遺伝子)の表現型

    図2 Oshox24プロモーターを利用して乾燥耐性遺伝子の1種を発現させたイネ(Oshox24プロモーター+耐性遺伝子)の表現型
    (A)通常生育条件下における生育。(B)乾燥耐性。(C)塩ストレス耐性。実験には水耕により2週間育てたイネの苗を使用した。エラーバーは標準偏差、**は有意水準1%を示す。図はNakashima et al. (2014) 1)より転載(Copyright Springer; http://link.springer.com/journal/425)。

Affiliation

国際農研 生物資源・利用領域

分類

研究A

研究プロジェクト
プログラム名

食料安定生産

予算区分

交付金 » 環境ストレス耐性

受託 » 農林水産省・新農業展開DREB

研究期間

2013年度(2007~2013年度)

研究担当者

中島 一雄 ( 生物資源・利用領域 )

科研費研究者番号: 90343772

Jan Asad ( 生物資源・利用領域 )

戸高 大輔 ( 生物資源・利用領域 )

圓山 恭之進 ( 生物資源・利用領域 )

科研費研究者番号: 10425530
見える化ID: 001781

後藤 新悟 ( 生物資源・利用領域 )

科研費研究者番号: 60433215

篠崎 一雄 ( 理化学研究所 )

科研費研究者番号: 20124216

篠崎 和子 ( 生物資源・利用領域 )

ほか
発表論文等

Nakashima, K. et al. (2014) Planta, 239: 47-60

https://doi.org/10.1007/s00425-013-1960-7

Nakashima, K. and Yamaguchi-Shinozaki, K. (2013) Plant Cell Rep., 32: 959-970

https://doi.org/10.1007/s00299-013-1418-1

日本語PDF

2013_B08_A3_ja.pdf267.91 KB

2013_B08_A4_ja.pdf366.15 KB

English PDF

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2013_B08_A4_en.pdf214.6 KB

ポスターPDF

2013_B08_poster.pdf367.69 KB

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