積雪深の分布と融解状況をリモートセンシングで知る手法

要約

衛星搭載マイクロ波放射計SSM/Iのデータにより、ユーラシア寒冷域の積雪深分布と、その融解状況をを日単位で推定できる。

背景・ねらい

寒冷域は、一般に植生が脆弱なうえ気候変化の影響が大きく現われる傾向を持つ。更に、そこでの水循環は雪氷現象を伴うために、水資源の特性が際立って複雑である。この様な地域での持続的生産のためには、積雪深やその融解の有無など、水資源の特性を把握して置くことが必要である。

成果の内容・特徴

  1. 北緯35度以北、東経60度~180度の範囲にある積雪深が公表されている830地点から解析に耐える339地点を選抜し、1993年10月~1998年4月のデータを収集した。一方、米国の衛星Defense Meteorological Satellite Program(DMSP)搭載のマイクロ波放射計Special Sensor Microwave/Imager(SSM/I)の画像から、積雪の地上観測地点が含まれる画素の値を取り出し、これを並べなおして、時系列衛星データセットを作成した(図1)。
  2. 電磁放射強度(輝度温度)の19GHzと37GHzとの差(Δ T)は、積雪深とほぼ一次の関係を持つ。一次関数の傾きと切片を、最大積雪深(データセットから推定した気候値)、2月の19Ghz輝度温度、植生指数、夏の37GHz偏光温輝度差(T37V-T37H)、平均標高の5つの地理情報で重回帰し、これをもとに、ユーラシアでの積雪深分布を示す地図を作成することができる(図2)。
  3. Δ Tは、融解中の積雪に対しては融解水の含有率に応じて小さな値を示す。これは、液体水の誘電率の虚数部分が両周波数帯において極めて大きいためである。また、DMSPは太陽同期の衛星であるため、異なる時刻の画像が取得できる。これらを利用し、早朝と夕刻のDTの差をとることで融解している積雪の分布や強さを推定できる(図3)。

成果の活用面・留意点

本研究で開発された手法と、農林水産計算センターのSSM/Iデータ提供システムを結合することによって、大陸スケールでの積雪深と融解域の実況を日単位で把握することができる。

具体的データ

  1. 図1
  2. 式1
  3. 図2
  4. 図3
Affiliation

国際農研 環境資源部

分類

研究

予算区分
経常
研究課題

高冷地域に賦存する水資源の特性解明

研究期間

平成12年度(6~10~12年度)

研究担当者

大野 宏之 ( 環境資源部 )

ほか
発表論文等

Hiroyuki Ohno, Divaa Erdenetsetseg, Gombo Davaa, Dambaravjaa Oyunbaatar, Hironori Yabuki, Tetsuo Ohata (1999): Improvement of microwave remote sensing algorithm for snow amount estimation using geographic information. Preprint of the 3rd International Scientific Conferrence on the Global Energy and Water Cycle, p. 541-542.

大野宏之, 矢吹伯裕, 大畑哲夫 (2000): 積雪深とSSM/I輝度温度との一次関係の地理的分布. 日本気象学会, 2000年秋季大会講演予稿集, p. 436.

日本語PDF

2000_07_A3_ja.pdf1.12 MB

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