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1008. 気候変動のインフレ圧力

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1008. 気候変動のインフレ圧力

 

先日は気候変動の経済被害を推計した論文を紹介しましたが、今日は温暖化・異常な熱波のインフレ圧力に関して分析した論文を紹介します。
 
気候変動の経済生産性への影響は、気候変動が価格の安定性を脅かす可能性を意味しています。論文は世界中の月別消費者価格指数に関する27,000件の観測値を用いて、気候変動のインフレへの影響の数量化を試みました。

高気温は、高所得国および低所得国の双方において、12か月にわたる食料インフレおよびヘッドラインインフレーション(食品やエネルギーの価格を含む、消費者物価指数(CPI)のすべての項目を含むインフレの尺度)をもたらしました。

気候変動の影響は季節や地域によっても異なり、さらに日々の気温変動や極端な降雨といった要因に左右されます。2035年に向けて予測されている気温上昇のもとでこうした影響を評価すると、世界平均で1年間に食料インフレーションは 0.92-3.23%、ヘッドラインインフレーションは 0.32-1.18%上昇します(予測範囲は排出シナリオ・気候モデル・特定の過程によって不確実性あり)。インフレ圧力が最も高いのは低緯度地域であり、高緯度では夏にピークの季節性傾向を示します。

論文は2022年夏季の熱波の影響も分析し、欧州で食料インフレを0.43-0.93%上昇させ、2035年に予測される温暖化によって30-50%高まる可能性を指摘しました。


(参考文献)

Kotz, M., Kuik, F., Lis, E. et al. Global warming and heat extremes to enhance inflationary pressures. Commun Earth Environ 5, 116 (2024). https://doi.org/10.1038/s43247-023-01173-x

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)


 

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