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915. 脂質含量を減らさずにタンパク質含量を高める野生ダイズ由来遺伝子の同定

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915. 脂質含量を減らさずにタンパク質含量を高める野生ダイズ由来遺伝子の同定

 

ダイズ種子には、約40%のタンパク質と20%の脂質が含まれており、人間が消費する最も重要なタンパク質と脂質の供給源として、世界の植物性タンパク質の71%以上、油の29%以上を提供しています (http://www.soystats.com)。しかし、ダイズではタンパク質含量は脂質含量と負の相関関係を示し、両方の含有量が高い品種の開発は難しいです。ダイズの祖先種である野生ダイズ(ツルマメ)は栽培ダイズより高い種子のタンパク質含有量を示し、栽培ダイズ品種のタンパク質含量を向上させるために重要な遺伝資源として注目されています。

国際農研では、野生ダイズに由来するタンパク質含量を増加させる遺伝子を同定するため、野生ダイズの染色体断片置換系統(CSSL)集団を作成しました(平成30年国際農林水産業研究成果情報「ダイズ重要形質の遺伝解析のための野生ダイズの染色体断片置換系統群」)。本研究では野生ダイズのCSSL計113系統を3年間(2018、2019、2020)圃場で栽培し、種子のタンパク質と脂質含量を評価しました。また、243個のDNAマーカー(SSRマーカー)を用いて、量的形質遺伝子座(QTL)解析を行いました。その結果、タンパク質、脂質およびタンパク質+脂質含量に関連する計12個のQTLを8本の染色体に同定しました。その中に第19番染色体に座上するQTL(qPro19)の野生ダイズの対立遺伝子は種子の脂質含量を減らさず、タンパク質含量のみを高めることが検証されました。同定されたqPro19の野生ダイズ対立遺伝子をダイズ品種「タチユタカ」に導入することで、脂質含量を減少させずにタンパク質含量が向上した戻し交配系統(BC4系統)T-678が得られました(図1、2)。本研究で同定した野生ダイズの対立遺伝子はダイズ種子の品質を向上させるためのダイズ育種において重要な遺伝資源です。

参考文献:
Park, C., Nguyen, T. T., Liu, D., Xu, D. (2023) A QTL allele from wild soybean enhances protein content without reducing oil content. Plant Genetic Resources- Characterization and Utilization. https://doi.org/10.1017/S1479262123000850

 

(関連するページ)
ダイズ重要形質の遺伝解析のための野生ダイズの染色体断片置換系統群https://www.jircas.go.jp/ja/publication/research_results/2018_b04

 

(文責:生物資源・利用領域 朴 哲旴)
 

 

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