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696. 荒っぽい気象変化のニューノーマル化

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696. 荒っぽい気象変化のニューノーマル化

先週後半は、日本も暖かい大気が流れ込み一時3月並みの気温になりました。また東京では、昨年末のクリスマス以来、久しぶりに降雨がありました。今週には気温が降下するらしいのですが。

海を越えてアメリカでは、ここ数年少雨による干ばつと山火事に悩まされ、アメリカ海洋大気庁によると、2022年の被害額は史上3番目と発表されたところです。一方で カリフォルニアでは年末来大雨が続き、大きな被害をもたらしていることが報道されています。本来なら恵みの雨というところですが、大気の川(Atmospheric River)という細長い水蒸気帯が滞留することで、連続する嵐によって、土壌中の水分が吸収されないうちに次の嵐に見舞われ、浸水や土砂崩れなどの被害をもたらしていると伝えられています。

気候変動のもとでは、干ばつと洪水の極端な現象の起こる確率が高くなると言われています。アメリカ気象学会(Bulletin of the American Meteorological Society (BAMS))のサイトで発表された研究は、歴史的観測とシミュレーションモデルの双方を駆使し、2021~2022年にアメリカ・イギリス・韓国・中国など世界各地で観測された異常気象を、人為的に引き起こされた気候変動の影響が高いことを示しました。韓国に関する研究によると、 2021年10月の平均気温は、1911-2020年よりも華氏7度 (1°Fの温度差は0.556°C)高かったとされ、6,250年に1度の出来事であったとか。分析に使われた気候変動モデルによると、大幅な温室効果ガス削減努力がなされない限り、こうした熱波は2050年までに「ニューノーマル」になりかねないとのことです。また、2021年の海洋・陸域の熱波は、日本・韓国・中国を含むアジアの人々・ビジネス・インフラ・漁業に影響を及ぼしたとされ、気候変動によって、こうした事象の頻度が30倍増え、温室効果ガス大量排出シナリオの下では今世紀半ばまでに1.5年おきに可能性もあると推計した研究もあるということです。
 
欧州でも年明けに平年よりも5~10℃を超える高温が記録されましたが、世界気象機関の科学者は、気候変動のもとで、こうした「荒っぽい brutal」気温変化が「ニューノーマル the new normal」になりうると語っています。気象自身はそもそも大きな変動を伴うものですが、最近観察される異常気象は、地球システムの自然のメカニズムからは説明できないものであり、気候変動の下ではこうした異常気象の起こる頻度が加速化している、というのが世界の気候学者の見立てとなります。

(文責:情報プログラム 飯山みゆき)
 

 

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