ネパールとラオスの農業と林業の特性
国際農林水産業研究センター研究資料
ISSN | 13404334 |
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書誌レコードID(総合目録DB) | AN10442873 |
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現在世界の人口は、年2%前後もの勢いで増加しており、このまま推移すると来世紀初頭には世界人口は63億人に達すると推定される。世界の陸地面積は限られており、現在でも一部の国ではわずかな圏内紛争でも飢餓状態に達するほど食糧供給の安定性は乏しく、今後この趨勢はさらに強まることが予想される。特にアフリカ、南アジアおよびラテンアメリカでの人口増加は急激で、これらの国々での食糧増産とそれに伴う森林の破壊が深刻化し、地域農業や生活に多大な影響を与える、水、土、気象などの地域環境や近年問題となっている地球規模での環境の変化がさらに憂慮されることとなろう。
日本と関係が深いアジア地域でも、南アジアを中心に人口の伸びは大きく、それにともなって森林を農地に転換する動きは急で、特に単位可耕地当り人口密度の高い国では転換による地域環境へのインパクトはきわめて大きい。転換された農地は、既開発農地とは異なり、必ずしも農業適地とはいえず、単位面積当りの収穫量は低く、いきおい広大な面積の森林が破壊されることとなる。またこのような国々の多くは、燃料や家畜飼料等の生活資材を森林から確保せざるを得なく、森林の劣化も著しい。このようなポジティーブ・サーキュレーションを断ち切るためには人口の増加速度を下げることは無論のことながら、既存農地の生産性を向上させ、単位面積当りの人口吸収能を増大させることが求められよう。
一方最近の冷戦構造の崩壊にともない、旧来の計画経済圏諸国の多くが自由経済圏に転換する動きが強まっている。このような国の多くは計画的な土地利用を進めてきた経緯があり、国土の乱開発利用が抑えられてきた。そのために森林や農地は比較的好条件に保たれている。しかしながらアフリカの一部の国を見ても理解されるように、自由経済圏に転換するととたんに乱開発が始まり、農地や森林の荒廃がもたらされることがある。アジアにおいてもヴェトナム、ラオス、カンボジア、モンゴルなどが計画経済圏から転換しつつあり、今後十分注目する必要があろう。
このような世界的変化の時を迎え、熱帯農業研究センターは拡大する対応地域への対応および広範な分野間の連携を現在以上に進め得る体制を確立すべく、新たに水産分野を加え、またその他の部門についても拡充を図り、1993年10月国際農林水産業研究センターとして再編、発足した。
旧熱帯農業研究センターでは、熱帯地域の代表的な国の農業特性についての調査研究を行っており、アジア地域ではすでに多くの国の情報が得られている。しかしながら、可耕地当りの人口密度が大きく、人口増加が著しい南アジアの国と東南アジアの旧計画経済圏国家については情報が十分とはいえない。そこで条件に合う典型的な国としてネパールとラオスを選び、社会形態、農業および森林の関わりを調査検討し、内在する問題点を摘出し、あわせて新国際農林水産業研究センターとの共同研究の可能性について検討した。
本報告書は、対可耕地人口密度の高い山岳国での農業と森林を中心とした環境問題、類似の自然環境を持つが対可耕地人口密度が低い旧計画経済国の今後の農業と林業の動向に焦点を絞ったが、今回の調査には日本国内はいうに及ばず、現地の政府機関や大使館・JICAの関係者に便宜・教示を賜った。記して謝意を表する。
日本と関係が深いアジア地域でも、南アジアを中心に人口の伸びは大きく、それにともなって森林を農地に転換する動きは急で、特に単位可耕地当り人口密度の高い国では転換による地域環境へのインパクトはきわめて大きい。転換された農地は、既開発農地とは異なり、必ずしも農業適地とはいえず、単位面積当りの収穫量は低く、いきおい広大な面積の森林が破壊されることとなる。またこのような国々の多くは、燃料や家畜飼料等の生活資材を森林から確保せざるを得なく、森林の劣化も著しい。このようなポジティーブ・サーキュレーションを断ち切るためには人口の増加速度を下げることは無論のことながら、既存農地の生産性を向上させ、単位面積当りの人口吸収能を増大させることが求められよう。
一方最近の冷戦構造の崩壊にともない、旧来の計画経済圏諸国の多くが自由経済圏に転換する動きが強まっている。このような国の多くは計画的な土地利用を進めてきた経緯があり、国土の乱開発利用が抑えられてきた。そのために森林や農地は比較的好条件に保たれている。しかしながらアフリカの一部の国を見ても理解されるように、自由経済圏に転換するととたんに乱開発が始まり、農地や森林の荒廃がもたらされることがある。アジアにおいてもヴェトナム、ラオス、カンボジア、モンゴルなどが計画経済圏から転換しつつあり、今後十分注目する必要があろう。
このような世界的変化の時を迎え、熱帯農業研究センターは拡大する対応地域への対応および広範な分野間の連携を現在以上に進め得る体制を確立すべく、新たに水産分野を加え、またその他の部門についても拡充を図り、1993年10月国際農林水産業研究センターとして再編、発足した。
旧熱帯農業研究センターでは、熱帯地域の代表的な国の農業特性についての調査研究を行っており、アジア地域ではすでに多くの国の情報が得られている。しかしながら、可耕地当りの人口密度が大きく、人口増加が著しい南アジアの国と東南アジアの旧計画経済圏国家については情報が十分とはいえない。そこで条件に合う典型的な国としてネパールとラオスを選び、社会形態、農業および森林の関わりを調査検討し、内在する問題点を摘出し、あわせて新国際農林水産業研究センターとの共同研究の可能性について検討した。
本報告書は、対可耕地人口密度の高い山岳国での農業と森林を中心とした環境問題、類似の自然環境を持つが対可耕地人口密度が低い旧計画経済国の今後の農業と林業の動向に焦点を絞ったが、今回の調査には日本国内はいうに及ばず、現地の政府機関や大使館・JICAの関係者に便宜・教示を賜った。記して謝意を表する。
刊行年月日 | |
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作成者 | 大角泰夫 花田俊雄 持田作 |
著者キーワード | 国別研究ニーズ NARS 農林業動向 農林業技術動向 ネパール ラオス NARS Agriculture forestry Entomology Nepal Lao P.D.R. |
公開者 | 農林水産省国際農林水産業研究センター |
オンライン掲載日 | |
巻 | 6 |
開始ページ | 1 |
終了ページ | 122 |
言語 | jpn |