DREB1Aは糖代謝酵素群、DREB2Aは分子シャぺロン群を特異的に制御する

要約

DREB1Aは糖代謝酵素群、DREB2Aは分子シャペロン群を特異的に制御し、スターチ分解酵素遺伝子やスクロース代謝関連酵素遺伝子の転写制御を介したスクロースやラフィノース等の蓄積量の増加が、DREB1A過剰発現植物の低温耐性能向上に重要であると考えられる。

背景・ねらい

低温及び乾燥環境下では、様々な遺伝子発現が誘導され、多種類の代謝産物量が変化する。これら遺伝子発現や代謝産物量の変化は、低温及び乾燥耐性の獲得に関与していると考えられている。シロイヌナズナのDREB1A遺伝子は低温ストレスに応答して遺伝子発現が誘導され、DREB2A遺伝子は乾燥ストレスに応答して遺伝子発現が誘導される。DREB1A遺伝子を恒常的に過剰発現した形質転換植物は低温及び乾燥ストレスに対する耐性能が向上し、DREB2A遺伝子を恒常的に過剰発現した形質転換植物は乾燥ストレスに対する耐性能が向上する。本研究では、DREB1A及びDREB2Aが制御する代謝と転写に注目して網羅的な比較解析を行い、低温及び乾燥耐性能向上に関与する要素を抽出することを目的とする。

成果の内容・特徴

  1. 低温処理後の非形質転換植物とDREB1A過剰発現植物、乾燥処理後の非形質転換植物とDREB2A過剰発現植物の代謝産物組成は、それぞれ相関が高い(図1)。
  2. スクロース及びラフィノース合成経路の代謝産物は、低温処理後の非形質転換植物とDREB1A過剰発現植物で特異的に蓄積し、DREB2A過剰発現植物では特異的な蓄積が見られないことから、これらの代謝産物量の増加はDREB1A過剰発現植物の低温耐性能向上に関与していると考えられる。
  3. 低温処理後の非形質転換植物とDREB1A過剰発現植物、乾燥処理後の非形質転換植物とDREB2A過剰発現植物の遺伝子発現は、それぞれ相関が高い。また、DREB1Aは糖代謝酵素群、DREB2Aは分子シャペロン群をコードする遺伝子発現をそれぞれ特異的に制御し、DREB1AとDREB2Aは共にDehydrinやLate embryogenesis abundant(LEA)タンパク質をコードする遺伝子発現を制御する(図2)。
  4. スターチ分解酵素遺伝子やスクロース代謝関連酵素遺伝子の転写制御を介したスクロースやラフィノース等の蓄積量の増加が、DREB1A過剰発現植物の低温耐性能向上に重要である。

成果の活用面・留意点

  1. 本研究ではシロイヌナズナを用いて低温や乾燥耐性能向上に関与する遺伝子群や代謝産物を明らかにした。これらの遺伝子や代謝産物は多くの作物においても同様に働くと考えられるため、ストレス耐性作物の作出や評価の指標として用いることができると考えられる。
  2. 本研究成果を様々な作物に応用するためには、効率的な作物の形質転換技術の開発が必要である。

具体的データ

  1.  

    図1 代謝産物を用いた主成分分析
    図1 代謝産物を用いた主成分分析
    ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS)などの各種質量分析機器を用いて代謝産物は網羅的に分析された。各主成分の意味付けは、それぞれの植物の代謝産物の蓄積の特徴を反映した。黄緑○は無処理の非形質転換植物、水色○は低温処理後1日目の非形質転換植物、青○は低温処理後4日目の非形質転換植物、黄色○は乾燥処理後1日目の非形質転換植物、橙○は、乾燥処理後3日目の非形質転換植物、緑◇は、形質転換植物に対する対照植物、青◇はDREB1A過剰発現植物、赤◇はDREB2A過剰発現植物の代謝産物組成を示した。
  2.  

    図2 DREB1AとDREB2Aが制御する下流遺伝子の分類
    図2 DREB1AとDREB2AAが制御する下流遺伝子の分類
    DREB1AとDREB2Aが制御する下流遺伝子の機能を20種類に分類した。
所属

国際農研 生物資源領域

分類

研究A

予算区分
交付金[ストレス耐性機構]
研究課題

植物の環境ストレス耐性機構の解明と耐性作物の開発

研究期間

2009年度(2006~2010年度)

研究担当者

圓山 恭之進 ( 生物資源領域 )

篠崎 和子 ( 生物資源領域 )

ほか
発表論文等

Maruyama et al. (2009) Plant Physiol. 150:1972-1980

日本語PDF

2009_seikajouhou_A4_ja_Part5.pdf87.31 KB