シリア北東部オオムギ・牧野地帯における過食飼料資源量の広域評価
シリア北東部乾燥地域のオオムギ・牧野地帯における飼料資源を現地調査および衛生データ解析により8つに区分けし、分布図を作成した。各区毎の分布面積および現存量より可食バイオマス量を算定し、試験地域全体の年間可食飼料資源量を評価した。
背景・ねらい
西アジア・北アフリカの年間降雨量200-300mmの乾燥地域では過放牧、燃料用樹木伐採および不適当な耕作等による土地荒廃の問題が深刻化している。このような環境条件がきびしいオオムギ・牧野地帯で飼養可能家蓄頭数さらには適正な土地利用を地域全域で計画するには、飼料資源の絶対量およびその分布を把握することが必要である。
成果の内容・特徴
- 北東シリア・アブダルアジズ試験地(95000ha)において季節毎に家畜が消費する植物(作物および野草)を調査するとともに、代表植物の出現密度を合計102地点において調査した。構成される植物の種類により、飼料資源をオオムギ、休閑地、植林地、高密度灌木、中密度灌木、低密度灌木、高密度草本、低密度草本、の8つに区分けし、区毎に3地点ずつ地上現存量を刈り取りによって調査した。
- 地理的に修正された衛生データおよび地上データを解析し、対象地全域の飼料資源区分けの結果を分布図として示した(図1)。対象地南北の平野部および中央から西部に広がる平坦な丘陵台地のほとんどがオオムギあるいは休閑地に区分けされた。灌木が主体の飼料資源は山麓周辺部、山地地帯、南部の起伏の多い丘陵地帯に分布し、低密度の草本植物が占める面積は全域の35%と最も大きいことがわかった。区分けの地上データに対する正答率はオオムギ、休閑地および植林地は100%であり、野草地は70~100%とばらつきが大きかった。
- 飼料資源区分毎の分布面積、地上現存量および可食バイオマス総量を示した(表1)。この地域全体で家畜が消費できる可食飼料資源量は約63000㌧であり、そのうち68%をオオムギ生産が占め、全体面積の32%から生産される。また灌木および草本類は飼料資源量の31%を占め全体面積の61%から生産されることが明らかとなった。すなわちこの地域でのオオムギ生産は牧野の半分の面積で2倍の飼料資源量を供給していることが判明した。
- シリア国では、地域全体の飼料作物・野草資源の分布およびそれぞれの絶対量を推定するはじめての試みとなり持続的畜産計画の基礎情報となった。
成果の活用面・留意点
この成果は同様の環境条件を持つ乾燥地域で応用でき、広域の土地利用計画、畜産開発に活用できる。同一飼料資源内のバイオマス量のばらつきが大きく、全域の資源量に誤差を生じるので推定方法の改良が必要である。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 畜産草地部
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国際乾燥地農業研究センター
- 分類
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行政
- 予算区分
- 国際プロ 経常
- 研究課題
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アフリカの乾燥
半乾燥地帯における草地の資源変動解明と保全技術開発
- 研究期間
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平成元~7年度
- 研究担当者
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平田 昌弘 ( 国際乾燥地農業研究センター )
藤田 晴啓 ( 畜産草地部 )
GINTZBURGER Gustav ( 国際乾燥地農業研究センター )
- ほか
- 発表論文等
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Hirata, H. and Fujita, H. 1995. Changes in grazing areas and feed resources. PFLP, Annual Report for 1994, 229-234, ICARDA.
- 日本語PDF
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1996_11_A3_ja.pdf1.24 MB