露地設置型省エネルギー養液栽培装置の開発

要約

塩類の集積土壌やpH土壌に代表される不良環境土壌など作物の栽培には不適な地域で、路地に設置電力不用養液管理を行わずに栽培できる養液栽培装置を開発した。

背景・ねらい

塩類の集積土壌やpH土壌に代表される不良環境土壌、島嶼地域では地下水の塩水化や砂地など作物の栽培に不適な地域で作物を栽培するには、土壌から離れた養液栽培が当面一番簡便な方法である。しかしわが国で用いている栽培装置は、電力を使い施設内に設置し、養液の分析や調整を行う必要があり、前記地域での利用は不適である。そこで開発途上地域で、路地に設置し(雨水を利用)、電力を用いず、養液管理(分析・調査)を行わずに栽培できる養液栽培装置を開発した。

成果の内容・特徴

装置のベット寸法は幅60cm、深さ15cm、長さ6m、概略を図1、2、3に示した。

  1. 養液タンク:1より栽培ベッド:2への養液供給は、タンクを栽培ベッド上 端より高く(20cm)し、重力水としてベッドまで導くためポンプ(電力)は 不要である。
  2. ベッド内の養液量は、調整層:4内のボールタップ:5により養液面が一定 になるように調整され養液はベッド底部の供給溝:6によりベッド末端まで 導かれる。
  3. ベッド内に入った雨水(露地設置の場合)は排水溝:7によりベッド外に 排出する。
  4. フィルム:8はベッドからの養液の漏れを防ぎ、波状板:9はベッド内に入 った雨水を集める(省くことができる)。
  5. 養液供給シート:10は、供給溝:6から養液を吸い上げ倍地底部に供給し、 防根シート:11は作物の根が供給溝:6に入るのを防ぐ。
  6. 培地:12は吸湿・吸水性素材のスポンジチップで、毛細管現象により養液 を培地底部より表面まで導く。飛散防止材:13は培地の飛散を防止、表面蒸 発防止、雨水除去、培地の昇温または逆に昇温防止などの目的に応じて資材 を使い分ける。
  7. 本装置を供試してトマト、メロンは雨よけ、さつまいも、カブ、チンゲンサイ等は路地で栽培したところ、全て栽培可能で、土耕と比べても遜色のないものが収穫できた。

成果の活用面・留意点

水はあるが低pHや塩類集積など不良土壌地域や、栽培土壌のない島嶼地域で適用可能である。わが国では、電気配線のないほ場や家庭菜園として利用できる。各野菜に対する最適養液濃度、土壌伝染性病害の対処方法、培地内残根処理の方法、培地表面の塩類集積除去(施設内設置)などの検討。国内及び国外特許を申請した。

具体的データ

  1. 図1
    図1 装置概略図
  2. 図2
    図2 ベット横断図
  3. 図3
    図3 ベット末端部
Affiliation

国際農研 沖縄支所

分類

国際

予算区分
科技庁・重点基礎
研究課題

環境調和型・省エネルギー養液栽培装置の開発

研究期間

1994年度

研究担当者

佐久間 青成 ( 沖縄支所 )

鈴木 克己 ( 沖縄支所 )

松本 大助 ( 沖縄支所 )

ほか
発表論文等

Suzuki K., H.Sakuma (1995) Trials on development of low-energy consuming hydroponics. 第2回アジア作物学会議.

佐久間青成・松本大助 (1996) 露地省エネルギー型養液栽培. 農業及び園芸, 第71巻, 第3号 (1996).

日本語PDF

1995_18_A3_ja.pdf952.56 KB

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