2022年9月ボリビア出張報告

課題3「持続的生産体系を実現する栽培体系の開発」などの現地調査・圃場試験開始に向けた研究実施基盤の構築

SATREPSボリビアプロジェクト「高栄養価作物キヌアのレジリエンス強化生産技術の開発と普及」の課題3の現地技術移転スタートにあたり、東京農工大学桂圭佑准教授とJIRCASの藤井健一朗特別研究員が、ボリビア側のカウンターパート機関であるサン・アンドレス大学(UMSA)とアンデス農業研究普及機関(PROINPA)と実施の進捗状況の確認と今後の計画の詳細打ち合わせを実施しました。また、ラパスからウユニまで陸路で移動することで、キヌアの作付体系の変遷を調査するとともに、ウユニではキヌアの栽培限界調査に適した圃場を発見しました。

PROINPA Viacha Stationでの集合写真

Umala, Cañaviriに設置された気象観測装置

キヌアの栽培準備@Estancia Jarma 2022.9

9月から雨季に入りキヌアの栽培が始まります。キヌアは、ウユニ塩湖畔で栽培できる唯一の作物です。この写真はウユニ塩湖の東にあるEstancia Jarmaというところの圃場なのですが、塩が析出して土壌が白くなっているのがわかります。中央上部に茶色く耕耘された圃場がありますが、ここで今季キヌアが栽培されます。奥の方にウユニ塩湖が見えます。

キヌアを作付けする圃場@ウユニ塩湖 2022.9

こちらはウユニ塩湖のキヌアをこれから作付けする圃場です。茶色くなっているところが耕耘された場所なのですが、右側から左側にかけて白っぽいものが流れ込んできているのが分かるかと思います。これは風によって運ばれてきた砂です。この辺りは日々風速が10m/s程度の強風が吹き荒れます。過酷な環境のウユニでは植生の回復が遅く、裸地になるとすぐにこのように風食が進んでしまいます。現地の植生を活かして風食被害を低減するということもこのプロジェクトの大きな目標の一つです。

ウユニ塩湖畔の圃場で発芽したキヌア 2022.9

ウユニ塩湖周辺では圃場に畝を切って畝間にキヌアが数十粒ずつ地下10-15cmの深い位置に播種されます。この辺りは乾燥が厳しいので、深く播種して干ばつを回避する必要があるのです。キヌアの種子は大きいものでも直径2mm程度しかないのに、このような深さに播種しても発芽するというのは驚きです。しかし不安定な降水量や砂に埋もれてしまうことによって発芽しないことも多くあり、これが農家を悩ませる最大の問題となっています。発芽不良でキヌアを播き直す農家も多くいます。発芽の安定化はキヌアの安定多収のためには非常に重要な課題です。

収穫後のキヌアの茎 2022.9

この圃場は昨季にキヌアが栽培されていたのですが、収穫後のキヌアの茎がまだ残っています。キヌアはアカザ科に属するのですが、アカザ科の茎は非常に硬くなります。実は皆さんよくご存知?の水戸黄門の杖もアカザで作られているのです。このように硬い茎は簡単には分解されず、また、家畜にとっても非常に利用しにくいものとなっています。このキヌアの茎の有効活用もこのプロジェクトの課題の一つです。

ウユニ塩湖畔の砂丘 2022.9

ウユニ塩湖畔には風食によって運ばれた砂が岩場に大量に堆積して砂丘を形成します。いかに風食の被害が甚大かが分かると思います。

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