南太平洋島しょ諸国の農業特性の解明

太平洋の広大な海域に点在する大小の島々。紺碧の海洋に囲まれて、珊瑚の発達した部分が淡い色あいに変わり、その境界が白く波だっている。そうした上空からの眺めは、なかなか美しい。火山を起源とする緑豊かな島もあれば、隆起珊瑚礁からなる瘦せた島も多い。人の住まない小さな島も含めれば、その数は1万余りにのぼるという。この地域は、地理的にミクロネシア、メラネシア、ポリネシアに分けられる。かっては、ヨーロッパの列強や新大陸の新興勢力がこれらの海域の島々の支配を争ってきた。このため、この地域は、欧米諸国に翻弄されながらもその影響を強く受け、いまもこれらの国々との結び付きは強い。
この地域の国々が独立を勝ち得たのは比較的新しく1960年代以降のことである。しかし、いまなお海外領や保護領のままの地域も多い。ほとんどが大陸の先進地域から遠く離れた群島国家で、いろいろな制約をかかえているため経済的自立が困難な状況にある。例えば、市場の形成一つをみても、この地域の人口の規模は余りにも小さい。全部合わせても622万人(1990年)にすぎない。世界の0.1%である。パプア·ニューギニアを除けばたったの235万人である。陸地の大きさはというと54万km2で、世界の0.4%。パプア·ニューギニアを除くと9万km2で、日本の1/4にすぎない。これが地球表面の1/3を占めようかという広大な海域に分散しているのである。どの国あるいは地域においても、人々は小さな集落単位に分散して、イモの栽培など農業を中心とした自給自足の生活を続けてきたのもうなずけよう。田部 昇氏は、こうした太平洋地域のおかれた状況をつぎのように述べている。「近年、アジア·太平洋地域の経済活力が注目され、二十一世紀に向けての太平洋構想が論議されている。しかし、ミクロネシア、メラネシア、ポリネシアで構成される南太平洋島しょ国地域は地域認識の枠組みに位置づけられていないうえ、また、経済圏概念ばかりでなく社会·文化概念としても十分な理解を得られていない。いわば陥没地域なのである」(アジ研ニュース No 67, 1986)。
しかしながら、このような地域においても社会の変化は徐々に進行している。人口の増加や、遅々とはしているが社会基盤の整備などから、農業においても、従来の粗放なやり方から、作物の集約栽培による生産の安定、拡大や、作物の品質の向上、新しい商品作物の開発など新たな対応が求められている。
熱帯農業研究センターでは、熱帯・亜熱帯地域の農業および農業研究の現状やるデータ動向に関する情報の収集とその特性の解析をとおして、ベースの充実を図り、また、当センターの研究戦略の構築に生かしてきた。太平洋地域については、共同研究のパートナーと考えた場合priorityは決して高くはないが、 「島しょ」における士壌の特性といった自然の制約条件は、例えばわが国の沖縄における問題と共通している部分も多いと思われるし、また、 「島しょ」の自然条件ばかりでなく、豊富な生物資源やあるいは農村社会の展開などはきめて巽味深い研究対象と考えられるであろう。本調査は、西サモア、トンガ、ソロモン諸島、バヌアツの4カ国の農業の現状と農業研究機閑等の紐織、活動をまとめたものである。
課題No.
p0002
事業実施:開始年
1991
事業実施:終了年
1992