アジアにおける強靭な低炭素型稲生産システムに向けた間断かんがいの導入の促進 ―進捗、課題、および可能性―
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コメは大多数の世界人口の食料安全保障にとって欠かせないだけでなく、水不足の調整においても重要な役割を担っており、気候変動による影響を緩和する大きな可能性を秘めている。それにもかかわらず、持続可能な稲作システムの実現は、一方で異常気象への脆弱性、もう一方で温室効果ガスを多く排出する慣行農法によって阻まれている。間断かんがいの技術は(i)中干しなどの1回のみの落水・1回のみ土壌内部まで空気が入り込む状態をつくること(エアレーション)、(ii)AWD、MiDi、およびその他のAWDのような複数回の落水・複数回のエアレーション、を特徴とし、農家のかんがい需要やメタン排出量を削減する低コストの技術革新である。例えばAWDの導入により水の使用量は最大30%削減でき、水不足の状況における農家の適応能力を向上させ、さらに常時湛水による稲作と比較して水田由来のメタン排出量を平均45%削減と大幅に削減できる。アジアやサブサハラアフリカでは、2000年代初頭から、こうした技術普及のための多大な取り組みが継続的に行われてきた。間断かんがいは、中央政府や地方政府の政策やプログラムの中で目に見える足跡を残してきたが、技術的、経済的、社会的なさまざまな要因のために、かんがい稲作農家によって慣行的技術として採用されるケースへの進展は、今のところ限られている。それでも、水管理に応じた価格調整を行う統合的アプローチの追求、AWDの導入に関するモニタリング、報告、検証に活用するリモートセンシング、および炭素クレジット制度など、進展を後押しするための端緒(エントリーポイント)となるものは存在する。これらは間断かんがいの導入を拡大させるための障壁を克服するのに役立つだけでなく、稲作システムをより収益性の高い、気候変動に強い低炭素なものに変えることができる。
刊行年月日 | |
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作成者 | Yuji Enriquez Katherine Nelson Bjoern Ole Sander Bas Bouman Valerien Pede Mamoru Watanabe |
公開者 | 国際農林水産業研究センター |
オンライン掲載日 | |
巻 | 2 |
言語 | jpn |