プロジェクトの概要
2024.12.03
RiceGX-SATREPSプロジェクトとは
近年、農業分野において、世界的に温室効果ガスの削減努力が求められる中、特に水田から排出されるメタンの削減に注目が集まっています。RiceGX-SATREPSプロジェクトでは、日本の有償資金協力により灌漑施設が整備されたカンボジア国プルサット州の水田を対象として、水稲の収量を低下させずにメタンの排出を抑制する広域的な水田水管理手法、GHGの削減量をモニタリング・評価する手法の開発、社会実装を行います。
研究題目1. メタン排出削減型水管理システムを構築し、間断灌漑を高度化する
気候変動の影響を考慮した水文環境の把握を踏まえ、広域の水田を対象に情報通信技術(ICT)を活用した間断灌漑を可能とする水管理システム(用水システム+排水システム)の構築を目指します。また、間断灌漑を実施するため、灌漑排水施設の管理者と農家などステークホルダーの情報共有を可能とし、意思決定を支援するツールの開発もあわせて行います。成果は、マニュアル・ガイドラインとして取りまとめます。
活動
1.1. 気候変動の影響を考慮した水文環境を把握する
1.2. ICTを活用した用水・排水システムを構築する
1.3. 手動による用水システムを構築する
1.4. メタン排出削減型水管理システムの適切な実施のための意思決定支援アプリケーションを構築する
1.5. メタン排出削減型水管理システムの運用・管理及び意思決定支援ソフトのトレーニングを実施する
研究題目2. メタン排出削減型水管理システムによるメタン排出削減量の広域推定手法を開発する
水田からのメタン排出量と間断灌漑による排出削減量を広域的に推定するために、タワー観測(微気象法)によるモニタリング手法を確立するとともに、ドローンを用いたモニタリング手法の開発に挑戦します。また、リモートセンシング技術を活用して、イネ水分ストレスの検知や田面水位のモニタリングを行います。そして得られた成果に基づき、モニタリング手法のマニュアルやガイドラインを公表します。
活動
2.1. タワー観測によるメタン排出量モニタリング手法を確立する
2.2. 移動プラットフォームを用いたメタン排出量モニタリング手法を開発する
2.3. リモートセンシングによるイネ水分ストレスと田面水位の観測に基づくメタン排出量推定手法を開発する
2.4. 広域的水田水管理に適したMRV方法論を作成する
研究題目3. メタン排出削減型水管理システムが環境と農家経済へ与えるインパクトを評価する
新たな技術であるメタン排出削減型水管理システムの導入が、対象地域の環境に与えるインパクトおよび農家世帯に与える経済インパクトを、ライフサイクルアセスメントを用いて評価します。また、プロジェクトを通じて作成する新たなMRV方法論を用いて、農家に裨益する炭素クレジットプロジェクトの形成に取組みます。あわせて、プロジェクトで取り組む間断灌漑のカンボジア国内への普及を目指し、灌漑水田を分類・分析し普及の可能性を検討します。
活動
3.1. メタン排出削減型水管理システム評価のためのミクロデータを取得し、データベース化する
3.2. メタン排出削減型水管理システムのライフサイクル評価を行う
3.3. 間断灌漑の普及のために灌漑水田を分類する
3.4. 炭素クレジットを創出するためのプロジェクトを形成するとともに創出したクレジットの農家のための活用計画を策定する