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調査の詳細

-形質・方法・気温データ・参考文献-

 


 

■調査の概要

「品種詳細情報」のページに掲載した「JIRCASマンゴー遺伝資源」の品種特性情報(写真を含む)は、沖縄県石垣市にある国立研究開発法人国際農林水産業研究センター 熱帯・島嶼研究拠点において、主として2010年から2011年にかけて実施した調査結果の概要である。

「熱研」で維持管理しているマンゴー遺伝資源のうち、無加温プラスチックハウス内で栽培した鉢植え各1個体を調査対象とした。各個体は80L鉢に植栽され、調査当時の樹齢は3~6年生であった。開花形質は、調査対象とした1個体のデータである。果実形質は、調査個体から収穫した複数個の果実について観察・測定を実施した。開花や収穫の期間に幅があった場合は、ピーク時のデータのみを使用した。

 

 

■品種特性情報シート

調査結果は、各品種ごとに「品種特性情報シート」(PDF版)にまとめた。①~⑥がパスポートデータ、⑦~⑬が調査情報の概要である。

これらの「品種特性情報シート」は次のように閲覧できる:

1)「データベース」から、目的とする特性を備えた品種を検索する

2)「品種特性情報シート」から、”品種名”、”育成地”、”果実の写真”をキーとして興味ある品種のシートを開く

 

 

■パスポートデータ

  • 品種名(品種特性情報シート①)

品種名はアルファベットとカタカナで表記した。アルファベット表記は、育成地で使われている綴りで記載した。カタカナ表記は、「熱研」で私たちが通常使っている読み方とした。

 

  • IRCAS ID(品種特性情報シート③)

JIRCASが独自に保有するマンゴー遺伝資源アクセッションに付した管理番号(JTMG-@@@)を記載した。

 

  • 育成地(国または地域) (品種特性情報シート④)

品種の育成地は、導入元のパスポートデータまたは文献から得た情報に基づき、国名で表記した(例:「タイ」、「インド」)。また、州などの単位で記録がある場合には、その情報も併記した(例:「アメリカ(フロリダ)」)。育成地の情報が得られなかった場合は「不明」とした。本サイトに掲載した62品種の育成地の内訳は、表1のとおりである。

 

  • JIRCASへの来歴(品種特性情報シート⑤)

JIRCASへの導入年と導入元を記載した。

 

  • 品種の由来、説明(品種特性情報シート⑥)

品種の由来や樹体、果実の特徴などについて、文献などから得た情報を概要を記載した。

 

 

■調査形質・方法および結果概要

  • 果実写真(品種特性情報シート②)

収穫後に追熟させ、完熟となった果実の外観と縦断面の写真を撮影した(主として2010~2011年に撮影)。

 

  • 開花形質(出蕾日、開花日、満開日)(品種特性情報シート⑦)

開花形質として出蕾日、開花日および満開日を次のように調査した;

  • 出蕾日:花芽が確認された月日。調査は週に1回。
  • 開花日:10%開花した花穂が確認された月日。調査は週に1回。
  • 満開日:70%開花した花穂が確認された月日。調査は週に1回。

 

「品種特性情報シート(PDF)」に掲載した開花形質は、2010年12月から2011年3月の間の調査結果である。比較対照として、同じ時期に栽培した‘アーウィン’ (Irwin:JTMG-030、国産マンゴーの9割を占める品種)のデータを併記した。

「開花日」の頻度分布を5階級に分けて表2に示した。‘アーウィン’と同じ時期である2月下旬に開花を始める品種の数が最も多かった。

 

  • 成熟日数(品種特性情報シート⑧)

収穫した複数個の果実について、満開日から果実を収穫するまでの日数をそれぞれ記録し、「成熟日数」として記載した。「品種特性情報シート」では「(最短日数)~(最長日数)」で表示し、「データベース検索」では中央値で表示した。

果実は落果する前に収穫した。収穫期の判断は、果皮表面の赤などの着色の変化ではなく、地色(緑色)の変化を目安とした。すなわち、果皮表面の半分以上で地色の緑色が抜けて明るい色に変化した時点で収穫した。なお‘アーウィン’については、日本では樹上で完熟させ自然落果をもって「収穫」とする方法が一般的であるが、本調査では他の品種と同様、地色の変化を目安として人為的に収穫を行った。

2010年の収穫調査では、成熟日数の中央値は、最短は100日、最長は154日であった。成熟日数が130~139日(区分3)の品種がもっとも多く、‘アーウィン’もこのグループに含まれていた(表3)。

 

  • 果実重(品種特性情報シート⑩)

果実の重量(g)を収穫日当日に測定した。測定した全果実の重量の平均値を本データベースに記載した。品種ごとの果実重の最小値は175g、最大値は1,095gであった。400~499g(区分3)の品種が最も多く、‘アーウィン’もこの区分であった(表4)。

 

  • 果実長(品種特性情報シート⑩)

果柄基部から最遠地点までの長さ(cm)を測定し(図1)、全調査果実の平均値を各品種の果実長として記載した。果実長の最小値は7.1cm、最大値は20.1cmであった。9.0~11.9cm(区分2)の品種がもっとも多く、‘アーウィン’はこのグループに含まれていた(表5)。


図1. 果実長と果実幅

 

  • 果実幅(品種特性情報シート⑩)

長さに対して垂直で最大となる幅(cm)を測定し(図1)、全調査果実の平均値を各品種の果実幅として記載した。果実幅の最小値は6.4cm、最大値は11.7cmであった。8.0~8.9cm(区分3)と9.0~9.9cm(区分4)の品種がもっとも多く、‘アーウィン’は区分3であった(表6)。

 

  • 果汁糖度(Brix値)(品種特性情報シート⑪)

常温で追熟した完熟果から果汁を搾りとり、デジタル糖度計(ATAGO製)によりBrix値(度)を測定し、全調査果実の平均値を各品種の糖度として記載した。糖度の最小値は12.1度、最大値は20.4度であった。15.0~15.9(区分2)の品種がもっとも多く、‘アーウィン’もこの区分に含まれていた(表7)。

 

  • 酸度(%)(品種特性情報シート⑪)

常温で追熟した完熟果の各果実から搾った果汁を5ml量りとり、フェノールフタレイン液を指示薬として0.156Nの水酸化ナトリウム液で中和滴定した値をクエン酸に換算した値を酸度とした。全調査果実の平均値を各品種の糖度として記載した。酸度の最小値は0.09%、最大値は0.68%であった。0.15~0.20%(区分2)の品種がもっとも多く、‘アーウィン’もこの区分であった(表8)。

 

  • 果皮の色(品種特性情報シート⑫)

常温で追熟した完熟果の果皮色を観察により判定した。その記載は、「農林水産省 農林水産植物審査基準 マンゴー種特性表」に従った。調査対象とした62品種では、図2に示す10区分(黄緑、緑と黄、黄、黄橙、黄と橙、橙、黄と赤、橙と赤、赤、橙と紫)が観察された。「品種詳細情報シート」では、この10区分にもとづく調査結果を記載した。橙と赤(区分8)の品種がもっとも多く、‘アーウィン’はこの区分であった(表9)。なお、データベース検索では、この10区分を「緑系」、「黄系」、「橙系」、「赤系」の4つのグループに分類して示した。


図2. マンゴー完熟果の果皮色

 

  • 果肉の色(品種特性情報シート⑫)

常温で追熟した完熟果の果肉色を観察により6区分(緑黄、淡黄、黄、淡橙、橙、濃橙)に分類した(図3)。各区分の色彩に対応する英国王立園芸協会 (RHS https://www.rhs.org.uk/ )の「国際標準カラーチャート」の番号(1A~23A)および各色のRGB値(https://www.azaleas.org/rhs-color-fan-1/の対照表による)は図3に示すとおりである。

淡橙の品種がもっとも多く、 ‘アーウィン’は淡黄(区分2)であった(表10)。


図3.マンゴー果肉色の分類基準

 

  • 果皮斑点(品種特性情報シート⑫)

常温で追熟した完熟果の果皮斑点の程度を、観察により4段階(無または極弱、弱、中、強)に分類した(図4)。弱(区分2)の品種がもっとも多く、 ‘アーウィン’もこの区分であった(表11)。


図4. マンゴー果皮斑点の分類基準

 

  • 果肉の硬さ(品種特性情報シート⑬)

常温で追熟した完熟果の果肉の硬さは、複数の調査者による官能試験により3段階(軟、中、硬)に分類した。‘アーウィン’は中(区分2)であった(表12)。

 

  • 果汁の多少(品種特性情報シート⑬)

常温で追熟した完熟果の果汁を1果ずつ絞り、その量を3段階(少、中、多)に分類した。‘アーウィン’は中(区分2)に分類された(表13)。

 

  • 果肉の粗密(品種特性情報シート⑬)

常温で追熟した完熟果の果肉の粗密は、複数の調査者による官能試験により3段階(粗、中、密)に分類した。‘アーウィン’は中(区分2)に分類された(表14)。

 

  • 核への繊維の付着(品種特性情報シート⑬)

常温で追熟した完熟果の種子(核)への繊維付着の程度を、核から果肉をこそぎ取りながら観察し、5段階(極少、少、中、多、極多)に分類した。‘アーウィン’は中(区分3)に分類された(表15)。

 

  • 果皮への繊維の付着(品種特性情報シート⑬)

常温で追熟した完熟果について、果皮が果肉から剥がれやすいかどうかを判断基準とし、果皮への繊維付着の多少を3段階(少、中、多)に分類した。‘アーウィン’は中(区分2)に分類された(表16)。

 

  • 種子の多胚性(品種特性情報シート⑨)*多胚性の詳細は、下記の補足説明を参照

種皮を剥き、種子が単胚であるか多胚であるかを観察により判別した(図5)。この調査は2012年~2015年に実施し、43品種についてデータを取得した(表17)。43品種中、多胚性が10品種、単胚性が33品種であり、‘アーウィン’は単胚性であった。


図5.マンゴーの単胚種子と多胚種子

 

種子の多胚性

【補足説明】

マンゴーは、品種によって1個の種子内に含まれる胚の数が1個のもの(単胚)と複数個のもの(多胚)があり、品種の分類上重要な形質である。

単胚性のものは交雑胚であるが、多胚性のものは複数の胚のうち交雑胚は1個で他は母親の細胞由来の胚である。通常、交雑胚の実生に比べて母親由来の実生の方が強勢であるため、多胚性の種子を播いた場合、交雑胚が成長することは少ない。母親由来の実生は母親(母樹)と遺伝的に同一なため(クローン)、個体間での生育が揃いやすい。このため、台木には多胚性品種の実生がよく使われる。

 

 

■調査期間(2010~2011年)の気温データ

国際農林水産業研究センター 熱帯・島嶼研究拠点(沖縄県 石垣市 真栄里 川良原)の無加温プラスティックハウス内の気温データ(2010年1月1日~2011年8月31日)は下記のとおり。気温は、測温抵抗体(Pt100)をセンサーとして毎時のデータを記録した。センサー部は地上2mの位置に配置した強制通風筒内に設置した。

 

 

 

■参考文献

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