9月1日にEnvironmental Science and Pollution Researchに国際農研と国際コムギ・トウモロコシ改良センター(CIMMYT) の共著論文”An ex ante life cycle assessment of wheat with high biological nitrification inhibition capacity”がオンライン公開されました。
本論文では、少ない窒素肥料で高い生産性を示すBNI(生物的硝化抑制)強化コムギについて、コムギ生産の各段階で発生する総温室効果ガス排出量を「ライフサイクル温室効果ガス」として評価する新たなモデルを構築したことを報告しています。
この研究はLCA(ライフサイクルアセスメント)に基づき、BNIに関わる補正を加えた新たなモデルに、硝化抑制率40%のBNI強化コムギを適用した場合、ライフサイクル温室効果ガスの排出量は15.9%低減できることを示した。また、この際のコムギの窒素利用効率は16.7%向上し、施肥窒素量は15.0%削減できることを試算しました。
BNI強化コムギは、微酸性から中性の土壌(pH5.5~7.0)で、硝化抑制作用をよく発揮することが明らかになっているため、世界のコムギ生産面積、約2億4000万ヘクタールの約3割にあたる約7200万ヘクタールがこの条件を満たしており、硝化抑制率40%のBNI強化コムギを導入した場合、窒素肥料由来の温室効果ガスを9.5%削減可能と推定しました。
国際農研は肥料を削減しながら温室効果ガスも減らせる、BNI強化コムギの開発に関する今回の試算を示し、高い生産性と農業からの環境負荷軽減を両立させるため、コムギ生産各国への普及につなげてゆきます。