研究成果情報 - タイ

国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。

各年度の国際農林水産業研究成果情報

  • インドシナ半島地域における肉用牛飼養標準と飼料資源データベース(2010)

    インドシナ半島熱帯地域に特有な在来種及びブラーマン種肉用牛のエネルギー及びタンパク質要求量に基づいた肉用牛飼養標準と、同地域固有の飼料資源の一般成分及び栄養価を収載した飼料資源データベースである。飼料設計を支援するためのソフトウェアが添付されている。

  • カビ酵素に代わり得るセルロース系バイオマス分解酵素の開発(2010)

    好熱嫌気性細菌由来のセルロソームとβグルコシダーゼの組み合わせで、セルロース分解能を飛躍的に向上できる。本酵素の組み合わせによりアンモニア処理稲わらを91%の高効率で分解でき、世界のバイオマス分解の主流技術であるカビ酵素に代わり得る糖化技術となる。

  • 東北タイ農民による節水野菜栽培技術指針(2010)

    農民参加型手法により、土壌水分を活用した野菜の節水栽培法の技術指針を策定した。東北タイの乾期でも、土壌水分を活用することで多種野菜を栽培することができる。

  • タイ国で収集したエリアンサス属植物遺伝資源の特性評価と分類(2010)

    タイ国で収集したエリアンサス属植物の遺伝資源は、形態や開花期、乾物生産等の農業特性において多様な変異を示す。これらは、Erianthus procerusおよびE. arundinaceus の2種を含み、E. arundinaceus についてはさらに3つの類型に分類できる。

  • 東南アジアの集約的養殖汽水エビから薬剤耐性菌を検出(2010)

    東南アジアで集約的養殖されたウシエビおよびバナメイエビに付着した薬剤耐性菌の分布実態を調査したところ、いずれにも薬剤耐性菌が検出され、多剤耐性菌もみられる。薬剤耐性菌の分布はエビへの抗生物質の投薬歴を反映していると考えられる。

  • 早生樹林を郷土樹種の森へ転換するには小面積皆伐が有効(2010)

    明瞭な乾期のある熱帯モンスーン地域において、早生樹林を郷土樹種の森林へと転換する造林手法を検討した。成熟した早生樹林で小面積皆伐を行い、郷土樹種を植える方法が郷土樹種の成長にとって最も有効である。

  • 食品中の血糖値上昇抑制物質1-デオキシノジリマイシンの高感度定量法(2009)

    東アジア・東南アジアにおける伝統食品等に含まれ、食事後の血糖値の上昇を抑制する1-デオキシノジリマイシンは、高速陰イオン交換クロマトグラフィー・パルス電流検出法(HPAEC-PAD)を用いて、従来法より簡便に定量することができる。

  • 大メコン圏における経済統合が農業に与える影響評価と貧困解消を実現するための政策提言(2009)

    大メコン圏の国境周辺地域の比較事例研究を通じて、農業分野の経済統合が、産地形成の進展、雇用機会の増大等により貧困解消に寄与している一方、競争激化により作目転換等を強いられている地域が存在し、激変緩和のための関係国間の政策調整が必要である。

  • 前作にクロタラリア類を栽培すると東南アジアのトウガラシのネコブセンチュウ被害は大きく軽減できる(2008)

    タイなどの熱帯地域において香辛料の原料として重要なトウガラシ(英名chili)で広がっているサツマイモネコブセンチュウの被害は、クロタラリアとの輪作により軽減できる。

  • 東北タイの塩類集積地域における持続的地下水利用可能量マップ(2008)

    東北タイのBan Phai流域を例として、地下水流動モデル構築のための調査を実施し、分布型地下水流動シミュレーションにより持続的な地下水利用可能量マップを作成した。

  • 東北タイの砂質傾斜農地における表面流出の発生メカニズムとため池の水位(2008)

    東北タイコンケン近郊の砂質傾斜農地における表面流出は、粘土層の上にある砂質土層が飽和状態になった時発生し、ため池の水位上昇と強く関連している。

  • タイ東北部における在来種育成牛の維持蛋白質要求量(2008)

    タイ東北部における在来種育成牛維持に要する飼料中粗蛋白質含量は6.1%以下、粗蛋白質摂取量は4.38 gCP/kgBW0.75である。この要求量は、欧米系の肉牛(NRCの維持蛋白質要求量:飼料中含量7.2%、摂取量5.67 gCP/kgBW0.75)に比べ低い値である。

  • 栽培時期等の調節によるタイ在来野菜の抗酸化性向上(2008)

    タイの在来野菜20種の抗酸化活性は栽培時期により変動し、乾期作では暑期作に比べ抗酸化活性が高まる。バジル類では、遮光または水ストレスを与える処理により抗酸化性が低下する。栽培時期等を調節することにより抗酸化性を向上させることができる。

  • 早生樹と組み合わせた効率的な郷土樹種の育成(2008)

    郷土樹種Hopea odrataタガヤサンSenna siamea)と組み合わせて植栽することで生存率・成長量ともに最も高くなり、効率的に育成することができる。早生樹とHopea の成長はトレード・オフの関係であり、ユーカリアカシアのような特に成長の早い早生樹でも適切な間伐を行い十分な光環境を確保すれば、Hopea を十分に育成できる。

  • 複合経営のためのため池の水利用計画ツール(2007)

    ため池を利用して複合経営を実践するには、数か月先を見越した水利用計画を立てる必要がある。経験のない農家が各自のため池の水量、乾季中の水の蒸発量、経営規模に応じた野菜や家畜の水消費量を簡単に読み取って複合経営が計画できる、円盤状の農家向け水利用計画ツールを作成した。

  • タイにおけるブラーマン種成去勢牛の維持エネルギー要求量(2007)

    タイにおけるブラーマン種成去勢牛の維持に要する代謝エネルギー要求量は457 kJ/kgBW0.75であり,代謝エネルギーの生産時における蓄積利用効率は57.4%である。これは,日本飼養標準における黒毛和種去勢牛の維持に要する代謝エネルギー要求量の470 kJ/kgBW0.75とほぼ同様の値である。

  • 食品中のγ―アミノ酪酸(GABA)の簡易迅速定量法の開発(2007)

    γ―アミノ酪酸(GABA)アミノ基転移酵素の作用を活用し、96穴マイクロプレートを利用して測定できるGABAの簡易迅速定量法を開発した。本法を用いることにより多検体の食品中のGABA含量を短時間かつ低コストで測定できる。

  • タイ北部の伝統大豆発酵食品トゥア・ナオから分離される納豆菌の遺伝資源としての有用性(2007)

    タイ北部の大豆発酵食品トゥア・ナオThua Nao)から分離される納豆菌(Bacillus subtilis (natto))は、日本の納豆製造用菌株と比べて遺伝的多様性に富み、アミラーゼ活性、ズブチリシンNAT活性、粘物質生産能などが顕著に高い菌株が見出される。

  • 低投資・環境共生型ウシエビ・海藻混合養殖技術の開発(2007)

    東南アジア諸国に多い小規模・零細エビ養殖業者も適用可能な低投資環境負荷の少ない安定したウシエビ養殖技術の開発を目指し、数種の海藻類との混合養殖実験を行った。シオグサ科植物およびクビレズタとの混合養殖は、エビの投餌量や養殖池環境維持費の削減を可能にし、従来の養殖法よりも生産効率を向上させた。

  • アジア開発途上地域の農業技術開発目標の重要度(2006)

    アジア開発途上地域の農業研究者、普及職員及び農家の間には、農業技術の開発目標の重要度や、技術開発目標の達成により期待される効果の認識に差がある。特に農業経営・技術普及に関する研究については、貧困解消への寄与が農家から期待されており、この分野の研究成果を農業技術政策へ反映させる努力が、研究開発への信頼醸成のために重要である。