メコンデルタに適した小型籾乾燥機の開発
本機は、ベトナム・メコンデルタの雨期に適した個別農家向けの稲籾乾燥機である。構造が簡単なので取り扱いが容易で、2tの湿籾(水分25%)を約13時間で乾燥することができる。また、胴割れ率を低く抑え、乾燥開始約5時間後の混合・攪拌操作により水分ムラを少なくすることができる。
背景・ねらい
メコンデルタはベトナム最大の米生産地帯であるが、収穫時期が雨期の場合、従来の天日乾燥方式では変質や胴割れの増加を招くので、品質を保持する個別農家向けの小型乾燥機の開発が求められている。そこで、容量2t程度で取り扱いが容易な全天候型の小型乾燥機を開発する。
成果の内容・特徴
- 本乾燥機は、練炭火炉、送風ファン・駆動エンジン及び両側に傾斜した乾燥層を持ち、乾燥層が低い位置に設置されているため、張り込み、混合、取り出しが容易である。また、簡易に設置できる雨よけテントを設置するので、突然の降雨でも乾燥を継続できる(図1)。
- 天日乾燥では、日差しが強い日には、乾燥速度が上昇し胴割れ粒の多発を招いたり、降雨の日が続くと仕上げまで3日以上要することがあり、品質が安定しない。本乾燥機は、質量2t、初期水分25%の籾を約13時間で乾燥し、胴割れの発生を低く抑え、常に一定の品質で乾燥できる(表1)。
- 乾籾1t当たりの練炭、軽油の燃料コストは約74,000VDN(約620円)である(表1)。また、本乾燥機の組立、乾燥、撤去まで4人で行うことができる。作業に要する時間は約4時間である(表2)。
- 本乾燥機で乾燥を行うと、乾燥籾層の上下等で水分ムラが生じるが、乾燥開始約5時間後に混合・攪拌操作を行うことにより、水分ムラを少なくするとともに乾燥速度を高めることができる。2回目の混合・攪拌操作は効果が小さいため、労力等を考慮すると、混合・攪拌操作は1回で十分である(図2)。
成果の活用面・留意点
- 本乾燥機の価格は、雨よけテントを除いて6,500,000VND(約54,000円)であり、既にメコンデルタを中心に40台程度普及している。
- 本乾燥機を屋外の凹凸がある場所に設置する際には、接地面等からの空気漏れがないよう、留意する必要がある。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生産環境部
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農研機構 近畿中国四国農業研究センター
- 予算区分
- 国際プロ〔メコンデルタ〕
- 研究課題
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メコンデルタにおける雨期作籾乾燥技術の開発
- 研究期間
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2002年度(1999~2002年度)
- 研究担当者
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大黒 正道 ( 農研機構 近畿中国四国農業研究センター )
小林 恭 ( 農研機構 中央農業総合研究センター )
金谷 豊 ( 農研機構 中央農業総合研究センター )
小林 廣美 ( 生産環境部 )
平岡 博幸 ( 生産利用部 )
BANH Le Van ( クーロンデルタ稲研究所 )
QUOC Hoang Bac ( クーロンデルタ稲研究所 )
大下 泰生 ( 農研機構 北海道農業研究センター )
- ほか
- 発表論文等
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大下泰生, 平岡博幸(2000): ベトナム・メコンデルタにおける米の乾燥作業の現状. 農作業研究, 35(別1), 35-36.
小林恭, 平岡博幸 (2001): ベトナム・メコンデルタにおける米の乾燥作業の現状. (2)-小型乾燥機の性能-. 農作業研究, 36 (別1), 45-46.
- 日本語PDF
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- English PDF
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2002_07_A4_en.pdf51.64 KB