稲種「カーチバイ」
カーチバイ(夏至南風)は、沖縄県において夏至の頃に吹く南風。沖縄では梅雨明けを知らせる季節風として知られている。
背景・ねらい
沖縄県産の焼酎(泡盛)は、主に輸入したタイ産インド型品種の米を用いて製造されてきたが、一方で、国産米を用いた安心・安全で外国にも輸出可能な付加価値の高い泡盛の製造が求められている。亜熱帯環境の沖縄県では、日本型の「ひとめぼれ」が主要品種として栽培されているが、その収量性は低い。このため、亜熱帯の環境下でも多収で安定生産が可能なインド型品種の利用を図る必要があった。
本品種は、農林水産省拠出金「日本-IRRI共同研究プロジェクト研究」(1997~2009年度)において、国際稲研究所(IRRI)と共同で育成されYTH183の系統名が付された。YTH183は、安定した多収特性が熱帯・亜熱帯環境下で報告されており、沖縄県産の泡盛等の加工用米としての醸造特性にも優れていたことから、日本国内での生産を期待し、「カーチバイ」品種として新たに日本国内で品種登録を行った。
沖縄県の普及品種である「ひとめぼれ」よりも 2 倍程度多収であるため安価な供給が期待され、日本政府が進める沖縄県産米を使った泡盛生産(琉球泡盛海外輸出プロジェクト)での活用が見込まれる。
特徴
「カーチバイ」は亜熱帯に位置する沖縄県石垣市においては晩生に属するインド型粳品種であり、高温環境での生育に適応しており、高い乾物生産性を有する。収量は、沖縄県の普及品種である「ひとめぼれ」より2倍以上多収である。「カーチバイ」は低肥料や陸畑条件でも高い生産性と収量指数を確保できる。いもち病抵抗性は強であり、穀粒には心白が多く認められるため、泡盛等の加工原料として適している。「カーチバイ」は半矮性で成熟期まで耐倒伏性は強であるが、登熟期が高温条件の沖縄では、茎葉から穂へ同化産物の転流が急激に進み多収となり、40日を過ぎると倒伏しやすくなるので、収穫適期を逃さないように留意する。「カーチバイ」は多くのインド型品種と同様に脱粒性易であり、適期に収穫して脱粒による損失を最小限にする必要がある。
登録情報
■出願先国:日本
- 農林水産植物の種類
- Oryza sativa L. (稲種)
- 品種名称
- カーチバイ
- 旧系統名
- YTH183
- 出願番号
(出願日) - 第34749号
(2020/6/11) - 公表日
- 2020/10/12
- 登録番号
(登録日) - ー
- 育成者権の
存続期間の終期 - ー
- 育成者権の共有者
- 国際イネ研究所(IRRI)
- 輸出先国の制限
- 有り
(指定国なし、すべて)
関連文献
国際農研 企画連携部 企画管理室 知的財産専門職
TEL : 029-838-6389