マンゴーの伝播と歴史:ハワイ、フロリダ

フロリダはマンゴーの第2の故郷


 マンゴーが最初にハワイへ導入された時期は記録されていませんが、ハワイアンマンゴーと呼ばれるいくつかの系統が古くから栽培されていました。これらは多胚性(ミニ事典「形態・特徴」>「単胚性と多胚性」を参照)の系統だったそうです。

 記録に残っているのは1825年頃の導入で、欧米人らの手によってフィリピン、チリ、メキシコ、中国南部など複数の経路でさまざまな地域からマンゴーが持ち込まれました。さらに、1899年にポルトガル人によって接ぎ木の技術とともに、インド系品種が接ぎ木苗で導入されました。それまでは、種子から育てた苗を庭先で育てるいう小規模なものだったハワイのマンゴー栽培が、接ぎ木技術の導入によって飛躍的に広がりました。

 1900年代には、同じ米国内のフロリダで改良された品種も導入されるようになりました。現在ハワイで栽培されている単胚性のマンゴーの多くはフロリダから導入された品種です[参考文献:Hamilton (1993)]。

 米国フロリダにキューバから‘No.11’という単胚性の品種が種子で持ち込まれたのは、1861年であったと記録にあります。さらに、1889年にインドから6品種が導入され、これらのうち‘Mulgoba’から得られた実生系統が優良であったため選ばれ、1910年に‘Haden’と名付けられました。‘Haden’はフロリダにおいて最も重要な品種となり、育種素材として活用され、‘Glenn’や‘Lippens’など優秀な品種の親となりました。

 フロリダはその後もアジア、アフリカ、中米、南米、カリブ海や太平洋諸島から積極的に品種を導入・保存し、品種改良に取り組みました。マンゴーの研究に力をいれた結果、いまではマンゴーにおける二次的な遺伝的多様性の中心地となり、フロリダで育成された品種は世界の各地に導入され、現在も世界中の市場で広く取引されています[参考文献:Knight and Schnell, 1994]。


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