地表水のラドン濃度測定のための簡便な濃縮装置の開発と応用
途上国でも設置可能な濃縮装置により、地表水のラドン濃度を容易に測定することができ、地下水の湧出地点の特定などに応用できる。
背景・ねらい
地下水の持続的な利用のためには、かん養から流出までの水の動きを把握する必要がある。地表水のラドン濃度は流出域を特定するのに良い指標であるが、その測定のためには濃縮作業が必要であった。この作業は高価な装置が必要で、しかも手間がかかることから、地表水のラドン濃度測定は広く実施されていなかった。本研究では、空気循環によって追い出したラドンを冷却したトルエンに溶解させる簡便な濃縮法を開発する。
成果の内容・特徴
- ラドンは地中のラジウムから供給される放射性のガスで、地下水中の濃度は地表水よりも高い。従って、地下水が地表に湧出すれば、地表水のラドン濃度の上昇となって現れる。ラドンは、低温のトルエンに良く溶ける性質をもつので、空気循環によって追い出した試料中のラドンをエタノールとドライアイスで冷却したトルエンに溶かす装置を開発した。空気の循環時間は60分である。濃縮後は、トルエンをガラスバイアルに移し、液体シンチレーションカウンタでラドンとその娘核種の放射線を計測する(図1)。
- 開発した装置の有効性を検討するため、あらかじめラドン濃度が既知の地下水とラドンを含んでいない水道水を用いて様々なラドン濃度の試料を作成し、濃縮作業の後、液体シンチレーションカウンタで計数率を測定した。計数率とラドン濃度は原点を通る直線に近似され、計数率に伴う誤差も小さいことから、この方法は有効であると判断した(図2)。
- この濃縮法を用いてコンケン周辺の地表水のラドン濃度を測定した。既存の情報によると、コンケン周辺では、地下水は標高が180mよりも低い地域に流出すると報告されている。調査の結果、標高が180mよりも低い河川や湖沼のラドン濃度が180mよりも高い地域の約3倍の値を示した(図3、表1)。これは、標高の低い河川や湖沼に地下水が湧出していることを示唆し、調査結果は、水位分布から地下水流動を予測している既存の情報と一致した。
成果の活用面・留意点
- ラドンの測定には、液体シンチレーションカウンタが必要である。本研究では、重さが約10kgで持ち運び可能な液体シンチレーションカウンタ(Hidex Triathler)を使用した。
- 本研究では、試料水の量を10Lとしたが、今後、試料水の量を変えることによってより効率的な方法を開発できる可能性がある。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 生産環境部
- 分類
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研究
- 予算区分
- 基盤〔地下水利用〕 国際〔天水農業〕
- 研究課題
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途上国における地表水と地下水の複合利用のための調査技術の開発
- 研究期間
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2004年度(2002~2004年度)
- 研究担当者
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濱田 浩正 ( 生産環境部 )
- ほか
- 発表論文等
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Hamada H. & Putiso M.(2005): Development of a simple method to concentrate the radon-222 content of water samples for the measurement of the radon-222 concentration in surface water. J. Japan Soc. Hydrol. & Water Resour., 18, 177-184.
濱田浩正ら(2004):東北タイにおける地表水のラドン濃度測定. 平成16年度農土学会講要, 906-907
- 日本語PDF
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