オイルパーム空果房を原料とするクラフトパルプの無塩素漂白

要約

オイルパーム空果房の有効利用方法の一つとして、クラフトパルプ化無塩素漂白を組み合わせることにより、環壌負荷の少ない手法を用いて、広葉樹パルプ並の白色度、繊維強度を持つパルプの製造が可能である。

背景・ねらい

   オイルパームからパーム油を産出する際、大量の空果房(empty fruit bunches = EFB)が廃棄物として残る。これは貴重なリグノセルロース資源であり、有効利用の一つとして、製紙等のパルプ原料としての研究も進められている。その一環として、EFBパルプの漂白性、特に環境負荷の小さい無塩素漂白の可能性を明らかにすることにより、EFB廃棄物の有効利用に繋げることができる。

成果の内容・特徴

  1. EFBを活性アルカリ量16%、硫化度25%の蒸解条件により得たクラフトパルプを、ダイオキシン類の発生源となる塩素系化合物を全く使用せずに、酸素・酸・オゾン・過酸化水素の4段階漂白を試みた。各漂白段階におけるパルプ物性の変化を表1に示す。カッパー価は着色物質・リグニンの含有量の指標であり、粘度はセルロース重合度の指標である。塩素系の漂白物質を全く使用しなくても、リグニンの大部分が除去されることがわかった。
  2. クラフト蒸解・無塩素漂白で得たEFBパルプを、叩解ののち手漉きシートを作成し、その紙力強度を測定した結果が表2である。漂白による織力の低下はほとんど起こらない。表1に示すように、セルロース重合度は漂白段階で徐々に低下しているものの、紙力強度への影響は全くみられない。一方、白色度は75%近くにまで向上し、塩素漂白で得られる値(80~90%)も達成可能であることが示された。
  3. パルプの叩解度(フリーネス)と紙力強度の関係を図1に示す。一般に、叩解度が進みフリーネスの値が低下すると、織力強度は向上する。図1にはEFBパルプとともに広葉樹パルプの文献値をプロットしてあり、この値を含めてほぼ直線関係にある。このことは、EFBパルプが漂白の有無に関わらず広葉樹並の紙力強度を持ちうることを示す。

成果の活用面・留意点

   オイルパーム廃残物の活用法として、低公害性の漂白を含むプロセスにより高品質パルプを製造するにあたり、当研究の成果は基礎的な知見となる。

具体的データ

  1.  

    表1 漂白プロセスにおけるEFBクラフトパルプの物性変化
  2.  

    表2 EFBクラフトパルプの紙力強度
  3.  

    図1 EFBクラフトパルプの紙力強度
Affiliation

国際農研 林業部

分類

研究

予算区分
経常
研究課題

熱帯産未利用木質資源の有効利用のための技術開発

研究期間

平成10~12年

研究担当者

田中 良平 ( 林業部 )

WANROSLI Wan Daud ( マレーシア理科大学 )

ほか
発表論文等

Tanaka, R. et al. Chlorine-free bleaching of kraft pulp from oil palm empty fruit bunches. Proceedings for 10th CELLUCON conference (CELLUCON '98), 14-17th Dec. 1998, Turku, Finland (in press).

日本語PDF

1998_14_A3_ja.pdf445.16 KB

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