施肥時期がキマメ-ソルガム間作体系の生産性及び窒素利用効率に及ぼす影響
半乾燥熱帯に広く分布する肥沃度の低いアルフィソル土壌において広く実践されているキマメとソルガムの間作体系では、窒素の施肥を一か月程度遅らせることにより、肥料窒素の利用効率を高め、生物的生産効率を向上させることが可能である。
背景・ねらい
半乾燥熱帯に広く分布する肥沃度の低いアルフィソル圃場においても、作付け初期においては比較的高濃度の硝酸が土壌水中に出現することが毎年確認されてきた。このことは窒素要求度が低い生育初期においては、作物生育に見合うだけの窒素が土壌から天然供給され得ることを意味し、基肥重視の従来からの施肥体系を見直す必要があることを示唆している。そこでキマメとソルガムの間作体系において、窒素の播種前施肥(播種前区)と播種後約1ケ月の施肥(播種後区)との間で、生産性並びに窒素の利用効率などを比較した。
成果の内容・特徴
- 作物別収量:ソルガムは単作・間作両者において、播種後区の方が播種前区よりも高い収量を示した(図1)。キマメでは明瞭な差異は認められなかった。
- 間作の生産効率:間作構成作物の生育期間の違いを考慮に入れた間作の単作に対する生産効率の指標であるATER(Area-time equivalent ratio)は全乾物重並びに収量の両者において播種後区の方が播種前区よりも高い値を示し、収量についてはこの比が1.6近くにもなった(図2)。
- 窒素利用効率:窒素の利用効率は、ソルガムで単作・間作ともに播種後区は播種前区の2倍以上となった(図3)。キマメでは両施肥処理間に明瞭な差は認められなかった。
- 窒素の給源:ソルガムにおいては、土壌窒素への依存量は両処理区の間で大きな違いはなかったが、肥料窒素の利用率が高まった分だけ、播種後区の方が単作・間作両方においてより多くの窒素を集積した(図4)。
- 以上の結果から、キマメとソルガムの間作体系では、窒素の施肥を1ケ月程度遅らせることにより、肥料窒素の利用効率を高め、生物的生産効率を向上させることが可能であることが示された。
成果の活用面・留意点
半乾燥地域の施肥管理の基礎技術として活用できる。今後、現場での数多くの実証試験が必要である。
具体的データ
- Affiliation
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国際農研 環境資源部
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国際半乾燥熱帯作物研究所
- 分類
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国際
- 予算区分
- 拠出金研究
- 研究課題
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熱帯半乾燥地域における主要畑作の栽培技術の開発
- 研究期間
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1994年度(1990~1994年度)
- 研究担当者
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伊藤 治 ( 環境資源部 )
片山 勝之 ( 環境資源部 )
JOHANSEN Chris ( 国際半乾燥熱帯作物研究所 )
ADU-GYAMFI J. Joseph ( 国際半乾燥熱帯作物研究所 )
- ほか
- 発表論文等
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Ito, O. et. al. (1994) Effects of application methods of nitrogen fertilizer on pigeonpea/sorghum intercropping. In Proceedings of International Symposium on Pulses Research, April 1994. p. 203-204.
- 日本語PDF
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1994_06_A3_ja.pdf1.42 MB