ウロクロア属「イサーン」

 「イサーン」は、インドシナ半島や沖縄などの熱帯モンスーン値域向けに開発した、耐干性が強く、単位面積当たりの収量が高く、粗放的管理下など減肥料・痩せ地での草地維持力が高く、さらに粗タンパク含量が高い、ウロクロア属(ブラキアリア属)牧草である。
 有性生殖親4倍体ルジグラス「宮沖国一号」を種子親、アポミクシス性の実用4倍体品種「Mulato(ムラトー)」(B. ruziziensis x B. brizantha)を花粉親として単交配した F1 集団から選抜したアポミクシス性系統である。

背景・ねらい

 ウロクロア属(ブラキアリア属)牧草は、世界の熱帯および亜熱帯で広く栽培されている暖地型牧草で、主に放牧用または放牧・採草兼用として利用されている。既存の主要品種の収量性は高く暖地型牧草の中で最大級であるが、これまでインドシナ半島や沖縄などの熱帯モンスーン地域での利用を想定した育種はされておらず、畜産振興に伴って本地域に適した品種の育成が望まれてきている。
 インドシナ半島では、厳しい乾期があること、小規模農家が継続的・省力的に維持管理できること、並びに可能な限り濃厚飼料の購入を低減し農家経営を健全なものに維持できること、等の要件に対応するため、耐干性が強く、単位面積当たりの収量が高く、粗放的管理下など減肥料・痩せ地での草地維持力が高く、さらに粗タンパク含量が高い品種育成が必要である。
 ウロクロア属牧草はこれらの特性を最もよく示す牧草であり、また沖縄では放牧地造成や新品種への更新の容易さから種子で造成可能なウロクロア属牧草への潜在的なニーズは高く、草地造成が容易であれば九州地域での単年利用放牧草種としての導入の可能性も見込まれる。
 こうしたニーズに合致した牧草新品種の育成のため、タイ農業協同組合省畜産振興局(DLD)、(国研)農業・食品産業技術総合研究機構、沖縄県及び宮崎大学と共同研究を行い、本品種を開発した。

特徴

  • 適地:南西諸島地域およびインドシナ半島
  • アポミクシス性のため、均一性の高い放牧地・採草地の造成が可能である。
  • 出穂期は 10 月 27 日で晩生の中とする(タイ)。
  • 平均乾物収量は 標準品種の「Ruzi」及び比較品種「Mulato2」より多収となった。相対収量は、対「Ruzi」比 114 で、「Mulato2」は同 97 であった。
  • 晩生で利用期間中ほとんど開花しない。

登録・出願情報

■出願先国:日本

農林水産植物の種類
Urochloa P. Beauv. (ウロクロア属)
品種名称
イサーン
旧系統名
Br203
出願番号
(出願日)
第31973号
(2017/3/30)
公表日
2017/6/26
登録番号
(登録日)
第27256号
(2019/2/12)
育成者権の
存続期間の終期
30年
(2046/8/5)
育成者権の共有者
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、沖縄県、国立大学法人宮崎大学
輸出先国の制限
有り
(指定国なし、すべて)

■出願先国:タイ王国(出願中)

農林水産植物の種類
Urochloa P. Beauv. (ウロクロア属)
品種名称
イサーン
旧系統名
Br203
出願番号
(出願日)
013/2564
(2021/5/12)
公表日
登録番号
(登録日)
育成者権の
存続期間の終期
育成者権の共有者
タイ農業協同組合省畜産振興局、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構、沖縄県、国立大学法人宮崎大学
連絡先
〒305-8686 茨城県つくば市大わし1-1

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