EDITS-Cowpea データベースにようこそ!
この"EDITS-Cowpea"データベースは、アフリカの重要なマメ科作物の一つであるササゲ(詳細は”ササゲとは?”を参照)に着目し、その豊富な遺伝的多様性を、育種・研究活動や利用の場において有効に利用してもらうことを目的として作成しました(詳細は"なぜデータベースが必要?”を参照)。
本データベースは、ササゲの色々な形質、とくに豆の品質に間連する形質についての情報を掲載しています。これらのデータセットは、JIRCASの"EDITS-Cowpea"プロジェクト(詳細は"EDITS-Cowpeaプロジェクト"を参照)の活動を通じて収集したデータを基に構築しました。
多様なササゲの豆と草型(撮影地:ナイジェリア国カノ、提供:村中聡)
このデータベースを初めて利用する方は、上部タブの「マニュアル」ページに使い方の説明を載せていますので 、そちらを参照ください。既に利用法 をご理解いただいている方は、「データベース」に直接お進みください。検索できる形質の一覧とその評価法等についての情報は「形質の一覧」 にまとめてあります。
この"EDITS-Cowpea"データベースのコンテンツは、JIRCASのホームページ利用規約(CCBY準拠)に従っていただく事で、複製、公衆送信、翻訳・変形等の翻案等、自由に利用できます。利用に際しては「利用規約」のページをご参照ください。
ササゲとは?
ササゲ [Vigna unguiculata (L.) Walp.]は、英語ではCowpea(カウピー)と呼ばれ、食用および飼料作物としてアフリカ、アジア、ヨーロッパ、南北アメリカ等の地域で広く栽培されています。とくに、その世界生産量の90%以上を占めるアフリカ[1]では、小規模農家の換金作物として非常に重要な役割を持っています。
世界のササゲの生産量と地域別生産比率(1998−2013年平均、FAO stat)
マメ科作物として空気中の窒素を固定できるササゲは、肥沃度が低い土壌でも栽培することができます。さらに、乾燥への耐性が強く、栽培期間が比較的短いことから、様々な作物と組み合わせて栽培することが可能です。このような特性は、不安定で厳しい生産環境での農業生産の安定化に大きく貢献しています[2]。
トウジンビエの間で栽培されるササゲ(撮影地:ニジェール国ジンデール、提供:村中聡)
また、他の豆類と同様にタンパク質やミネラル、ビタミンが豊富なササゲは、主食である穀類やイモ類と組み合わせて利用されます。17−24%のタンパク質を含むササゲ[3]は価格が安く保存が効くことから、高価な肉や魚等に手が届かない貧しい人々のタンパク質源としてとくに注目され、アフリカにおける栄養バランスの改善に貢献できると期待されています。
なぜデータベースが必要?
アフリカにおけるササゲの調理法は非常に多様で、地域の食文化に深く根付いていることがよくわかります。また、市場で売られるササゲは、豆の大きさ、種皮の色や質等によって値段が違いますが[2],[4]、このような豆の大きさや色などに対する好みは地域によって様々なようです。
西アフリカの様々なササゲ料理 (提供:村中聡)
近年のアフリカの急速な経済発展は、食料増産のために生産量向上のみを強調する時代から、生産物の質の向上、さらには農家、市場、消費者の嗜好やニーズを反映させた「付加価値化」の視点が求められるようになることを予感させます。とくに、ササゲのような地域の文化に根ざした作物の育種や利用には、生産性の向上に加え、その作物が果たす役割に応じた「質」の視点が、今後ますます重要になっていくと考えます。一方で、現在のササゲ育種の現場では、このような子実品質形質についての評価が充分に行われているとはいえません。
そこで、海外や日本の育種家や研究者に私たちの試験調査で得られた情報を利用していただければと考え、このデーターベースを作成しました。今後の育種・研究や利用の場において、ササゲの遺伝資源が持つ多様性が充分に活用され、地域の農家のニーズや消費者の嗜好性に応える品種が開発されることを強く期待します。
EDITS-Cowpea プロジェクト
“EDITS-Cowpea” プロジェクトは、JIRCASの国際共同研究の一環として、ササゲの開発に必要な「消費者の嗜好性の理解」、「農家のニーズや作付体系の多様性の理解」、「農業形質や品質形質の多様性情報」、「農業形質や品質形質を効率的に評価する技術」といった基盤情報の収集や評価技術の開発を行ってきました。
本データベースは、この EDITS-Cowpea プロジェクトで収集されたデータを基に作成しました。このデータベースを通じて、これらの成果が西アフリカ各国の育種・栽培研究に利用され、ササゲの品質向上に貢献することを期待しています。
謝辞
本データベースの作成にあたっては、EDITS-Cowpeaプロジェクトメンバーならびに共同研究者のご協力が欠かせませんでした。
ここで、協力をいただいたすべての方に、感謝の意を表します。
(敬称略)
国立研究開発法人 国際農林水産業研究センター JIRCAS(https://www.jircas.go.jp)
銭 小平、星 早織、玉那覇 麻里子、Garba M. Bala、Olajumoke Olaleye、Bola Obaude、林 賢紀(情報管理)
国際熱帯農業研究所(International Institute of Tropical Agriculture, IITA)(http://www.iita.org)
Ousmane Boukar, Tahirou Abdoulaye, Christian Fatokun, Haruki Ishikawa
東京農業大学(http://www.nodai.ac.jp)
妙田貴生、竹内純子、中澤洋三
Universidad de la República、ウルグアイ(http://www.universidad.edu.uy)
Jorge Franco
東京大学(http://www.u-tokyo.ac.jp/index_j.html)
櫻井武司
D-blauer-strom、日本(http://www.d-blauser-strom.com)
蓮沼ユウキ
そして、リストに載せきれなかったたくさんの協力者の皆様、ありがとうございました。
EDITS-Cowpeaデータベース開発チーム
村中聡、高木洋子(プロジェクトリーダー)、松本 亮、庄野真理子
参考文献
[1] FAOSTAT 2015.
[2] Coulibaly O, Lowenberg-DeBoer J (2002) The economics of cowpea in West Africa. In: Fatokun CA, Tarawali S, Kormawa PM, Tamo M (eds.) Proceedings, Third World Cowpea Conference, Challenges and opportunities for enhancing sustainable cowpea production. Ibadan: IITA, pp. 351-366.
[3] Muranaka S, Shono M, Myoda T, Takeuchi, J, Franco J, Nakazawa Y, Boukar O, Takagi H (2016) Genetic diversity of physical, nutritional, and functional properties of cowpea grain and relationships among the traits. Plant Genetic Resources: Characterization and Utilization 14(1): 67-76.
[4] Faye M, Jooste A, Lowenberg-DeBoer J, Fulton J (2004) The influence of cowpea characteristics on cowpea prices in Senegal. Agrekon 43: 418-429.