研究成果情報 - ベトナム

国際農林水産業研究センターにおける研究成果のうち、成果が特に顕著で、広く利用を図ることが望ましいと考えられる成果を要約してご紹介しています。

各年度の国際農林水産業研究成果情報

  • アジア開発途上地域の農業技術開発目標の重要度(2006)

    アジア開発途上地域の農業研究者、普及職員及び農家の間には、農業技術の開発目標の重要度や、技術開発目標の達成により期待される効果の認識に差がある。特に農業経営・技術普及に関する研究については、貧困解消への寄与が農家から期待されており、この分野の研究成果を農業技術政策へ反映させる努力が、研究開発への信頼醸成のために重要である。

  • メコンデルタ水田における稲わら堆肥連用効果(2005)

    メコンデルタ沖積土壌地帯での稲わら堆肥連用試験において、化学肥料を慣行の40および60%減肥して稲わら堆肥を施用した水田は、化成肥料のみを慣行量施用した水田に比較していもち病発生時には罹患率が低くなり、統計的有意差はないものの6作目以降の収量が高くなる。

  • 隣接カンキツ園への距離20m以内にあるカンキツ新植園での定植直後のミカンキジラミ防除の必要性(2005)

    カンキツグリーニング病媒介虫ミカンキジラミDiaphorina citri)は、既存カンキツ園との距離が20m以内にある新植園には、定植後半月内で多数侵入し、1ヶ月内に第一世代を出現させ、その後個体群を維持する。既存カンキツ園までの距離が20m以内にある新植園は、定植直後より侵入個体の防除が必要である。

  • グリーニング病激発地での無病苗の植付と薬剤施用によるカンキツ栽培延長・増収効果(2005)

    カンキツグリーニング病激発地のベトナムメコンデルタ地帯でのカンキツ品種キングマンダリンの栽培において、本病の媒介虫であるミカンキジラミDiaphorina citri)に対する浸透性薬剤無病苗を利用した果樹園では、これらを利用しなかった果樹園に比べて栽培期間が1~2年間長く、所得も高い。

  • メコンデルタにおける米ヌカ主体豚飼料へのサトウキビ・シロップ添加効果(2004)

    米ヌカを主体とした飼料中にサトウキビ・シロップを4%添加することにより、豚の増体飼料要求率が改善される。また、米ヌカを主体としながらサツマイモ茎葉を乾物当り10%配合した飼料中にサトウキビ・シロップを3%添加することにより、増体、飼料要求率及び粗タンパク質、粗脂肪等の消化率が改善される。

  • ベトナムメコンデルタにおける低利用飼料資源を用いた豚の購入飼料代替と肉質の改善効果(2003)

    養豚用飼料として米糠破砕米が多給される地域において、ホテイアオイ(Eichhornia crassipesウォータースピナッチ(Ipomoea aquatica等の低利用飼料資源を給与することにより、増体飼料要求率には悪影響を与えず、背脂肪厚、背脂肪ヨウ素価等の肉質も改善され、農家の収入増加に役立つ。

  • ベトナム・メコンデルタの養豚農家における豚コレラの診断と損耗対策(2003)

    ベトナム・メコンデルタでは子豚の致命的疾病として豚コレラが重要な原因であることが明らかとなった。予納接種を効果的に行うためには、市販ワクチンの一本化と接種時期の適正化、普及ワクチンでは母豚は6カ月毎に種付け前の接種、子豚へは生後1月目の接種が必要である。

  • メコンデルタに適した小型籾乾燥機の開発(2002)

    本機は、ベトナム・メコンデルタの雨期に適した個別農家向けの稲籾乾燥機である。構造が簡単なので取り扱いが容易で、2tの湿籾(水分25%)を約13時間で乾燥することができる。また、胴割れ率を低く抑え、乾燥開始約5時間後の混合・攪拌操作により水分ムラを少なくすることができる。

  • ベトナム・カントー省における農業開発に伴う窒素フローの変動予測(2002)

    メコンデルタのカントー省において作成された農業開発計画を基に、農業生産に関する窒素フローを推定すると、2010年には家畜糞尿として発生する窒素が59kgN/ha/yearと1999年の3倍以上に増加する。

  • ベトナム・メコンデルタにおけるオニテナガエビの稚エビ培養技術の確立と技術移転(2002)

    グリーンウオータシステム(植物プランクトン餌料)はオニテナガエビの安定種苗生産技術を可能にする効率的な稚エビ培養技術であり、飼育水を交換する必要がないので、従来システムより生産コストを低く抑えることができる。このシステムの技術移転により、2002年のベトナムの稚エビ生産量は1990年の50倍の5,000万尾に拡大した。

  • エビ類の成熟度判定技術の開発(2002)

    エビ類を用い、卵黄タンパク質全アミノ酸配列プロセシング経路および成熟過程に伴う遺伝子発現変化にもとづいて開発したエビ類の成熟度判定法により、親エビを選定できる。

  • メコンデルタの水稲潤土直播栽培における収量性からみた最適播種量(2000)

    メコンデルタ水稲潤土直播栽培において、慣行播種量(200~250kg/ha)より少ない播種量(50~100kg/ha)で最高収量が得られる。必要な苗立数確保と手播ムラを小さくするためには、播種量(80~100kg/ha)が奨励される。本播種量は慣行播種量の1/2~1/3に節減されるため新品種の普及および種子の更新が促進されると共に種子費用も節減できる利点がある。

  • ベトナムメコンデルタ在来稲における耐塩性品種選定のための遺伝的多様性の評価(1999)

    水稲60品種と陸稲5品種を含むメコンデルタ在来稲は、43個のDNAマーカーマイクロサテライトマーカー)を用いたクラスター分析により遺伝的多様性が明らかになり、それらメコンデルタ在来稲61品種から14の耐塩性品種を選抜した。

  • メコンデルタにおける農牧水復合技術体系の評価と改善(1998)

    ドイモイ政策の進展、定期的・大規模な洪水、発達した水路系統の条件下でメコンデルタ農畜水複合技術が発達している。2期作稲作ブタ育成、水産養殖を組み合わせ物質と水の循環を技術の主要構造とし、平均1ha小規模家族経営であり、階層分化が進んでいる。

  • 途上国を対象とした農業の総合研究における国際共同の推進方策(1998)

    メコンデルタのように情報の蓄積が少ない地域を対象に国際共同による総合研究を行う場合、コーディネーターに情報を集中するとともに関係者の自由な参加の国内支援グループによる、具体的な目標設定、計画作成、評価及び広報が必要である。

  • ベトナムに分布するイネいもち病菌およびイネ白葉枯病菌の病原性(1998)

    ベトナムのメコンデルタを中心に、イネいもち病菌、及びイネ白葉枯病菌を収集し、病原性特性(レース)を明らかにすると共に,それらに対する低抗性遺伝子源の検索を行った。いもち病ではPish, Piz-t 及び Pik-p が、また、白葉枯病ではxa-5, Xa-7, Xa-17が、それぞれ低抗性遺伝子源として有効と考えられた。

  • ベトナム・メコンデルタにおける豚回虫の感染状況と駆虫の経済効果(1998)

    ベトナム・メコンデルタで飼養される豚について豚回虫(Ascaris suumの感染状況を明らかにするとともに、駆虫経済効果について検討した。駆回虫感染豚を駆虫群と無駆虫群に分け、増体重を比較したところ、駆虫群では体重80kgに達する期間が約2週間短縮された。その経済効果は1頭当たり約200円と見積もられた。

  • ベトナム・メコンデルタの水稲栽培における問題点と改善方策(1997)

    メコンデルタ水稲栽培ファーミングシステムの基幹であり、2期、3期作等の新技術導入により生産性は向上しつつあるが、雨季作はいまだに不安定である。葉色などによる生育診断と、窒素施用法水管理の改善により、倒伏が回避され、生育・収量の安定化が可能である。

  • ドイモイ政策下のベトナム・メコンデルタにおける農業構造変動(1997)

    ベトナム・メコンデルタでは、1988年以降、ドイモイ政策により市場経済が導入される中で、農家の階層分化が顕著に進行している。急速に規模拡大する農家、規模を縮小し土地無し層に転落する農家が存在する一方、2ha未満の中小規模層には、複合経営を取り入れて、経営の安定化を図る動きも認められる。地域単位での複合化を目指す必要がある。

  • ベトナムの米需給の展望(1996)

    ドイモイ政策の下で市場経済化を進めているベトナムでは、年率5%近くで米生産の拡大が続いているが、政府の輸出数量規制のため国内では供給過剰が起こっており、国内米価の下落をくい止めるためには輸出規制緩和が必要である。