国立研究開発法人国際農林水産業研究センター中長期計画

国立研究開発法人国際農林水産業研究センター中長期計画

制定認可:平成28年3月31日農林水産省指令27農会第1663号
変更認可:平成31年3月26日農林水産省指令30農会第 896 号

 国立研究開発法人国際農林水産業研究センター(以下「JIRCAS」という。)は、熱帯又は亜熱帯に属する地域その他の開発途上にある海外の地域(以下「開発途上地域」という。)における農林水産業に関する技術上の試験及び研究を行うことにより、これらの地域における農林水産業に関する技術の向上に寄与してきたところである。

 第1期中期目標期間(平成13年度~平成17年度)では、世界の貧困と飢餓の削減を掲げた「国連ミレニアム開発目標」1)の採択等の情勢を考慮しつつ、開発途上地域の農林水産業の持続的発展のための研究開発、国際的な研究交流及びネットワークの拡大等に取り組んだ。

 第2期中期目標期間(平成18年度~平成22年度)では、多国間共同研究体制の構築、国際農業研究協議グループ(以下「CGIAR2)」という。)傘下の研究機関等国際的にトップレベルにある研究機関との共同研究を推進するとともに、JIRCASにおけるすべての研究をプロジェクト方式とし、機動的な研究体制を構築した。また、平成20年度には、旧独立行政法人緑資源機構の海外農業開発事業を承継し、現場での活動を強化した。

 第3期中期目標期間(平成23年度~平成27年度)では、資源環境管理、食料安定生産、農村活性化を重点研究分野とするプログラム・プロジェクト体制を構築し、研究資源を重点的に投入する旗艦プロジェクトを設けて研究を推進した。さらに、研究成果普及のためのプロセスの強化や実験材料の安全管理を徹底するための体制を整備した。

 本中長期目標期間においては、これまでの取組や「農林水産研究基本計画」(平成27年3月31日農林水産技術会議決定)を踏まえ、開発途上地域における持続的な資源・環境管理技術の開発、熱帯等の不良環境における農産物の安定生産技術の開発、開発途上地域の地域資源等の活用と高付加価値化技術の開発に資する研究を重点研究分野として位置付け、重点的な研究資源の配分を行うとともに、研究開発成果の最大化に向けた研究マネジメント改革を推進する。また、開発途上地域における技術開発のニーズ・シーズを的確に把握するとともに、我が国の政策に即応した研究開発を推進するため、国際的な農林水産業に関する情報の収集、分析及び提供に係る業務を強化する。

これらの取組により、我が国における国際農林水産業研究を包括的に行う唯一の試験研究機関として、関係機関との連携体制を強化するとともに、開発途上地域を対象とする研究開発に関して中核的な役割を担い、世界的な食料問題の解決と我が国の農林水産研究の高度化に貢献する。

第1 研究開発の成果の最大化その他の業務の質の向上に関する事項

以下の5業務をそれぞれ一定の事業等のまとまり(セグメント3))として推進し、評価を行う。    

  • ①企画・連携推進業務[1~5]
  •     
  • ②開発途上地域における持続的な資源・環境管理技術の開発[6(1)及び別添の1]
  •     
  • ③熱帯等の不良環境における農産物の安定生産技術の開発[6(1)及び別添の2]
  •     
  • ④開発途上地域の地域資源等の活用と高付加価値化技術の開発[6(1)及び別添の3]
  •     
  • ⑤国際的な農林水産業に関する動向把握のための情報の収集、分析及び提供[6(2)]

(注)上記の[ ]内は各業務に関連する第1の項目を示す。

<企画・連携推進業務>

1 政策の方向に即した研究の推進とPDCAサイクル4)の強化

(1)政策の方向に即した研究の戦略的推進

  • ア 開発途上地域の農林水産業の技術の向上や国際情勢の観点に加え、我が国の政策への貢献、我が国の農林水産研究の高度化や技術の向上への波及効果等の観点を踏まえ、研究課題、研究推進方策等を設定し、研究開発を戦略的に推進する。
  • イ JIRCASが行う研究開発により、我が国の企業、生産者等が活用できる技術シーズや知見が得られた場合には、事業化等に貢献するための情報提供や現地での支援等を積極的に行う。
  • ウ 研究課題の進捗管理は、研究に先立って各年次の具体的な達成目標を記載した工程表を作成し、これに基づいて行う。
  • エ 研究課題の評価は、中長期計画の達成状況を基に、外部の専門家・有識者等を活用しながら、適正かつ厳格に実施する。
  • オ 評価結果や社会情勢の変化等を踏まえ、「選択と集中」を徹底し、研究課題の変更、強化、中止等、必要に応じた見直しを行う。

(2)法人一体の評価と資源配分    

  • ア 業務の運営状況及び研究の進捗状況について、法人一体として自ら適切に評価・点検する仕組みを設けるとともに、評価・点検結果を踏まえて適切に計画を見直すことにより、PDCAサイクルを強化する。当該評価は、農林水産省が設定する評価軸及び指標等に基づき行う。
  • イ 評価結果によって予算・人員等の研究資源を的確に配分するシステムを構築・運用し、研究を推進する。また、理事長の裁量による研究職員への効果的なインセンティブの付与や研究環境の充実を図る。
  • ウ 中長期計画の一層の推進を図るため、委託プロジェクト研究費、競争的研究資金等の外部資金の獲得に積極的に取り組む。
  • エ 主務大臣による評価結果等については適時・適切に業務運営に反映する。

2 産学官連携、協力の促進・強化

  • ア 国際機関、国内外の研究機関、普及機関、大学、民間企業等との連携・調整機能を強化し、情報及び人的交流を積極的に推進する。
  • イ グローバル・フードバリューチェーン戦略5)(平成26年6月6日グローバル・フードバリューチェーン戦略検討会策定)等の政府方針等に即して、国内外の研究ネットワークを活用した連携を強化する。
  • ウ 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構(国際連携担当部署を含む。)(以下「農研機構」という。)、国立研究開発法人森林総合研究所、国立研究開発法人水産研究・教育機構等との技術シーズや人材活用を含めた協力関係を強化する。
  • エ 熱帯・島嶼研究拠点の立地特性を活かし、農研機構が実施する農業生物資源ジーンバンク事業や育種研究、他の研究機関が推進する我が国の農林水産業の発展に資する研究業務に協力する。

3 知的財産マネジメントの戦略的推進

(1)知的財産マネジメントに関する基本方針の策定

「農林水産省知的財産戦略2020」(平成27年5月28日農林水産省策定)及び「農林水産研究における知的財産に関する方針」(平成28年2月23日農林水産技術会議決定)等を踏まえ、開発途上地域における研究開発成果の社会実装を促進するための知的財産マネジメントに関する基本方針を見直す。

(2)知的財産マネジメントによる研究開発成果の社会実装の促進

  • ア 研究開発の企画・立案段階から終了後の一連の過程において知的財産マネジメントに取り組む仕組みを構築・運用する。
  • イ 研究開発成果を地球公共財(Global Public Goods)6)として開発途上地域で活用する観点を含め、成果の権利化・秘匿化・公知化等の取扱いや実施許諾等に係る方針を検討し、研究成果の社会実装の迅速化や知的財産管理の円滑化を図る。
  • ウ 知的財産マネジメントに関する基本方針に基づき、戦略的な知的財産管理のために必要な取組を実施する。

4 研究開発成果の社会実装の強化

(1)研究開発成果の公表

研究開発成果は、研究成果情報、学術雑誌等への論文掲載、学会での発表等により積極的に公表する。その際には、権利化の可能性、秘匿化の必要性等を十分検討する。

(2)技術の普及に向けた活動の推進

  • ア 研究成果のデータベース化・マニュアル化や、生産者・企業・普及組織等が利用可能な形で研究成果を紹介すること等を通じ、成果の迅速な普及を図る。
  • イ 成果の利活用が見込まれる国や地域において、関係機関等と連携し、成果の普及に向けた活動を行う。
  • ウ 研究開発の成果の実用化及びこれによるイノベーションの創出を図るため、必要に応じ、JIRCASの研究開発の成果を事業活動において活用し、又は活用しようとする者に対し、科学技術・イノベーション創出の活性化に関する法律(平成20年法律第63号)に基づく出資並びに人的及び技術的援助を行う。その際には、「研究開発法人による出資等に係るガイドライン」(平成31年1月17日内閣府政策統括官(科学技術・イノベーション担当)・文部科学省科学技術・学術政策局決定)を踏まえ、関連規程を整備した上で適切に実施する。

(3)広報活動の推進

  • ア 我が国及び関係国において、JIRCASの業務への理解を増進し、知名度を向上させる観点から、広報戦略を策定し、戦略的な広報活動に取り組む。
  • イ プレスリリース・取材対応等、メディアを有効に活用するとともに、刊行物の発刊、メールマガジンの発信、外部イベントへの出展など、多様な媒体・機会を活用して情報発信を行う。
  • ウ 現地ワークショップや説明会を通じて、研究分野やターゲットに応じた効果的な情報発信を行う。

(4)国民との双方向コミュニケーション7)

  • ア シンポジウムやセミナーの開催、見学や技術相談への対応等を通じて、効果的な双方向コミュニケーションを進める。
  • イ JIRCASの活動に対する国民の声を把握するとともに、理解を増進するため、一般公開に加え、外部イベントへの出展、サイエンスカフェ、出前授業等のアウトリーチ活動に積極的に取り組む。
  • ウ 共同研究の相手機関や研究対象地の所在国政府等と連携し、研究実施地域の住民の理解を得るための取組を推進する。

(5)研究開発成果の中長期的な波及効果の把握と公表

  • ア 独立行政法人化以後の主要な研究開発成果について、フォローアップ調査を計画的に実施し、ウェブサイト等で公表する。
  • イ JIRCASの研究開発成果や活動が、我が国及び開発途上地域の農業や社会の発展に果たしてきた貢献について広く国民に認知されるよう、ウェブサイト等を活用して情報発信する。

5 行政部局等との連携強化

  • ア 行政部局のニーズに対応するため、研究の設計から成果の普及・実用化に至るまでの各段階において、関係行政部局との情報交換を密に行うとともに、毎年度の成果検討会議等に関係行政部局の参加を求める。
  • イ 行政部局の要請に対応するため、緊急時対応を含む連携や各種連絡会議、シンポジウムの開催、専門家派遣等に協力する。
  • ウ 行政、各種団体、大学等の依頼に応じ、JIRCASの高い専門知識が必要とされ、他の機関では実施が困難な分析及び鑑定を実施する。
  • エ 他の国立研究開発法人、大学、国公立機関、民間、海外機関等から講習生、研修生を積極的に受け入れ、人材育成や技術水準の向上に貢献する。
  • オ 国際農林水産業研究を包括的に行う機関として、国際機関や学会等の委員会・会議等に職員を派遣するなど、要請に応じて活動に協力する。

<研究業務>

6 研究業務の推進(試験及び研究並びに調査)

(1)研究の重点化及び推進方向

  • ア 開発途上地域の農林水産業の技術の向上や国際情勢の観点に加え、我が国の政策への貢献、我が国の農林水産研究の高度化や技術の向上への波及効果等の観点に留意しつつ、別添に示した研究を重点的に推進する。
  • イ 国内外の関係機関との情報交換や相互連携体制の整備に努め、開発途上地域、先進諸国、CGIAR等の国際研究機関、NGO8)等民間団体、国際的な研究ネットワーク等と連携して効果的な国際共同研究を推進する。
  • ウ 他の農林水産関係国立研究開発法人との連携を一層強化し、各法人の有する研究資源を活用した共同研究等を効率的に推進する。

(2)国際的な農林水産業に関する動向把握のための情報の収集、分析及び提供

  • ア 国際的な食料・環境問題の解決を図るため、諸外国における食料需給、栄養改善及びフードシステムに関する現状分析、将来予測及び研究成果の波及効果分析を実施する。
  • イ 開発途上地域での農林水産関連の研究開発や、我が国が進めるグローバル・フードバリューチェーン構築等の施策に貢献するため、国内外関係機関との連携や重点地域への職員派遣により、国際的な食料・農林水産業及び農山漁村に関する情報や資料を継続的、組織的、体系的に収集、整理するとともに、国内外の研究者や行政機関、企業等に広く提供する。
  • ウ 国内の関係機関間の組織的な情報交流を強化するため、「持続的開発のための農林水産国際研究フォーラム」(J-FARD)9)を運営する。
  • エ 理事長インセンティブ経費等を活用し、目的基礎研究10)を推進する。
  • オ 目的基礎研究の推進に当たっては、「農林水産研究基本計画」に示された基本的な方向に即しつつ、JIRCASが実施する意義や有効性等を見極めて課題を設定するとともに、将来のイノベーションにつながる技術シーズの創出や異分野融合による新たな研究展開に寄与する先駆的研究としての発展可能性を重視する。さらに、進捗状況を評価し、研究方法の修正や研究課題の中止等、適切な進行管理を行う。

第2 業務運営の効率化に関する事項

1 経費の削減

(1)一般管理費等の削減

運営費交付金を充当して行う事業については、業務の見直し及び効率化を進め、一般管理費(人件費を除く。)については毎年度平均で少なくとも対前年度比3%の抑制、業務経費については毎年度平均で少なくとも対前年度比1%の抑制を行うことを目標に、削減する。

(2)調達の合理化

  • ア 定量的な目標や具体的な指標を含む「調達等合理化計画」を、毎年度6月末までに策定し、着実に実行するとともに、毎年度の実績評価の際、自己評価を行う。
  • イ 特殊で契約相手が特定される場合など随意契約を適用できる事由の明確化、単価契約の拡大等により、公正性を確保しつつ、研究開発物品の調達の迅速化を図る。
  • ウ 農研機構との間で共同調達、落札価格情報の共有などの連携を進め、効率化を図る。

2 組織・業務の見直し・効率化

(1)組織・業務の再編

  • ア 中長期目標の達成やPDCAサイクルの強化に向けて、組織・研究体制や業務を柔軟に見直す。
  • イ 法人内の情報システムの整備など業務の電子化を進めるとともに、テレビ会議システムやICTを活用した業務効率化を図る。
  • ウ 上記の取組により、適切な人員配置と業務の最適化を図る。

(2)研究施設・設備の集約(施設及び設備に関する計画)

研究施設・設備整備については、老朽化の現状や研究の重点化方向を踏まえ、整備しなければ研究推進が困難なもの、老朽化が著しく改修しなければ研究推進に支障をきたすもの、法令等により改修が義務付けられているものなど、業務遂行に真に必要なものを計画的に整備するとともに、利用を促進し、利用率の向上を図る。

平成28年度~平成32年度施設、設備に関する計画
(単位:百万円)

施設・設備の内容 予定額  財源  
  研究施設の整備
  研究援助施設の整備
  機関維持運営施設の整備
  その他業務実施上必要な施設・設備の整備等      
      施設整備費補助金
合 計 274±χ  

注)χ:各年度増減する施設、設備の整備等に要する経費

第3 予算(人件費の見積りを含む。)、収支計画及び資金計画

1 予算

平成28年度~平成32年度予算 (単位:百万円)

区分 企画・連携推進業務 資源・環境管理研究業務 農産物安定生産研究業務 高付加価値化研究業務 情報収集分析業務 法人共通 合計
                 
 収 入                
  運営費交付金 1,710 3,687 3,551 3,752 754 13,454 3,912 17,366
  施設整備費補助金 274 0 0 0 0 274 0 274
  受託収入 133 414 719 188 21 1,475 0 1,475
    寄附金収入 0 0 0 0 0 0 0 0
  諸収入 17 0 0 0 0 17 0 17
                 
    計 2,134 4,101 4,270 3,940 775 15,220 3,912 19,132
                 
 支 出                
    業務経費 1,007 1,577 1,560 1,587 440 6,171 0 6,171
    施設整備費 274 0 0 0 0 274 0 274
    受託経費 133 414 719 188 21 1,475 0 1,475
    一般管理費 0 0 0 0 0 0 520 520
    人件費 731 2,110 1,993 2,165 314 7,313 3,392 10,705
                 
    計 2,145 4,101 4,272 3,940 775 15,233 3,912 19,145

[運営費交付金算定のルール]
1.平成28年度は、次の算定ルールを用いる。
   運営費交付金=(前年度一般管理費×α×γ)
+(前年度業務経費×β×γ)
+人件費+δ-諸収入
   人件費=基本給+諸手当+超過勤務手当+退職手当+福利厚生費
   諸収入 =運営費交付金を財源として実施する事務・事業から生じるであろう自己収入の見積額
       α:一般管理費の効率化係数(0.97)
       β:業務経費の効率化係数(0.99)
γ:消費者物価指数(1.000)
       δ:平成28年度の業務の状況に応じて増減する経費

  2.平成29年度以降については、次の算定ルールを用いる。
   運営費交付金(y)={A(y-1)×α×γ}
+{B(y-1)×β×γ}
+{人件費(退職手当、福利厚生費を除く。)
+退職手当+福利厚生費}±δ- 諸収入
   A(y-1):直前の年度における一般管理費相当分
   B(y-1):直前の年度における業務経費相当分
            α:一般管理費の効率化係数
            β:業務経費の効率化係数
            γ:消費者物価指数
            δ:各年度の業務の状況に応じて増減する経費
        諸収入:運営費交付金を財源として実施する事務・事業から生じるであろう自己収入の見積額
        人件費=前年度の(基本給+諸手当+超過勤務手当)×(1+給与改定率)
        諸収入=直前の年度における諸収入×ω-ε
ω: 収入政策係数(過去の実績を勘案し、各事業年度の予算編成過程において、当該事業年度における具体的な係数値を決定。)
ε:自己収入の増加見込み額を充てて行う新規業務の経費

(注) 消費者物価指数及び給与改定率については、運営状況等を勘案した伸び率とする。ただし、運営状況等によっては、措置を行わないことも排除されない。

[注記]前提条件
1.期間中の効率化係数を一般管理費については年97%、業務経費については年99%と推定。
2.給与改定率及び消費者物価指数についての伸び率をともに0%と推定。
3.収入政策係数についての伸び率を0%と推定。
4.百万円未満を四捨五入してあるので、合計とは端数において合致しないものがある。

2 収支計画

平成28年度~平成32年度収支計画(単位:百万円)

区分 企画・連携推進業務 資源・環境管理研究業務 農産物安定生産研究業務 高付加価値化研究業務 情報収集分析業務 法人共通 合計
                 
 費用の部 1,732 4,213 4,336 4,026 782 15,089 4,065 19,154
     経常費用 1,732 4,213 4,336 4,026 782 15,089 4,065 19,154
         人件費 731 2,110 1,993 2,165 314 7,313 3,392 10,705
         業務経費 811 1,525 1,479 1,503 422 5,740 0 5,740
         受託経費 133 411 706 186 21 1,457 0 1,457
         一般管理費 0 0 0 0 0 0 510 510
         減価償却費 57 167 158 172 25 579 163 742
     財務費用 0 0 0 0 0 0 0 0
     臨時損失 0 0 0 0 0 0 0 0
                 
 収益の部 1,732 4,214 4,347 4,026 782 15,101 4,065 19,166
     運営費交付金収益 1,514 3,635 3,470 3,668 736 13,023 3,902 16,925
     諸収入 17 0 0 0 0 17 0 17
     受託収入 133 414 719 188 21 1,475 0 1,475
     寄附金収益 11 0 2 0 0 13 0 13
     資産見返負債戻入 57 165 156 170 25 573 163 736
     臨時利益 0 0 0 0 0 0 0 0
                 
 純利益 0 1 11 0 0 12 0 12
 前中長期目標期間繰越積立金取崩額 0 1 4 1 0 6 0 6
 総利益 0 2 15 1 0 18 0 18

[注記]
1.収支計画は、予算ベースで作成した。
2.当法人における退職手当については、役員退職手当支給規程及び職員退職手当支給規程に基づいて支給することとなるが、その全額について運営費交付金を財源とするものと想定している。
3.「受託収入」は、農林水産省及び他府省の委託プロジェクト費等を計上した。
4.百万円未満を四捨五入してあるので、合計とは端数において合致しないものがある。

3 資金計画

平成28年度~平成32年度資金計画(単位:百万円)

区分 企画・連携推進業務 資源・環境管理研究業務 農産物安定生産研究業務 高付加価値化研究業務 情報収集分析業務 法人共通 合計
                 
 資金支出 2,145 4,101 4,272 3,940 775 15,233 3,912 19,145
   業務活動による支出 1,675 4,046 4,178 3,854 757 14,510 3,902 18,412
   投資活動による支出 470 55 94 86 18 723 10 733
   財務活動による支出 0 0 0 0 0 0 0 0
   次期中長期目標の期間への繰越金 0 0 0 0 0 0 0 0
                 
 資金収入 2,145 4,101 4,272 3,940 775 15,233 3,912 19,145
   業務活動による収入 1,860 4,101 4,270 3,940 775 14,946 3,912 18,858
      運営費交付金による収入 1,710 3,687 3,551 3,752 754 13,454 3,912 17,366
       受託収入 133 414 719 188 21 1,475 0 1,475
        寄附金収入 0 0 0 0 0 0 0 0
      その他の収入 17 0 0 0 0 17 0 17
     投資活動による収入 274 0 0 0 0 274 0 274
        施設整備費補助金による収入 274 0 0 0 0 274 0 274
        その他の収入 0 0 0 0 0 0 0 0
     財務活動による収入 0 0 0 0 0 0 0 0
        その他の収入 0 0 0 0 0 0 0 0
   前中長期目標期間からの繰越金 11 0 2 0 0 13 0 13

[注記]
1.資金計画は、予算ベースで作成した。
2.「受託収入」は、農林水産省及び他府省の委託プロジェクト費等を計上した。
3.「業務活動による収入」の「その他の収入」は、諸収入額を記載した。 
4.百万円未満を四捨五入してあるので、合計とは端数において合致しないものがある。

4 自己収入の確保

  • ア 外部研究資金の獲得、受益者負担の適正化、特許実施料の拡大等により、自己収入の確保に努める。
  • イ 自己収入の増加が見込まれる場合には、増加見込額を充てて行う新規業務の経費を見込んで運営費交付金の要求を行い、認められた場合には当該新規業務を実施する。

5 保有資産の処分

現有の施設・設備について自主点検を行い、利用率の低いものについては、その改善の可能性等の検討を行ったうえ、保有の必要性が認められないものについては適切に処分する。

第4 短期借入金の限度額

第4期中長期目標期間中の各年度の短期借入金は、4億円を限度とする。

想定される理由:年度当初における国からの運営費交付金の受入れ等が遅延した場合における職員への人件費の遅配及び事業費等の支払遅延を回避するため。

第5 不要財産又は不要財産となることが見込まれる財産がある場合には、当該財産の処分に関する計画

なし

第6 重要な財産を譲渡し、又は担保に供しようとするときは、その計画

なし

第7 剰余金の使途

開発途上地域の農林水産業を対象とする研究戦略策定のための調査、情報技術利用高度化のための機器の整備、広報の充実、研究用機器の更新・購入等に使用する。

第8 その他業務運営に関する重要事項

1 ガバナンスの強化

(1)内部統制システムの構築

  • ア 理事長のリーダーシップの下、役職員の担当業務、権限及び責任を明確にする。また、役員会及び運営会議等において、迅速かつ的確な意思決定の補佐及び意思伝達を行う。
  • イ 指揮命令系統を明確化し、JIRCASの方針や決定事項について速やかに所内に周知・実施する体制を整える。
  • ウ 研究活動における不適正行為を防止するため、海外での研究活動に起因する事象を含め、JIRCASの業務遂行の障害となる要因(リスク)を識別、分析、評価し、適切な対応を実施するため、リスク管理体制を整備し、リスクの発生防止及び発生したリスクへの適切な対応に努める。

(2)コンプライアンスの推進

  • ア JIRCASに対する国民の信頼を確保する観点から、法令遵守や倫理保持に対する役職員の意識向上を図るため、研修や教育訓練等を実施する。
  • イ 政府が示したガイドライン等を踏まえ、研究活動における不適正行為を防止するための職員教育や体制の整備を進める。

(3)情報公開の推進等

公正な法人運営を実現し、法人に対する国民の信頼を確保する観点から、独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律(平成13年法律第140号)等に基づき、情報公開を積極的に推進し、情報開示請求に対しては適切に対応する。

(4)情報セキュリティ対策の強化

  • ア 政府機関の情報セキュリティ対策のための統一基準群を踏まえ、情報セキュリティ・ポリシーを適切に見直し、サイバーセキュリティの強化に取り組む。
  • イ 情報セキュリティ対策の実施状況を評価し、情報セキュリティ対策の改善に反映する。
  • ウ 保有する個人情報や技術情報を適切に管理する。

(5)環境対策・安全管理の推進

  • ア 薬品管理システム等を活用し、化学物質等の適正管理の徹底を図る。
  • イ 生物材料等の適正入手・適正管理に関する教育訓練等を通じて、職員の管理意識の向上を図るとともに、法規制のある生物材料については適正管理を徹底する。
  • ウ 法人内で使用するエネルギーの削減を図る。また、廃棄物等の適正な取扱いを職員に確実に周知し、法人全体でリサイクルの促進に取り組む。
  • エ 職員の安全衛生意識の向上に向けた教育・訓練、職場巡視などモニタリング活動を実施し、作業環境管理の徹底を図る。また、ヒヤリハット事例等を活用した事故等の未然防止活動に取り組む。
  • オ 職員の防災意識の向上を図るとともに、必要な設備の設置、管理を行う。また、災害等緊急時の対応体制を整備する。

2 研究を支える人材の確保・育成

(1)人材育成プログラムの実施

  • ア 研究管理者や研究業務の支援、技術移転活動等を行う人材を育成するため、人材育成プログラムを見直し、それに基づく取組を実施する。
  • イ 研究業務の支援、技術移転活動等を行う人材を計画的に育成するためのキャリアパス11)を構築する。
  • ウ 行政部局等との人的交流、知識の習得や技能の向上を図るための各種研修の開催、外部機関等が行う研修の活用等により、職員の資質向上を図る。

(2)人事に関する計画

  • ア 業務の着実な推進のため、必要に応じて職員を重点的に配置するなど、柔軟で適切な人事配置を行う。
  • イ クロスアポイントメント制度12)、テニュア・トラックを付した任期付制度や再雇用制度、公募による採用等、多様な制度を活用し、JIRCASの業務推進に必要な人材の確保に努める。
  • ウ 優秀な女性・若手職員を積極的に採用するとともに、女性の幹部登用、ワークライフバランス推進等の男女共同参画の取組を強化する。

(3)人事評価制度の改善

  • ア 関係規程や業績評価マニュアル等を整備し、公正かつ透明性の高い業績及び能力評価システムを運用するとともに、人事評価結果を適切に処遇等に反映する。
  • イ 研究職員については、研究業績、研究成果の社会実装、運営業務への貢献等、多角的な観点に基づく業績評価を実施する。

(4)報酬・給与制度の改善

  • ア 役職員の報酬・給与については、国家公務員や民間企業の給与水準等を勘案した支給水準とする。
  • イ クロスアポイントメント制度など多様な雇用体系に柔軟に対応できる報酬・給与制度の導入に取り組む。
  • ウ 透明性の向上や説明責任の一層の確保のため、給与水準に係る検証結果や取組状況を公表する。

3 主務省令で定める業務運営に関する事項

 前中長期目標期間繰越積立金は、第3期中期目標期間中に自己収入財源で取得し、第4期中長期目標期間へ繰り越した有形固定資産の減価償却に要する費用等に充当する。

 また、施設及び設備に関する計画については、第2の2(2)、職員の人事に関する計画については、第8の2(2)のとおり。

中長期計画
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[別添] 試験及び研究並びに調査に係る研究の推進方向

平成32年度末までに以下の研究業務を行う。

1 開発途上地域における持続的な資源・環境管理技術の開発

我が国も大きな影響を受ける気候変動や環境劣化等、深刻化する地球規模的課題に対処するため、アジア及びアフリカ地域を中心とする開発途上地域において、現地研究機関等と共同で技術開発を進めるとともに、農家ほ場での実証試験や現地普及組織等との連携を通じて技術の普及定着を図る。具体的には以下の研究を重点的に実施する。

農業分野からの温室効果ガスの排出抑制のために、節水灌漑や耕畜複合によるメタン発生抑制システムの開発と炭素収支の評価を行い、さらに、洪水等の極端現象や温暖化等の気候変動に対処し、被害を軽減するための技術を開発する。【重要度:高】※1

降水量が不安定で植生の劣化が進む河川流域及び問題土壌や土壌劣化が深刻化する地域において育種、栽培、土壌、水管理の観点から作物の収量を持続安定させるための対策技術を開発し、普及モデルとともに示す。

窒素肥料の有効利用及び耕地からの亜酸化窒素の排出抑制のため、生物的硝化抑制作用を活用した育種素材を開発する。

2 熱帯等の不良環境における農産物の安定生産技術の開発

食料増産の推進とアフリカをはじめとする世界の栄養改善に向けて、低肥沃度や乾燥等の不良環境のため農業生産の潜在能力が十分に発揮できていない熱帯等の開発途上地域を対象として、現地の研究機関等と共同で技術開発や実証試験を行うとともに、マニュアルや解説資料等を作成し、品種開発関係者や行政部局、農民に対する開発技術の速やかな普及を図る。具体的には以下の研究を重点的に実施する。

アフリカにおいて、食用作物遺伝資源の多様性の利用技術及び栽培環境に適応した高い生産性や地域の嗜好性に適応した作物育種素材を開発するとともに、有機物や水等の地域資源を有効に活用した作物生産・家畜飼養技術等を開発する。【重要度:高】※2

低肥沃度、干ばつ、塩害等の不良環境に適応可能な高生産性作物を作出するための基盤技術を開発するとともに、先導的な育種素材の開発及び開発途上地域のほ場での評価、利用技術の開発に取り組む。

我が国への侵入・拡大が懸念される越境性の作物病害虫防除に向け、移動性害虫や媒介虫の発生生態解明に基づく防除及び侵入・拡大抑制技術を開発する。また、JIRCASがこれまでに構築した研究ネットワークを活用して病害抵抗性品種を育成する。

3 開発途上地域の地域資源等の活用と高付加価値化技術の開発

経済成長に対応した開発ニーズの高まっているアジア地域において、環境と調和した持続性の高い農林水産業の実現による農山漁村開発を支援し、開発途上地域の農民の所得向上と、我が国が進めるグローバル・フードバリューチェーン戦略に貢献するため、多様な地域資源の活用と、新たな高付加価値化技術を開発する。具体的には以下の研究を重点的に実施する。

高品質な生産物の確保とフードバリューチェーン構築を目指し、高付加価値化が見込まれる農林水産物の評価手法を開発し、高付加価値化に必要な加工・流通技術を開発するとともに、消費者ニーズの解明、流通システムの改善による付加価値の向上を図る。【重要度:高】※3

資源循環型で持続性の高い農林水産業を確立するため、農産廃棄物等の未利用バイオマスからの糖質生産と高度利用技術を開発し、実用化するとともに、中山間農村における高付加価値化を目指した持続的な生産技術と多様な資源の活用技術を開発する。また、森林資源の育成・保全と生産木材の高付加価値化のための技術及び生態系と調和した人工林の生産性向上のための技術を開発する。水産資源の持続的利用を目指し、効率的な養殖技術を開発し、生態系と調和した資源の活用を図る。

これらの取組は国際研究ネットワークを積極的に活用して推進し、我が国及び現地の民間企業等と連携し技術の体系化と技術移転を加速化する。また、農民等への普及を目指した技術マニュアルの作成や技術の展示、地域の加工流通業者への技術移転のための情報提供を進める。

〈重要度等の解説〉

※1【重要度:高】:IPCC13)の第5次評価報告書において、将来、気候変動に対する適応が限界を超える可能性があり、効果的な適応策に緩和策を合わせた対策が強靭な社会や持続可能な開発を促進させることが示されており、経済活動で農業分野が大きな割合を占める開発途上地域での対策が極めて重要であるため。

※2【重要度:高】:SDGs14)の目標において、「飢餓を終わらせ、食料安全保障及び栄養改善を実現し、持続可能な農業を促進すること」が示されており、栄養不足人口が多く農業生産性が低いアフリカでの食料問題の解決に向けた取組が極めて重要であるため。

※3【重要度:高】:グローバル・フードバリューチェーン戦略において、農林水産分野においても付加価値の高いフードバリューチェーンの構築が求められていることが示されており、その取組を通じて農民の所得向上に貢献することが極めて重要であるため。

中長期計画 用語解説

番号

用語

意味

1)

国連ミレニアム開発目標

国連ミレニアム・サミット(2000年9月)で採択された国連ミレニアム宣言に基づき設定された、2015年までに達成すべき8つの開発分野における国際社会共通の目標。

2)

国際農業研究協議グループ(CGIAR)

Consultative Group on International Agricultural Research(CGIAR)。国際農林水産研究に対する長期的かつ組織的支援を通じて、開発途上国における食糧増産、農林水産業の持続可能な生産性改善により住民の福祉向上を図る目的で1971年に設立された国際的な協議組織。

3)

セグメント

法人の内部管理の観点や財務会計との整合性を確保した上で、少なくとも、目標及び評価において一貫した管理責任を徹底し得る単位。

4)

PDCAサイクル

Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4段階を繰り返すことで、業務を継続的に改善する手法。

5)

グローバル・フードバリューチェーン戦略

産学官連携で生産から製造・加工、流通、消費に至るフードバリューチェーンの構築を推進し、日本の食産業の海外展開と成長、食のインフラ輸出と日本食の輸出環境の整備、経済協力との連携による途上国の経済成長を実現していく戦略。

6)

地球公共財
(Global Public Goods)

国・地域を越えて世界的に裨益する成果。

7)

双方向コミュニケーション

研究成果等を一般の方々に分かりやすく説明するとともに、一般の方々の期待や不安、懸念等の声を真摯に受け止め、その後の研究開発や実用化のプロセスに活かしていくための双方向のコミュニケーション。

8)

NGO

Non-Governmental Organization。開発、貧困、平和、人道、環境等の地球規模の問題に自発的に取り組む非政府・非営利組織。

9)

持続的開発のための農林水産国際研究フォーラム(J-FARD)

開発途上国の農林水産業に関する情報交換、協調、連携を図るためのフォーラム。平成16年設立。

10)

目的基礎研究

研究者の独創的アイディアや純粋基礎研究の成果を基に、農林水産業・食品産業分野における技術革新や新事業の創出など、将来のイノベーションにつながる技術シーズを開発するための出口を見据えた基礎研究。

11)

キャリアパス

ある職位に就くまでに経験すべき業務や身につけるべき能力の順序や計画。

12)

クロスアポイントメント制度

研究者等が、大学や公的研究機関、民間企業等の間で、それぞれと雇用契約関係を結び、各機関の責任の下で業務を行うことが可能となる仕組み。

13)

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)

人為起源による気候変動・影響・適応・緩和方策に関し、科学的、技術的、社会経済学的な見地から包括的な評価を行うことを目的として、1988年に世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)により設立された組織。

14)

持続可能な開発目標(SDGs)

Sustainable Development Goals。「国連持続可能な開発サミット(2015年9月25~27日)」で採択された「我々の世界を変革する:持続可能な開発のための2030アジェンダ」に掲げられた17の目標と169のターゲット。