マダガスカル(Madagascar)は、アフリカ大陸の南東海岸部から沖へ約400キロメートル離れた西インド洋にあるマダガスカル島及び周辺の島々からなる島国である。マダガスカル島は日本の国土面積の約1.5倍の広さを持つ世界で4番目に大きな島である。先史時代にゴンドワナ超大陸の分裂に伴いアフリカ大陸から分かれ、さらにその後の8800万年前ごろにインド亜大陸とも分離して形成された。他の大陸と生物種の往来が少ない孤立した状態が長く保たれたため、島内の生態系を構成する各生物種が独特の進化を遂げた。21世紀現在でも野生生物種の90%以上が固有種という、生物多様性にとって重要な場所である。ところが、かようにユニークな生態系が、特に20世紀に入って以降、急速な人口増加と無秩序な開発に伴う環境破壊により失われ始め、21世紀現在も深刻な危機に直面している。 マダガスカルに始めて人類が居住し始めたのがいつか、また、その人々がどのような人々であったのかという問題については諸説あり、議論に決着を見ていないが、通説では、紀元前350年から紀元後550年の間にオーストロネシア系の人々が稲作の技術を携えてアウトリガーカヌーに乗ってボルネオ島南部からやってきたと考えられている。マダガスカル語はオーストロネシア語族に属し、マレー語などに近い。さらにその後、10世紀までの間にバントゥー系の人々が東アフリカからコブウシとともにモザンビーク海峡を渡って移住したと見られる。この東南アジアと東アフリカ、それぞれにルーツを持つ集団を基礎に、その他にも、長い歴史の中でさまざまな民族集団の定住の波が繰り返し到来して、現在マダガスカル人と呼ばれる民族集団が形成された。彼らをいくつかのサブグループに分割して捉える考え方もあり、その場合、最大多数派は中央高地に住むメリナ人である。 19世紀に至るまでマダガスカル島全土に広域的な支配を確立した政権は存在しなかったが、メリナ人の貴族階層を中心にした政権が19世紀前半に灌漑耕作技術の進展に伴い強勢となり、島の大部分を統一した。このマダガスカル王国はしかし、フランスとの戦争に敗北して崩壊し、1897年にフランス植民地帝国に吸収された。60年以上に及ぶ植民地時代にはサトウキビのプランテーションや黒鉛の採掘が行われ、モノカルチャー経済化が進展、フランスへの原料供給地かつフランスの工業製品の消費地として位置づけられた。「アフリカの年」1960年に共和制の主権国家として一応の独立を回復するものの政治、経済、軍事、教育などの面で実質的にフランスに依存し従属する体制であった。 1970年代に成立した社会主義政権下ではCFAフラン圏からの離脱、駐留フランス軍の撤退などフランス依存からの脱却が目指されたが、その代償として国際収支の悪化や経済の低迷を経験した。1980年代には早くも社会主義路線から方針転換を行い、IMFの援助を受けて経済再建と構造調整に取り組んだ。その後も複数回の政治危機が起きた。直近に起きた2009年の政治危機では憲法に基づいた手続きを経ない政権交代が行われ、観光業の不振など経済の低迷と国際的孤立を招いた。目下のところマダガスカルは、人口が2012年時点でちょうど2,200万人を越えたあたりと推定されており、その内90%が1日当たり2ドル以下で生活している。「後発開発途上国」に分類される。2015年の経済成長率は年率3.1%で、人口増加率をかろうじて上回ったにすぎなかった。国際社会の中におけるマダガスカルは、国際連合、アフリカ連合、世界貿易機関、南部アフリカ開発共同体(SADC)などの加盟国である。
(DBpediaより引用)関連するJIRCASの動き
SATREPSマダガスカルプロジェクトのワークショップ開催
2019年12月12日(木)にマダガスカル国アンタナナリボにおいて、SATREPSマダガスカル(通称FYVARYプロジェクト)の中間評価を兼ねたワークショップを開催し、これまでの研究の成果を広く発信しました。
ルシアン・ラナリヴェル マダガスカル農業畜産水産大臣と岩永理事長の会談
令和元年8月30日(金)、同週水曜日に横浜で開幕したアフリカ開発会議(TICAD7)の出席にあわせ来日したルシアン・ラナリヴェル マダガスカル農業畜産水産大臣と岩永理事長が二者会談を行い、マダガスカルにおける既存の研究協力に加え、今後の農業開発のために有用な研究協力分野について協議を行いました。
関連する現地の動き
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Pick Up
108. 世界野菜センター: マダガスカルの伝統野菜に勢いをつける
世界野菜センター(World Vegetable Center;World Veg) のRitha Luoga と Sognigbe N’Danikouは、World Veg のホームページに「マダガスカルにおける伝統野菜の利用」についての記事を公表しました。著書らは、マダガスカルにおける野菜遺伝資源の保全、食料と栄養の安全保障、農家の収入向上における伝統野菜の重要性について、報告しました。
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Pick Up
37.養分利用に優れた稲作技術開発でマダガスカルの食料安全保障に貢献
2020-05-14 マダガスカルは、豊かな生態系や珍しい動植物で知られていますが、この国の農業は稲作を基盤とし、日本の2倍以上のコメが消費されています。一方で、イネの生産性は停滞しており、農村地域の貧困削減を妨げてきた結果、マダガスカルは世界の最貧国の一つにとどまっています。イネの生産性を阻害する要因として、農家が貧しいために肥料を購入する資金が少ないこと、アフリカ特有の風化土壌に起因する乏しい養分環境をもつことが挙げられます。そこで、国際農研は、肥料と土壌からの養分供給が少ない条件でも安定的にイネの生産性を改善できる技術開発を目指し、現地研究機関とプロジェクトを実施しています。最近の研究ハイライトとして、少ないリン肥料でイネの収量を大幅に改善できることを現地農家圃場で実証しました。
刊行物
JIRCAS Newsletter(89)
Japan International Research Center for Agricultural Sciences, JIRCAS Newsletter89
jircas_newsletter-88_-.pdf2.95 MB
JIRCASニュース(89)
国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, JIRCASニュース89
jircas_news-89_-.pdf3.4 MB
JIRCASニュース(87)
国立研究開発法人国際農林水産業研究センター, JIRCASニュース87
jircas_news-87_-.pdf2.98 MB
JIRCAS Newsletter(87)
Japan International Research Center for Agricultural Sciences, JIRCAS Newsletter87
jircas_newsletter-87_-.pdf2.38 MB
熱帯農業地域における国別研究問題とその背景 : 第2部
大野芳和, 石原修二, 濱村邦夫, 尾和尚人, 池田俊彌, 宮重俊一, 岡三徳, 国際農林水産業研究センター研究資料4 1161
researchdoc4-_1-161.pdf28.6 MB
関連するイベント・シンポジウム
出張報告書
報告書番号 | 出張年月 | 国名 | 出張目的 | 関連プログラム |
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H31-0525 | 2020年02月 - 2020年03月 | マダガスカル | 技術普及活動への動機づけ調査 | 農産物安定生産 |
H31-0424 | 2020年02月 - 2020年03月 | マダガスカル, ガーナ | 1. SATREPSマダガスカルプロのイネ生育調査、2. 耕地環境プロでの雨期作データの収集と乾期作試験の開始、3. 科研費における硫黄欠乏土壌の採取 | 農産物安定生産 |
H31-0435 | 2020年02月 - 2020年02月 | マダガスカル | 「養分の吸収利用に優れた育種素材開発」における現地圃場試験の調査及び遺伝解析分野に関わる研究打合せ | 農産物安定生産 |
H31-0423 | 2020年02月 - 2020年02月 | マダガスカル | 課題2「養分の吸収利用に優れた育種素材開発」における現地圃場試験の調査及び遺伝解析分野に関わる研究打合せ | 農産物安定生産 |
H31-0447 | 2020年02月 - 2020年03月 | フランス, マダガスカル, ドイツ | 1.RICE CRPに関する共同研究共同研究打合せ及び現地圃場視察、2.SATREPSマダガスカルに関する共同研究共同研究打合せ及び現地圃場視察 | 農産物安定生産 |
研究成果情報
- イネ⽣育に対する⼟壌のリン供給能は室内分光スペクトルから迅速に推定できる(2019)
土壌サンプルの室内分光計測で得られた分光反射スペクトルを用いて、土壌からイネへのリン供給能の指標となる酸性シュウ酸塩抽出リン含量を迅速に推定できる。空間変動の大きいマダガスカルの水田や畑のリン供給能の迅速評価に利用できる。
- アフリカ稲作におけるケイ素欠乏の実態とその要因(2013)
アフリカの農家圃場ではケイ素欠乏値を示すイネが広範にみられ、土壌のケイ酸供給力不足、不安定な水条件をもつ稲作生態系、および窒素施用量の増加を要因として、ケイ素欠乏のリスクが高まる。