バングラデシュの貧困と人々の行動様式

Country
Bangladesh
国際農林水産業研究センター研究資料
ISSN 13404334
NII recode ID (NCID) AN10442873
本資料は、Clarence Maloney : Behavior and Poverty in Bangladesh, University Press Limited, Dhaka, 1988 を訳したものである。
訳者は1992年3月にバングラデシュの農業と農業研究機関を調査した際、この本を入手した。筆者のマローニーは文化人類学の視点でバングラデシュでなぜ、開発プロジェクトが成功しないのかを問い、その答えをパングラデシュの人の行動様式と心性に求めている。一言で言えば集団や組織を重視しない態度である。開発プロジェクトを成功させるためにはこうした行動様式を改めなければならないということになるであろう。
しかし、マローニーは開発や近代化自身にも懐疑の目を向けており、増大する人口を収容するためには西欧文明の大量生産、大量消費のライフスタイルでも無理があると見ている。貧困、人口、食料の問題は地球規模の問題となってきているが、過去数千年にわたって稲作社会が膨大な人口を養ってきたことの意味を振り返って見る必要があるという訳である。
熱帯農業研究センターの20周年記念講演が1990年6月に行なわれた際、小倉武一氏は南アジアとアフリカの貧困解決に目を向ける必要があると説かれた。そうした意味合いから、「開発」に係わる者のー参考資料として本書は翻訳に値すると考えて出版社に翻訳の許可を求めたが、「筆者と連絡をとってみる」との返事があっただけで、その後手紙が来ない。従って原著者の承諾は得られていないのであるが、敢えて内部資料として印刷に付すことにした。本文中にもバングラデシュの「企業家」が密輸に精を出すことに対して暖かい目配りをしている著者のことであるから、必ずしも西洋流の知的所有権にこだわらず、むしろ多くの人との議論を望むのではないかと考えるからである。
バングラデシュの農業に関しては、国際農林業協力協会「バングラデシュの農業」1980がある他、農業総合研究所の藤田幸一氏による「バングラデシュ農業発展論序説」1993がある。国際協力事業団による農業大学院プロジェクト、農村開発プロジェクト、青年海外協力隊の活動などが行なわれ、それらの経験に基づく資料も出されている。特に藤田氏の力作は本資料と共通する視点が含まれており、併せて読んで頂ければ良いのではないかと思う。また訳者は平成3年度の熱帯農業研究センター国際研究企画検討会において、バングラデシュとの共同研究の可能性について概略を報告したが、それは国際農林水産業研究センター研究資料No.3に収録されている。
本資料の準備にあたり国際農林水産業研究センター海外情報部の非常勤職員、井澤栄子さんと小松弘子さんにワープロ入力を手伝って頂いた。お礼を申し上げる。
原著者と連絡が取れなかったので、わからない点を問い合わせることができず、誤訳が多い
かもしれない。お気づきの点があればご教示頂ければ幸いである。
Date of issued
Creator クラレンス・マローニー 濱村邦夫
Subject バングラデシュ 貧困 行動様式 インボルーション 開発 稲作社会 Bangladesh Poverty Behaviour Involution Development Rice cultivating society
Publisher 農林水産省国際農林水産業研究センター
Available Online
Volume 5
spage 1
epage 61
Language jpn

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