G-4. 成熟機構解明による有用エビ類の高度な種苗生産・養殖技術の開発【エビ成熟】

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2018-09-25

エビ養殖は、開発途上地域で多くの人々の生活を支える産業として、1970年代よりアジア地域を中心に盛んになり、主要生産国の重要な輸出産業にまで成長してきました。養殖による世界のエビの年間生産量は450万トン以上であり、その市場規模は2兆円に及びます。この産業の拡大に伴い重要になってくるリスク管理として、主に①病気の発生による突発的な大量斃死、②環境への悪影響、および③種苗の不安定供給などが挙げられます。

 ③のリスクを克服するため、エビを含む甲殻類では産卵を誘導する研究成果が活用されてきました。エビの産卵は、眼の部分(眼柄)に由来するペプチドホルモンが作用することで制御されています。生殖は、卵黄形成抑制ホルモン(VIH)が卵黄タンパク質の合成部位に働き、その合成と卵成熟が抑制されます。一方、VIHの作用が解除されると卵成熟が進むことが分かっています。現在、この現象を利用して、世界のエビ孵化場では、眼柄を切除することで産卵を誘導していますが、エビの健康面や作業に手間がかかるなどの問題があります。また、近年、この眼柄切除に対して動物福祉の観点からも問題と指摘されています。このため、眼柄切除によらない成熟促進技術を開発し、種苗生産の効率化を図っていくことが求められていました。

国際農研では、卵黄タンパク質およびVIHの生化学的特徴・役割に関する研究から、従来、眼柄切除により行っているVIH抑制作用をRNA干渉法によりブロックし、雌エビの卵成熟を促進する技術を開発してきました。将来、本技術を用いて眼柄切除をせずに卵成熟を促進させるための簡易的な現場用キットの提供を目標にさらなる研究を進めています。

図1. 眼柄内のサイナス腺とX-器官

図2. サイナス腺とX-器官の機能

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